英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その3

2020-09-08 16:02:04 | 将棋
【「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その2」の続き】

(「その2」の復習)

 夕食を挟んでの長考(消費時間:50分)で指した羽生九段の▲7四角に、糸谷八段は△8七飛成と飛車を成り込む。先手からの▲6四桂以降を掘り下げての16分の考慮だったのだろう。
 羽生九段は▲6四桂を打たず、ほぼノータイムで単に▲6五角と桂を取る。先の長考からの予定であろう。
(復習、終わり)


 ここで糸谷八段は△7四歩。

 好所にいる角にどいてもらおうという手だが、玉のコビンを開けて▲7四角が生じるので、1手かけてまで指すのはどうかと思ったが、『ABEMA』のAIの示す最善手だった。
 ……再び、羽生九段の手が止まる。40分経過しても動かない。
 候補手は①▲7四角、②▲5六角、③▲4四桂。このどれかが羽生九段の予定と考えられるが、どこかに誤算があったのだろう。
 ③の▲4四桂は「△5一玉と引き、以下▲3二桂成に△6五歩と取れば先手の手段が難しい」(棋譜速報解説)とのことだが、①と②はどちらもほぼ互角。どちらも“ほぼ互角”なら、勘に任せて指せばいいじゃないかと思うが、対局者は当然、評価値が見えず、難解で確信の持てない変化手順が色々見える。現に、ソフトによって示す最善手が異なっていた。非常に難しい局面だった。
 結局、44分の長考で②▲5六角を着手。これで、羽生九段の残り時間は1時間1分となった(糸谷八段は2時間56分)。

 「その1」《夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがないんだよなあ……》とぼやいたが、長考しなければならない局面だったのだ。
 この将棋に関して言えば、夕食休憩を挟んでの長考と今回の長考で消費時間とエネルギーを消費して、上記の残り時間の大差の状況で難解な将棋を勝ち切るのは難しくなったのだが、考え続けて結論を出そうとする……この姿勢は明日につながるはずだ。特に、第5図で軌道修正のために読み続ける姿は非常に素晴らしかった。

 これまでの夕食前後の長考も羽生九段にとっては当然の長考だったのかもしれない。

 

 第5図以下、△2七歩▲3八金△8八龍▲5九銀右(第6図)△9九龍▲2四桂△3一金▲7四歩△8七角(第7図)と進む。

 若干の疑問手はあったが(AIは△2七歩や▲2四桂の“利かし”の評価は低かった。△9九龍では△7七歩▲同飛△8六歩を推奨)、第7図はほぼ互角。
 以下、▲7三歩成△7六角成▲7四角△6三香▲同と△同銀▲同角成△同玉▲7六金△7八飛▲5五桂△5四玉▲7七角△7九龍▲4六香△5二金▲8七銀(第8図)

 第7図から第8図にかけても難解な手順だが、羽生九段の方が少しずつ得点を重ねていった感がある。特に、第8図直前の△5二金は詰めろを受けた手だが、受け一方の手でしかも狙われやすい金となり、形勢を損ねたようだ。
 第8図の《▲8七銀はこんなところに銀?》と思ったが、後手の攻め込まを攻めた手で好手だ。

「その4」に続く

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