英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season19 第18話「選ばれし者」

2021-03-09 20:03:29 | ドラマ・映画
『魔銃録』という人気小説の作者・笠松剛史(真田幹也)が銃殺される事件が発生。凶器は、数か月前、収賄疑惑を掛けられた代議士襲撃事件で使われた古い銃と思われたが、問題の銃はすでに警察が押収し、厳重に保管されていた……

2つの謎
【謎1……相反する事象】
A.代議士襲撃の弾と作家殺害の弾の線条痕(施条痕)が一致し、同一銃から発射されたと考えられる
B.代議士襲撃の銃は科警研が厳重に保管
  ……………相反する事象で、非常に不可解、不可思議。


――幾つかの可能性――
1.鑑定ミス……科捜研もこの分野の権威である科警研の黒岩(上杉祥三)も鑑定は間違いないと断言。独立する2者による鑑定なので、鑑定者が嘘をついている可能性はない。

2.銃が持ち出された……管理者の黒岩の目を逃れたとしても、出入り口の金属探知機などでの持ち物チェックや身体検査を搔い潜ることはことは至難

3.同じ線条痕を生じる別の銃が存在する……《人間の指紋と同じように、個々の銃がユニーク(独自)な線条痕を持っている》ので、そんな銃の存在は有り得ない
≪参考≫人気の銃などは何十万挺も製造される事があり、銃の種類が分かっても、犯人を特定するのは難しいと思われるかもしれない。しかし、同じ種類の銃といっても、製造された時期によってもライフリングは微妙に異なる。また、同じ時期に製造された銃でも工作機器の刃の摩耗により、微妙に変化することがある。銃本体も発砲により、ライフリングが摩耗する。鑑識はこの線条痕の違いを比較顕微鏡などを用いて1000分の1ミリメートル単位で分析測定している。そのため、人間の指紋と同じように、個々の銃がユニーク(独自)な線条痕を持っているといわれている。
『ミリレポ』「銃の指紋、線条痕・旋条痕(せんじょうこん)とは」より)

(↑右京も同様なことを話していた)

4.魔術など超常現象……これを言い出したら、推理ドラマにはならない

【謎2……事件を演出する存在。そして、その意図は?】
・「(銃が)向こうからやってきた」……代議士襲撃の犯人・原口雄(小林峻代)の言。玄関の前に、銃の入った紙袋が置かれていたと云う
・笠松が従来と違ったハードなジャンルを短期間で書き上げた。綿密な取材や資料が必要だというのに、編集者によると笠松一人でデータなどを揃えたという。〔その資料の中に黒岩教授がかかわった論文が含まれていた〕
・ファンレターや感想メールなども編集者を通さず笠松がチェックした。〔笠松が銃に魅了されそうな原口の存在を知ることができた〕
……『魔銃録』を読んで自分にも特別な力が欲しいと願った原口に、小説と同じ拳銃を渡すことができたのは誰なのか?(笠松が代議士襲撃に係わっているのは間違いないが、協力者(首謀者)は誰なのか?)


笠松銃撃で、至近距離から1発しか撃たなかったことについての黒岩教授と研究員・久保塚雅美(前田亜季)の見解
銃に不慣れなものの犯行
・至近距離から撃つのは、離れたところから殺傷できるという銃の優位性を放棄することになる。接近して殺害するのならナイフなどでもよいし、接近することによって銃を奪われる危険性も生じる。
・この銃は、撃つ度に《撃鉄を上げ引き金を引く》という動作が必要で、熟練していないと連射は難しい。
  ……《至近距離でないと外してしまう》《一発で仕留めたのは、“射撃に慣れている”のではなく、銃の短所によるもの》

アメリカにおける銃所持の理屈
「“銃は手にするすべての者の力を均衡に保つ”、だから、アメリカでは護身のために女性が銃を所持するのは当たり前」(黒岩教授)
「アメリカで警官にそう言われた。“ホールドアップ”の経験があり、触るのも嫌なほど銃が嫌い」(雅美)

「そういう目に遭ったから、銃犯罪の研究を?」という冠城の問いに
「ノーペイン、ノーゲイン(痛みなくして、得るものなし)」(雅美)
「銃器の所持を厳しく規制している日本では、銃を持たない者は持つ者に対し、圧倒的に不利になってしまう。これは不平等だと言わざるを得ない」(黒岩)
「力のない者が、暴力によって踏みにじられるようなことがあってはいけない」(黒岩)

「人を平等にするのは、銃ではなく法だと、僕は思いますがねえ」
「立派な信念だとは思います……が、法が守ってくれない時もあるでしょう」(黒岩)


〔代議士襲撃の銃と同タイプの銃を所持していた豊田充(川合智己)が確保された。豊田が所持していた銃の線条痕を鑑定したが、まったく違っていた〕

「《同一の線条痕を持つ拳銃が別に存在する》ということになる。……杉下さんの言ったとおりです。“あり得ないものを除外して最後に残ったものが、どんなに信じ難くとも真実である”ということになりますから」(黒岩)
 ……この黒岩の言葉を右京も否定せず、
「問題は、《あり得ないモノとは何なのか?》、《信じがたい真実とは何なのか?》…ですね」意味深な言葉を投げかける。

(特命係の部屋での二人の会話では、同一銃の存在の線を有力視していたが、「“同じ指紋を持つ人の確率は一兆分の1”とも言われていますからねえ」と懐疑的な言葉)

 この《あり得ないモノ》、《信じがたい真実》の区別が私にはつかない。
 推理の過程なので、《あり得ないモノ》、《信じがたい真実》を区別する判断も推定である。今回の場合、《同じ線条痕の銃が存在する》《科警研に厳重に保管されている銃を持ち出す》のどちらが《あり得ないモノ》で、どちらが《信じがたい真実》なのか、判定し難い。
 私は前者の方が難易度が高いと思うのだが、黒岩教授は後者の方が“あり得ない”と判断し、《同じ線条痕の銃が存在する》を真実という結論を出した……


 そして、ここで唐突に…本当に唐突に、銃をチェックし始めた冠城がガンオイルの匂いに気づく。
 黒岩も考え込む。冠城がガンオイルの匂いに気づいたことに懸念を感じたのか、それとも…



 容疑者は、黒岩教授と研究員・久保塚雅美(前田亜季)のふたり……笠松が参考にしたと思われるデータ・資料・論文が黒岩教授たちが関連しており、問題の銃も科警研で教授が保管している(二人が結託している可能性もないことはないが、ドラマ『相棒』としては考えにくい)


 そして、その夜、黒岩教授が屋上から転落死
 教授の所持品から、作家の笠松や『魔銃録』とのつながりを示すものが発見され、教授が代議士銃撃の首謀者で『魔銃録』を笠松に書かせ、何らかのトラブルが発生し、銃を持ち出して笠松を射殺した(“魔獣騒ぎ”を起こしたのは、世間に銃の恐ろしさについて警鐘を鳴らしたかった)……と考えれば、線条痕などのつじつまが合う。
 伊丹は、《捜査の手が迫っていることを感じた黒岩が覚悟の自殺》と都合の良い結論を出した(笑)



真相は、《力を欲するものが銃を手にした時、犯罪(銃で殺傷する)に走るのか、踏みとどまるのか》という実験の為の雅美の犯行だった。

 自首を勧める笠松を、実験の継続したい雅美が射殺した。
 銃を分解し、銃身だけを持ち出した。
 銃身だけにしても、金属探知機には引っかかると思うが、どうなのだろう?

 さらに、雅美の犯行に気づき雅美を正そうとした黒岩教授を屋上から突き落としたのだった。

 それにしても、“銃は手にするすべての者の力を均衡に保つ”(非力な女性でも屈強な男性に伍することができる)が持論の黒岩教授が、非力と思われる雅美に屋上から突き落とされてしまうとは!

 
(右京たちが線条痕の事情を聴くために最初に訪れた時の雅美の言葉)
「かなりの数の銃が流通していると思われる日本だが、銃器が犯罪に利用される例は稀である。
それは何故なのか?(銃の使用を踏みとどまらせる要素・境界は何なのか?)」



 黒岩教授の死に動揺しよろめく(ように見えた)雅美の手を掴んで支えた冠城が、最初に会った時に雅美からガンオイルの匂いがしたのを思い出して、雅美の犯行の確信を持つ。そして、冠城と右京が、雅美を追及。
 ここまで秀逸なストーリーだと思ったが、雅美の主張や思考などが全然ダメだった。

「笠松殺害に魔銃の銃身を使ったのは、同一の線条痕を残し捜査をかく乱するため、そしてもう一つ…魔銃と呼ばれる拳銃の存在を世間に強く知らしめるためでしょう」(右京)

 この小細工によって、銃撃事件と黒岩教授が結びつくことになってしまった。

 さらに、雅美が狂気に至るきっかけも不合理。
「バッグを奪った少年が逃げた後、涙が止まらなかった。助かったからじゃない…悔しかったから。暴力に只、屈服する自分が情けなかったから」
「銃を目の前にしたら、誰だってそうなる」(冠城)
「(アメリカの)警察も友達もそうは言わなかった。“日本は平和ボケしている”って(言われた)。
 人生で一度も経験したことのない屈辱だった。
 突発的で理不尽な暴力は誰にとっても無関係じゃない。……その現実にしっかり向き合うべきなんです」

「そんなことのために、キミを信じていた黒岩さんを殺したのか?笠松さんを撃ったのか?」(冠城)
「言ったはずです。“ノーペイン、ノーゲイン”だって」

「いいえ、あなたのしたことは、力のない者の弱みに付け込み、犯罪へと誘(いざな)う卑劣な行為です。
 そんなことをしたところで、あなたの受けた屈辱は消えるはずはない。
 あなたのしたことは、思いあがった独りよがりの愚かな行為……ええ、ただの“愚行”です!」



 “日本は平和ボケしている”って言われた屈辱が起因?!
 “突発的で理不尽な暴力は誰にとっても無関係じゃない”という現実にしっかり向き合わせるために、今回の事件を起こした?……今回の事件で《“突発的で理不尽な暴力は誰にとっても無関係じゃない”という現実にしっかり向き合わせる》ことができるのか、甚だ疑問である。
 まさに、右京の説教通りの独りよがりの愚かな行為、ただの愚行である。

 そもそも、雅美はアメリカの銃社会を肯定しているが、
 どこにでもいるごく普通の少年が、銃を突き付けて強盗を行うことを可能にする銃社会。
 このドラマでは触れていないが、繰り返し為される銃乱射事件も銃社会が招く悲劇である。

 それに、本当に「日本は平和ボケしている」とすべての警官や友達が言うのだろうか?
 夜間に一人で出歩くのが“不用意”だと戒めたのかもしれないが、アメリカ人は自国がそういう物騒な国というのを悲しまないといけないのではないだろうか?
 いや、そう考えている人も多いと思う。雅美が屈辱と感じるほど、“日本人は平和ボケ”と周囲の人すべてに言われたとドラマでは言っているが、アメリカ人を馬鹿にしていない?アメリカン人さん、どうなの?



【その他の感想】
・2度の不自然な前田亜季と冠城の手の絡み(ガンオイルの匂いががキーポイントとはいえ、あまりに不自然)
・特殊な銃なので、入手ルートを青木が特定できそう。アメリカ留学時代の射撃練習の画像を見つけるより、簡単そう。
・黒岩教授役の上杉祥三さんの言葉が非常に明瞭!


第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話第9話第10話第11話(元日SP)第12話第13話第14話第15話第16話第17話

【ストーリー】番組サイトより
殺人の凶器は小説に描かれた“魔銃”!?
特命係が物語になぞらえた不可解な事件に挑む!


 『魔銃録』という人気小説の作者が銃殺される事件が発生。凶器は、数か月前、収賄疑惑を掛けられた代議士襲撃事件で使われた古い銃と思われたが、問題の銃はすでに警察が押収し、厳重に保管されていたため、ネットでは「魔銃が現れた」と騒がれていた。
 銃を「野蛮で旧式な武器」と嫌う右京(水谷豊)は、亘(反町隆史)と共に独自の捜査を開始。線条痕の再鑑定をしている警察庁の付属機関・科学警察研究所を訪れる。主任研究官である黒岩(上杉祥三)から事情を聞くと、問題の銃が持ち出された可能性も、鑑定が間違っている可能性もないと断言。犯罪の要因を研究している雅美(前田亜季)も、黒岩の鑑定を支持する。
 いっぽう捜査一課は、小説の熱狂的なファンや反感を抱くアンチ、さらに暴力団の関与も視野に捜査を進めていた。しかし、犯人も凶器も見つからず、ネットでは「魔銃は増殖する」などという噂が、まことしやかに囁かれていた。
 そして、捜査の背後では、“魔銃”を持つ者が、さらなる犯罪に動き出そうとしていた。

死を招く凶器“増殖する魔銃”は実在するのか!?
熱狂的な読者を持つ人気作家が殺害された理由は?
銃という“野蛮な武器”が驚がくの事件を呼び寄せる!


ゲスト:前田亜季 上杉祥三

脚本:杉山嘉一
監督:田村孝蔵

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 相棒 season19 第17話「... | トップ | 【歳時メモ】 早春……梅、オ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やっと追いつきました (marumori)
2021-03-14 21:51:56
 英さん、こんばんは。ようやくコメントが追いつきました。

 今回のストーリーはなかなか面白かったのですが、わざわざ苦労して銃を分解して銃身を持ち出して、同じ線条痕を残す理由が理解できませんでした。正直、リスクしかないと思います。

 百歩譲って、同じ線条痕を残さなければならなかったとして、ガンオイルのことは分かっているのだから、ゴム手袋くらい使ったらどうなのかと思いました。

 そういえば、冠城が益子に受けていた講習って、何だったのでしょう?
返信する
ええ、面白かったのですが… ()
2021-03-15 11:38:59
marumoriさん、こんにちは。

>今回のストーリーはなかなか面白かったのですが、わざわざ苦労して銃を分解して銃身を持ち出して、同じ線条痕を残す理由が理解できませんでした。正直、リスクしかないと思います。

 まったく同感です。

>そういえば、冠城が益子に受けていた講習って、何だったのでしょう?

 《銃の分解組み立てが可能かどうか》、《銃身を付け替えて発砲した場合の線条痕が同一になるかどうか》の確認だったのだと思います。
 “講習”という言い回しに違和感を感じましたが、実際に類似の銃で銃の分解、銃身の付け替えの手ほどきを受けたのかもしれません。
返信する

コメントを投稿

ドラマ・映画」カテゴリの最新記事