英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season19 元日スペシャル 第11話「オマエニツミハ」

2021-01-18 15:41:45 | ドラマ・映画
仁江浜「この国は少年犯罪に対して、甘すぎる。未成年だからと言って、厳罰に処されないのは、どうしても納得できない」
右京「“人間形成のできていない少年に矯正教育を施し、社会へ送り出す”…この方針は間違いではない」
仁江浜「教育ではどうにもならない奴は大勢いる。ろくでなしは、ろくでなしのまま社会に放たれることになる」

…………………今話のテーマをこの会話が語っている。
 未成年という理由で刑が軽くなったり、加害者の身元を明らかにしなかったり(当時は被害者家族は裁判にも立ち会えなかったらしい)と、被害者関係者にとっては納得のいかないことが多い。

 今回の一連の事件は、過去の事件の被害者や関係者の未成年犯罪者への復讐だった。
 テーマを重視した為か、犯行の仕組みはストレート。その点で元日SPとしては物足りなかった。尺が長いので、単調で退屈に感じてしまった。

 その中で際立ったのは、仁江浜(岸谷五朗)の存在。――本名:大沼浩司・フリージャーナリスト
 謎の多い仁江浜だったが、犯行の途中、わざと防犯カメラに映り、右京を挑発。また、現被害者(過去の少年犯罪者)と加害者の関係を調べ、仁江浜の正体に気づく。
 右京に接近し、少年犯罪に対する甘さを述べ、右京に問いかける。右京に執拗に付きまとったのは、右京の信念を確かめるためで、確認したうえでラストの犯行に及んだのだろう。それと、仁江浜との因縁を右京に思い出させるためでもあった。
 その因縁とは………………
……12年前、仁江浜の中学生の息子が、クラスメートに対する不良グループの虐めを正そうとしてリンチに遭い、その時、不良グループのリーダー・柚木が発砲した銃弾がガス管に当たり、爆発火災を起こす(リーダーの親は暴力団員)。
 他の事件現場に急行中に、仁江浜の息子が廃ビルに連れ込まれるのを目撃していた右京がその現場に到着した時、その爆発が起こり、仁江浜の息子と柚木のどちらを先に救出するかの選択に迫られ、助けられる可能性の高い柚木を選び、新居浜の息子は命を失ってしまった。


「直樹君を助けられなかったことは、悔やんでも悔やみきれません。
 しかし、あの時点で、救える命から救うという判断は間違っていなかったと思っています」


 結果論になるが、右京が助けた“ろくでなし”(柚木)が、更生せず、世の中に害を為し続けた。(他の少年犯罪者も同様)
 右京の行為が岸谷の心の傷を深くし、やり場のない怒りから、犯行に及ばせた。


 右京は自分の判断は間違っていなかったと今も思っているが、本当にそうだろうか?
 柚木の生命が危うくなったのは、仁江浜の息子をリンチしようと思って廃ビルに連れ込み、さらに、銃を撃ったからで、自業自得
 仁江浜の息子は、クラスメートの窮地を救うため、不良グループに立ち向かったため命を失いそうになっていた。助かる可能性という問題はあるが、助けるという行為は両者にとって同等だとすると、仁江浜の息子を助けるという選択は妥当なのではないだろうか?
 仁江浜の息子を助ける選択をしようとしたが、その困難さから自分の命が危ないので断念したという理由なら、仁江浜も右京に対して怒りを抑えることができたはずだ。

 まあ、あくまで論理的に行動する右京があの選択をしたのは、右京らしい判断であり、その点は仁江浜も理解していたようだ。
 ただし、上記したあの状況に至る柚木と仁江浜の息子の行為の善悪度と、その後の柚木ら今回の被害者(少年犯罪者)が改心せず、世の中に害を為し続けたことを糾弾し、右京に本当に右京の選択は正しかったのかを問いかけてほしかった。(まあ、ここまで掘り下げてしまうと、脚本としては可笑しくなるかもしれない)
 ドラマとして結論を出すのは難しいと思うが、少年犯罪者が未成年というだけで刑が軽くなり、更生せずに早く世に放たれて、犯罪を起こし、その被害者が出るという図式には、憤りを感じてしまう。そもそも、躊躇なくバールや鉄パイプで人を撲る奴が改心するとは思えない。
 もちろん、更生する少年も多く、その点のフォローとして、こでまりに魚を卸している魚屋の兄ちゃんが描かれているのだろう。ひねくれている私は、彼こそ柚木の現在かと思っていた。
 
 ラストシーン……右京に、《“ろくでなし”と小出茉梨(森口瑤子 ・こてまり女将)のどちらを助けるか》の選択を仁江浜が迫る。右京に12年前と同じような選択を迫った。

「撃つのなら、僕を撃ちなさい!」
 《命の重さは善人も悪人も同じ》と考える右京にとっては、選べない選択だ。
 上記の右京の言葉は、当然の帰結かもしれない。でも、ありがちなパターンで、《脚本家が逃げたな》と思ってしまった。
 私なら、「巻き込まれてしまっただけの女将を選ぶのは当然です。あなたも柚木を撃ちたいのでしょう」と言わせたい(笑)。


その他の点として…
①右京さん、アナグラムが好きだなあ
 仁江浜光男(ニエハマミツオ)→オマエニツミハ(お前に罪は)って、ピンとくるものなのか?
 それに、「お前に罪は」というフレーズも少し変。「お前の罪は」なら分かる。
 将棋が好きな私は、「お前の(玉の)詰みは」と連想してしまった。
 
②美彌子(仲間由紀恵)のセリフに違和感
「隠ぺいが事実だとすると、お二人(刑事部長と参事官)にも、どこかでけじめをつけていただくことになるかもしれませんねえ。
 警視庁も多少は風通しを良くしないと……加齢臭が充満していますからねえ……あ、失礼、今のは独り言です」
 言葉に毒があり過ぎだろう


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【ストーリー】番組サイトより
殺害された青年に許されざる過去が…
右京を追い回す謎の記者との関係は!?


 ある日、都内の河川敷で、鎌田(永嶋柊吾)という区役所に勤める男の撲殺死体が発見される。さっそく捜査に乗り出した右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、犯人とおぼしき人物が「右足をひきずっていた」ことを知る。
 そんな中、右京は、自分をつけ回している中年男がいることに気付く。その男が『こてまり』にまで現れたため問い質すと、仁江浜(岸谷五朗)というフリージャーナリストだと名乗る。聞くと仁江浜は、右京が“数々の難事件を解決している伝説の刑事”という噂を聞き、取材させてもらうつもりだったという。すげなく断わった右京だったが、仁江浜はすんなり引き下がりそうになかった。
 さらに、撲殺事件の現場にまで現れた仁江浜が、“少年犯罪”と“正義”について、右京を挑発するような議論をふっかけてくる。そこには、別の狙いがあるようにも思えた。
 ほどなくして鎌田には、中学時代、無差別に人を襲った罪で少年院に入っていた過去が判明。
 捜査一課は、かつて鎌田に襲われた被害者による復讐の線も視野に入れ、捜査を続行。すると、鎌田の暴行で大怪我を負い、人生を狂わされた被害者の一人である瀬川(趙珉和)という男が浮かび上がる。
 伊丹(川原和久)と芹沢(山中崇史)は、目撃証言とも人物像が一致する瀬川にあたりをつけ、接触を試みるが、その矢先、まったく予想していなかった緊急事態に見舞われる。さらに瀬川は、次の犯行を予告するようなことを口にしていた。そして、再び右京の前に現れた仁江浜は、またも右京を試すような言動を取り…!?

十数年前の少年事件と複雑に絡み合う現在の殺人
動機はかつて少年法で守られた加害者への復讐!?
右京を嗅ぎ回る怪しげな記者の“真の狙い”とは?
衝撃のラスト!右京が命を懸けた究極の選択を迫られる!


ゲスト:岸谷五朗

脚本:瀧本智行
監督:権野元
コメント (2)
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