【「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その4」の続き】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/58/bb3f874eea0f5ae69f936129c15ff254.png)
残り時間9分で第9図を迎えた羽生九段が動かない。………残り3分、ようやく羽生九段の手が動き、8七の銀をつまんだ。▲7八銀!。
龍角両取りだ…………しかし、これは……△7八同角成▲同金△同龍で、角と金銀の二枚替えの駒損。
先手の持駒が豊富なら、角を手にすることの意義は大きいが、手駒は飛角歩のみと乏しい。持駒が乏しくても、駒の振り替わりの直後に手番を握っているので、王手やそれに近い優先度を持つ飛車打ちで、手順に龍を作りながら敵玉に迫ることができるのなら良いのだが、そこまで厳しい飛車打ちはない。
………▲7八銀からの駒の振り替わりは、優位を無にしてしまう疑問の手順だった(悪手と言っていいだろう)。
正着はやはり▲7二飛。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/4e/6882c54a78a39c310de8070c3e2eade1.png)
この手には△8三角が怖いが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/14/b224052af0acc3a200b8062191e898e6.png)
▲7二飛と打ったからには取る一手の▲5二飛成に対しては、①△4七角行成と②△4七角引成がある。
①の△4七角行成には▲3九玉で大丈夫(▲3九玉に代えて▲4九玉は△5八角成で終わり)。
②の△4七角引成には▲4九玉で大丈夫(▲4九玉に代えて▲3九玉は△5九龍▲同銀△3八銀でおしまい)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/75/79c621f5b22e05f5230cf40e90c4143d.png)
変化図6以下、△5九龍▲同銀△3八銀が危険に見えるが、▲同金△同馬▲5八玉で大丈夫。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/e9/dcec19386dc7d47772f1f76ae77ffd16.png)
戻って▲7二飛に△4七角成▲同玉△8三角の王手飛車も気になるが、これには▲7四角の絶好の切り返しがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/fd/de4f117112ac54d032c9004515907fb0.png)
以下、△7二角▲5二角成△4二飛の根性受けには▲同馬△同金▲3四飛で一手一手。
これらの変化は、通常の羽生九段なら一目。一目とは言わないまでも5分あれば十分だろう。
しかし、この日5時間50分の熟慮し、残り9分という肉体的にも、精神的にも、残り時間も切迫した状況では、頭がもつれてしまった。……夕食を挟んでの長考は時間もエネルギーも消耗してしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/63/c2436f2a7ad822536ab5da409bdc8c80.png)
《夕食休憩前の第3図は確かに終盤の方向を決定する重大局面だが、ある程度読んだうえで自分の大局観と照らし合わせて、時間とエネルギーを温存すべきだ》と主張しようと記事を書き始めたが、本局の場合、あまりにも難解過ぎた(「その1」参照)。運が悪かった。
しかし、「その1」、「その2」、「その3」、「その4」と書いてきて、その考えは変わった。
難解な局面を読み切ろうとする。結論を出して着手したが、その後に誤算があり、修正を余儀なくされた。そこで、最善の手順を絞り出す。………その結果、エネルギーと時間を消耗し、足がもつれ逆転を喫す。。。
このような状況での積み重ねの熟考が羽生将棋を作ってきたのだ。
この将棋を見て……夕食を挟んで熟考する羽生九段を見て……これだけのエネルギーがあれば、大丈夫。そして、羽生九段は本当に将棋が好きなんだなあと実感した。
私の言いたいことを書いてしまったので、本記事シリーズはここで終了してもいいのですが、あと1回続きます。
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残り時間9分で第9図を迎えた羽生九段が動かない。………残り3分、ようやく羽生九段の手が動き、8七の銀をつまんだ。▲7八銀!。
龍角両取りだ…………しかし、これは……△7八同角成▲同金△同龍で、角と金銀の二枚替えの駒損。
先手の持駒が豊富なら、角を手にすることの意義は大きいが、手駒は飛角歩のみと乏しい。持駒が乏しくても、駒の振り替わりの直後に手番を握っているので、王手やそれに近い優先度を持つ飛車打ちで、手順に龍を作りながら敵玉に迫ることができるのなら良いのだが、そこまで厳しい飛車打ちはない。
………▲7八銀からの駒の振り替わりは、優位を無にしてしまう疑問の手順だった(悪手と言っていいだろう)。
正着はやはり▲7二飛。
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この手には△8三角が怖いが、
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▲7二飛と打ったからには取る一手の▲5二飛成に対しては、①△4七角行成と②△4七角引成がある。
①の△4七角行成には▲3九玉で大丈夫(▲3九玉に代えて▲4九玉は△5八角成で終わり)。
②の△4七角引成には▲4九玉で大丈夫(▲4九玉に代えて▲3九玉は△5九龍▲同銀△3八銀でおしまい)。
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変化図6以下、△5九龍▲同銀△3八銀が危険に見えるが、▲同金△同馬▲5八玉で大丈夫。
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戻って▲7二飛に△4七角成▲同玉△8三角の王手飛車も気になるが、これには▲7四角の絶好の切り返しがある。
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以下、△7二角▲5二角成△4二飛の根性受けには▲同馬△同金▲3四飛で一手一手。
これらの変化は、通常の羽生九段なら一目。一目とは言わないまでも5分あれば十分だろう。
しかし、この日5時間50分の熟慮し、残り9分という肉体的にも、精神的にも、残り時間も切迫した状況では、頭がもつれてしまった。……夕食を挟んでの長考は時間もエネルギーも消耗してしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/63/c2436f2a7ad822536ab5da409bdc8c80.png)
《夕食休憩前の第3図は確かに終盤の方向を決定する重大局面だが、ある程度読んだうえで自分の大局観と照らし合わせて、時間とエネルギーを温存すべきだ》と主張しようと記事を書き始めたが、本局の場合、あまりにも難解過ぎた(「その1」参照)。運が悪かった。
しかし、「その1」、「その2」、「その3」、「その4」と書いてきて、その考えは変わった。
難解な局面を読み切ろうとする。結論を出して着手したが、その後に誤算があり、修正を余儀なくされた。そこで、最善の手順を絞り出す。………その結果、エネルギーと時間を消耗し、足がもつれ逆転を喫す。。。
このような状況での積み重ねの熟考が羽生将棋を作ってきたのだ。
この将棋を見て……夕食を挟んで熟考する羽生九段を見て……これだけのエネルギーがあれば、大丈夫。そして、羽生九段は本当に将棋が好きなんだなあと実感した。
私の言いたいことを書いてしまったので、本記事シリーズはここで終了してもいいのですが、あと1回続きます。
>兎にも角にも竜王戦挑戦者決定戦での勝利及び王将戦リーグの対藤井二冠の勝利おめでとうございます!!
ありがとうございます…と、私がお礼を言うのも少し変なのですが、良かったです。
これで、当分は機嫌良く過ごせそうです。挑戦者決定戦を勝つのと負けるのとでは雲泥の差があります。
藤井二冠に勝ったのも大きいです。藤井二冠に負けっぱなしでは、物事にあまり拘らない羽生九段といえど、へこみそうですし、他の棋士への信用度もアップしますし。
>どこかの馬の骨が言った?「羽生-藤井の公式戦で0-2が0-3になれば格付けが決まる」
ええ、見かけ上の偏差値だけで、「あの将棋を勝ちきれないとは、羽生もオワタ」などと断定する輩には、腹が立ちますが、最近は気にしないようにしています(よく負けるので、慣れた(笑))。
馬の骨の言うことも、気にしないことにしましょう。
>「△7二角▲5二角成△4二角」は、子供の頃の羽生さんの飛車を三枚盤面で用いた詰将棋を彷彿とさせる誤植
やっちまいました……
それにしても、羽生少年の異空間の詰将棋に例えた突っ込みは、ナイスです。
○○角が続いたので、引っ張られてしまいました。もちろん、△4二角です。
里見ー伊藤戦の中継の解説に文句を言うため、羽生ー糸谷戦を後回しにしましたが、里見ー伊藤戦の記事は想像以上に難産でした。
お待たせして、ごめんなさい。
47角成から83角の王手飛車を掛ける変化で、「△7二角▲5二角成△4二角」は、子供の頃の羽生さんの飛車を三枚盤面で用いた詰将棋を彷彿とさせる誤植ですね笑 持ち駒は歩と飛車のみなので42飛車でしょうか。
前回お返事いただいたコメントに返せていませんが、兎にも角にも竜王戦挑戦者決定戦での勝利及び王将戦リーグの対藤井二冠の勝利おめでとうございます!! 挑戦者決定戦は第一局も後半足が縺れてさえいなければと言うような優勢の将棋だったので、落ち着いて指してくれればきっと挑戦を決めてくれるだろうと願望も入りつつ信じていました。僕は基本プロ棋士を尊敬していますが、どこかの馬の骨が言った?「羽生-藤井の公式戦で0-2が0-3になれば格付けが決まる」(去年の王将リーグ時だったかと記憶しています)と言う言葉を聞いてずっとモヤモヤしていたので、一勝返したのがとても嬉しくて結果を見て歓喜しました。英さんはどんな心境でしたか?