英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

鬼門の戦型だなあ 2019A級順位戦 糸谷八段-羽生九段

2019-12-04 22:12:17 | 将棋
 第78期順位戦A級6回戦、羽生善治九段は糸谷哲郎八段に敗れ、2勝4敗となった(勝った糸谷八段は3勝3敗)。
 2勝4敗……名人挑戦どころか降級を心配しなければならなくなってしまった。
 それにしても、角換わり腰掛け銀のこの後手玉が中段まで引っ張り出される変化は、3連敗。鬼門だなぁ……単に鬼門と言うだけならいいが。



 仕掛け図は今期のNHK杯2回戦、▲羽生九段-屋敷九段戦(屋敷九段の勝ち)。
 この将棋の後、王将戦挑戦者決定リーグの対広瀬竜王戦で、羽生九段は後手番を持ち、敗れている(このあたりの詳細は「NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……」
 本局もこの2局と、途中の手順は少し違うが、56手目までほぼ同様に進んだが、▲5五銀で前例のない局面(第1図)になった。(前例はすべて▲4四歩)

 この▲5五銀に「△5五同玉は、▲6二角が厳しい。以下△6三金なら▲4四角成△4六玉に▲2七飛と浮いておき、次の▲4七金までの詰めろが受けにくい」らしい(棋譜中継・解説)
 第1図まで両者の考慮時間は、糸谷八段0分(A級順位戦は1分未満の考慮は切り捨て)、羽生九段は18分。
 ここで羽生九段は18分考えて△5三玉と引く。
「▲5五銀(57手目)は部分的にある手だと思っていましたが、▲6五歩は知らなかったです。(3二金と2二銀の形が)壁で中段玉だから、(後手が)まとめづらいんですね」(羽生)
 ……このコメント、正直言ってショックだった。
 直近で2局も痛い目に遭っているのに、この局面に関して、この程度(▲5五銀(57手目)は部分的にある手だと思っていた)の認識だったのか。研究して掘り下げておかなければならない局面ではないのか!

 さらに、「▲6五歩は知らなかったです」という表現も現代将棋の風潮を示している。

 「考えなかった」「軽視した」というのならともかく、「知らなかった」というのはどうなのか?
 確かに、研究会やPCソフトを使用した現代の研究は深く正確で、しかも、情報伝達の速さは非常に速い。現代将棋に於いて、最先端の変化を研究や情報によって知っているかどうかは、重要なポイントである。
 よって、「知らなかった」という言葉は、≪後れを取った≫という後悔の気持ちを正直に吐露したモノであろう。
 しかし、「考えなかった」「軽視していた」などという自分の思考に対する反省を口に出さなかったのは(実際は口にしたのかもしれない)、《将棋を戦う》姿勢には乏しいように感じる。


 「知らなかった」と口にした理由がもうひとつ考えられる(私はこちらが主因と考える)。
 それは、糸谷の時間の使い方である。57手も進んだ第1図の新手▲5五銀も1分未満の着手で通計の考慮時間も0分(羽生九段は18分)。▲5五銀に対する羽生九段の△5三玉(この手の考慮は18分)に対しても、1分の考慮(これでようやく消費時間1分を記録)で▲6五歩。
 対戦相手の羽生九段が考慮中に考えていたと考えられるが、羽生九段もかなりのハイペースで指し手を進めており、第1図の▲5五銀が指されたのは、午前10時42分(対局開始は午前10時)だった。
 羽生九段にしてみると、糸谷八段のノータイム指しを、《この手順はこちら(先手)が良いか互角と知っていますよ》と言われ続けていたと感じたのかもしれない。


 この第3図が勝負の行方を決めた分岐点と考える。
 この▲4四歩が指されたのは午前11時34分(糸谷九段の通計消費時間6分、羽生九段1時間1分)。羽生九段の考慮中に昼食休憩に入った。
 午後の対局再開後、さらに45分の考慮を重ねて指したのが△8六歩(この手の考慮は1時間10分)。

 この手では△4三歩が良かったようだ。

 以下▲6五角△6四歩▲4三歩成△同金▲7四歩△6三金▲4四歩△6五歩▲4三歩成△同玉▲7三金△5二飛(変化図2)▲4四歩△3二玉▲6三金△5五飛▲4三金△3一玉▲2四歩△同歩▲同飛(変化図3)が想定手順。

 恐ろしくスリリングな変化だ。まあ、こう進むかは分からないが、本譜は△8六歩▲同歩△4七歩と先手玉に嫌味を付けたものの、手抜きで▲3二角成と迫られると、双方の玉の危険度の差があり、以下△同飛▲5四金(第4図)△6二玉▲4三歩成△4八歩成▲3二歩成△8七歩▲7四歩まで進み、先手の手勝ちがはっきりした。

 途中の▲5四金が好手だった。すぐに▲4三金と王手飛車を掛けるより、5四金で後手玉への足掛かりを残し、1手遅れるがと金で飛車を取る方がより厳しい。

 羽生九段は持ち時間がなくなるまで苦悩した。その気持ちが次につながると信じる。
 でも、どうせなら、第3図の局面でもっと頭脳を振り絞って正着を指してほしかった(と言っても、昼食休憩を挟んでの1時間10分は充分な考慮ではある)


 羽生九段の苦しい戦いが続いている。
 特にこの将棋、糸谷八段と指しているというより、糸谷八段の研究と指しているという気がした。
 もちろん、△4七歩に対して2時間2分の長考で、ほぼ読み切った糸谷八段の強さを感じたが、面白くないなあというのが実感である。

 
  

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