2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段戦
中村太地八段は、NHK杯戦に於いて、これまで思わしい戦績を挙げていないようだ。解説の谷川十七世名人も「意外なんですが、中村八段は初のベスト8進出なのではないでしょうか」と述べていた。中村八段も動画配信での解説の際、「初のベスト8で、相当、気合が入っていました」と述べていた。
それはさておき、今期の中村八段は、1回戦で阿部光瑠七段、2回戦で広瀬八段(現九段)、3回戦で菅井八段を、激戦の末、降してきた。
将棋は、先手の中村八段の角換わり志向に、羽生九段はそれを避けるような指し手を見せたが、結局、角換わり腰掛銀に落ち着いた。
第1図は、後手が5二の玉を4二に寄せたところ。手待ちというか、間合いを計った手。よく出現する局面である。
2019年に同戦型で、羽生九段が3連敗した記憶が残っている。
▲羽生九段-△屋敷九段(NHK杯)、▲広瀬竜王(当時)-△羽生九段(王将リーグ)、▲糸谷八段-△羽生九段(A級順位戦)。詳しくは、リンク記事をご参照ください。
「NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……」(2019年11月4日記事)
「鬼門の戦型だなあ 2019A級順位戦 糸谷八段-羽生九段」(2019年12月4日記事)
3局とも、第1図より▲4五桂と跳ね、△2二銀に▲7五歩△同歩と突き捨て▲5三桂成と仕掛けている。(▲5三桂成の前に、3筋や1筋の突き捨てを入れる実戦もある)
以下、△5三同玉▲7四歩△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉と進んでいる。この仕掛けは最近は観ていない気がする(先手が避けているのだろうか?実戦的には後手を持ちたくないが)
本局の中村九段は、▲4五桂△2二銀に▲3五歩と突く。この手を見て、谷川十七世名人は「少し前には、見かけた仕掛けですが」という解説をしていた。
▲3五歩に羽生九段は少考後、△同歩と応じる。
ここで、▲6五歩!
この手が、中村八段が温めていた新手!。
NHK杯の準々決勝という晴れの舞台で、羽生九段相手に披露できる……中村八段も心が躍ったのではないだろうか。
羽生九段も「この仕掛けには驚いた。今まで1回も考えたことはなかった。指されてみると、先手の攻めがなかなかうるさくて、どう対処して良いのか分からなかった」というようなことを感想戦で述べていた。
この手に対して、△4四歩と桂を取りに行く手が考えられるが、以下▲6四歩△4五歩▲同銀(変化図1)で後手が困る。
△4五同銀なら▲4五同歩でもよさそうだが、▲6三歩成△同金に▲7二角が痛い。
「▲6四歩の取り込みが、桂1枚では釣り合わないほど大きい」(谷川解説)という。
なので、▲6五歩は取るしかない。
①△6五同銀
銀で取る手が第一感という人は少ないと思う。この手には▲同桂△同桂に▲6三銀が炸裂する(炸裂図)
これを△同銀なら、▲7二角が決まる。
よって、△6一金と辛抱するが、▲6六銀と一旦かわしておいて、先手優勢。先手の銀と桂が後手陣の急所に利いていて、次に▲6五銀と桂を取って▲3四桂もあり、後手陣は持たない。
②△6五同桂
この手には、▲同銀△同歩▲3四桂がある。
気持ちの良い両取りで、先手が良さそうだが、以下△3一玉▲2二桂成△同玉で、先に銀桂交換しているので、銀桂の損得はなく、先手は歩切れなので、意外といい勝負かも。実戦的には▲3四銀と嵩にかかられる手が見えるので、後手としては選択肢に入れにくいだろう。
再掲載:新手図
③△6五同歩
普通は歩で取るが、この後、いろいろ先手からの攻め筋が見える。羽生九段もかなり考えて、△6五同歩と応じた
「その2」へ続く。
中村太地八段は、NHK杯戦に於いて、これまで思わしい戦績を挙げていないようだ。解説の谷川十七世名人も「意外なんですが、中村八段は初のベスト8進出なのではないでしょうか」と述べていた。中村八段も動画配信での解説の際、「初のベスト8で、相当、気合が入っていました」と述べていた。
それはさておき、今期の中村八段は、1回戦で阿部光瑠七段、2回戦で広瀬八段(現九段)、3回戦で菅井八段を、激戦の末、降してきた。
将棋は、先手の中村八段の角換わり志向に、羽生九段はそれを避けるような指し手を見せたが、結局、角換わり腰掛銀に落ち着いた。
第1図は、後手が5二の玉を4二に寄せたところ。手待ちというか、間合いを計った手。よく出現する局面である。
2019年に同戦型で、羽生九段が3連敗した記憶が残っている。
▲羽生九段-△屋敷九段(NHK杯)、▲広瀬竜王(当時)-△羽生九段(王将リーグ)、▲糸谷八段-△羽生九段(A級順位戦)。詳しくは、リンク記事をご参照ください。
「NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……」(2019年11月4日記事)
「鬼門の戦型だなあ 2019A級順位戦 糸谷八段-羽生九段」(2019年12月4日記事)
3局とも、第1図より▲4五桂と跳ね、△2二銀に▲7五歩△同歩と突き捨て▲5三桂成と仕掛けている。(▲5三桂成の前に、3筋や1筋の突き捨てを入れる実戦もある)
以下、△5三同玉▲7四歩△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉と進んでいる。この仕掛けは最近は観ていない気がする(先手が避けているのだろうか?実戦的には後手を持ちたくないが)
本局の中村九段は、▲4五桂△2二銀に▲3五歩と突く。この手を見て、谷川十七世名人は「少し前には、見かけた仕掛けですが」という解説をしていた。
▲3五歩に羽生九段は少考後、△同歩と応じる。
ここで、▲6五歩!
この手が、中村八段が温めていた新手!。
NHK杯の準々決勝という晴れの舞台で、羽生九段相手に披露できる……中村八段も心が躍ったのではないだろうか。
羽生九段も「この仕掛けには驚いた。今まで1回も考えたことはなかった。指されてみると、先手の攻めがなかなかうるさくて、どう対処して良いのか分からなかった」というようなことを感想戦で述べていた。
この手に対して、△4四歩と桂を取りに行く手が考えられるが、以下▲6四歩△4五歩▲同銀(変化図1)で後手が困る。
△4五同銀なら▲4五同歩でもよさそうだが、▲6三歩成△同金に▲7二角が痛い。
「▲6四歩の取り込みが、桂1枚では釣り合わないほど大きい」(谷川解説)という。
なので、▲6五歩は取るしかない。
①△6五同銀
銀で取る手が第一感という人は少ないと思う。この手には▲同桂△同桂に▲6三銀が炸裂する(炸裂図)
これを△同銀なら、▲7二角が決まる。
よって、△6一金と辛抱するが、▲6六銀と一旦かわしておいて、先手優勢。先手の銀と桂が後手陣の急所に利いていて、次に▲6五銀と桂を取って▲3四桂もあり、後手陣は持たない。
②△6五同桂
この手には、▲同銀△同歩▲3四桂がある。
気持ちの良い両取りで、先手が良さそうだが、以下△3一玉▲2二桂成△同玉で、先に銀桂交換しているので、銀桂の損得はなく、先手は歩切れなので、意外といい勝負かも。実戦的には▲3四銀と嵩にかかられる手が見えるので、後手としては選択肢に入れにくいだろう。
再掲載:新手図
③△6五同歩
普通は歩で取るが、この後、いろいろ先手からの攻め筋が見える。羽生九段もかなり考えて、△6五同歩と応じた
「その2」へ続く。