横浜国際女子マラソン成績
(スタート時の気象=晴れ、気温22度、湿度56%、東北東の風0・6メートル)
(1)木崎 良子 (ダイハツ) 2.26.32
(2)尾崎 好美 (第一生命) 2.26.49
(3)M・ヤマウチ(英 国) 2.27.24
(4)永尾 薫 (ユニバーサルエンターテインメント) 2.29.43
(5)R・カルマー(南アフリカ) 2.29.59
(6)R・グタ (エチオピア) 2.32.26
(7)吉田 香織 (アミノバイタルAC) 2.33.14
(8)藤田 真弓 (十八銀行) 2.35.12
(9)S・コスゲイ(ケニア) 2.35.26
(10)K・ステツェンコ(ウクライナ) 2.35.44
木崎選手が2時間26分32秒で初優勝。大会2連覇を狙った尾崎選手は17秒差の2位。北京五輪6位のマーラ・ヤマウチ選手(英国)が3位。
参加した国内選手のトップ2とベテランで冷静にラップを刻むヤマウチ選手が競り合い、見ごたえのある終盤ではあった。
ヤマウチと木崎が並走し、その後を尾崎が付き逆三角形の体制が続いたが、38.5km辺りからヤマウチの顔が歪み始め、やや木崎に遅れ気味になる。それでも39km地点で時計を確認する冷静さは持っていた。
しかし、その直後、木崎が若干ペースを上げる。少し腕の振りが大きくなったような気がする。スピードにして5%以下、おそらく100mにつき1秒弱ぐらいのわずかなペースアップと思われるが、ヤマウチはついていけず、ズルズル後退。
二人に絞られ、ここが勝負時と考えたのか、木崎はさらにペースアップ…と言っても心もちといった程度だが、できればここで尾崎を離したいという意思が見える走りだ。
40km過ぎまでこの状態が続いたが、残り2キロで尾崎がスパート。差が一気に開き、5m、10m、15mと開いていくが、木崎の走りも乱れず、40.6km辺りから差が縮まり始める。尾崎のペースが落ち、木崎は元気が出てきたようだ。
41kmで差が10m弱、そして41.4kmで木崎が尾崎を捕らえる。
しばらく並走後、41.6kmで木崎がギアをチェンジ。尾崎にはついていく力はなかった。
今大会は五輪選考レースとしては初めてペースメーカーを付けた。選考会でのペースを揃えることで、公平性を高めようとしたとのこと。
しかし、今回の例のように、ペースメーカーが役に立たない(設定タイムより遅く、しかも設定した25kmまで持たず、19kmで離脱)こともあるし、たとえ設定通り5km6分50秒で走り、選手もそれに追従したら、高温の状況では潰れていたかもしれない。
そもそも、五輪本番ではペースメーカーはつかず、ペースの強弱も激しい。いろいろなレースに対応する能力が必要。ペースメーカーについていく消耗を避けるレース展開では、真の選考にはならない。
ペースメーカーがきっちり走ったとしても、気象条件や参加ランナーの顔ぶれが違うので、本当に平等に選考するのなら、1レースのみで行うべきでる。テレビ局などの関係で出来ないだろうけれど。
そうなると、選考側が確かな目を持って判断するのが肝心である。気温、コースの高低差、参加メンバーの強弱、レース展開、走行タイムなどを的確に判断するのである。「陸上競技(マラソン)の専門家」ならば、そんなことは出来て当たり前である。ペースメーカーをつけて選考しやすくするなど、本末転倒である。それに、ペースメーカーの出来不出来という不確定要素を増やしたとも言える。
それに、ペースメーカーがつくレースは面白くない。25km、或いは30kmまで、一定のレースで走って、そこから用意ドンというのはマラソンではない!(参照:『最近のマラソンが面白くない理由 + Wリーグなど』)
さて、今回の記事を書くに当たり、今大会に関する記事を検索した。その中で、気になる表現があった。
『毎日JP』の「横浜国際女子マラソン:木崎、内容に高い評価 代表選考」。この見出しの「高い評価」であるが、本文を読むと、「日本陸上競技連盟の武冨豊・女子マラソン部長は「内容的に見るべきものがあった」と評価」となっている。
「高い評価」と「見るべきものがある」では評価の高さは違うと思うが、どうであろう?
私の評価を述べると、木崎の精神力には「見るべきもの」を感じたが、序盤、5km16分50~55秒を目指したペースメーカーの走りについていく気配はなく、19kmペースメーカー離脱後の20km~25km間は17分56秒と急落。17分20秒~30秒のペースを維持していたヤマウチが追いつき、引っ張ってくれなかったら、どんなタイムになったのだろうか?
中継の不満としては、後続の様子をもう少し拾って欲しかったのと、1kmごとのスプリットタイムを教えて欲しかった。
それに、毎回思うのだが、>「5000m、或いは、10000mの持ちタイムが良いと、スピードがあり、ラスト勝負に強い」というのは間違っている。
問題なのは42km走った後、走りの切り替えができスパートがかけられるかで、ウサイン・ボルトに9900mを走らせて、ラスト100mを走らせるとどうなのかを考えれば、分かりやすい。
スパートの掛け方もラスト100mなのか、200m、400mなのかによっても得手不得手が分かれてくる。その辺りを頭に入れて解説するのは、宗兄弟と金哲彦氏ぐらいであろう。
トラック出身の木崎選手は、トラックのハイペースについていけず、それでも、踏ん張りついていこうとするもがいた経験は、マラソン専門の選手より多い。今回はそういった経験も大きかったのではないだろうか?
(スタート時の気象=晴れ、気温22度、湿度56%、東北東の風0・6メートル)
(1)木崎 良子 (ダイハツ) 2.26.32
(2)尾崎 好美 (第一生命) 2.26.49
(3)M・ヤマウチ(英 国) 2.27.24
(4)永尾 薫 (ユニバーサルエンターテインメント) 2.29.43
(5)R・カルマー(南アフリカ) 2.29.59
(6)R・グタ (エチオピア) 2.32.26
(7)吉田 香織 (アミノバイタルAC) 2.33.14
(8)藤田 真弓 (十八銀行) 2.35.12
(9)S・コスゲイ(ケニア) 2.35.26
(10)K・ステツェンコ(ウクライナ) 2.35.44
木崎選手が2時間26分32秒で初優勝。大会2連覇を狙った尾崎選手は17秒差の2位。北京五輪6位のマーラ・ヤマウチ選手(英国)が3位。
参加した国内選手のトップ2とベテランで冷静にラップを刻むヤマウチ選手が競り合い、見ごたえのある終盤ではあった。
ヤマウチと木崎が並走し、その後を尾崎が付き逆三角形の体制が続いたが、38.5km辺りからヤマウチの顔が歪み始め、やや木崎に遅れ気味になる。それでも39km地点で時計を確認する冷静さは持っていた。
しかし、その直後、木崎が若干ペースを上げる。少し腕の振りが大きくなったような気がする。スピードにして5%以下、おそらく100mにつき1秒弱ぐらいのわずかなペースアップと思われるが、ヤマウチはついていけず、ズルズル後退。
二人に絞られ、ここが勝負時と考えたのか、木崎はさらにペースアップ…と言っても心もちといった程度だが、できればここで尾崎を離したいという意思が見える走りだ。
40km過ぎまでこの状態が続いたが、残り2キロで尾崎がスパート。差が一気に開き、5m、10m、15mと開いていくが、木崎の走りも乱れず、40.6km辺りから差が縮まり始める。尾崎のペースが落ち、木崎は元気が出てきたようだ。
41kmで差が10m弱、そして41.4kmで木崎が尾崎を捕らえる。
しばらく並走後、41.6kmで木崎がギアをチェンジ。尾崎にはついていく力はなかった。
今大会は五輪選考レースとしては初めてペースメーカーを付けた。選考会でのペースを揃えることで、公平性を高めようとしたとのこと。
しかし、今回の例のように、ペースメーカーが役に立たない(設定タイムより遅く、しかも設定した25kmまで持たず、19kmで離脱)こともあるし、たとえ設定通り5km6分50秒で走り、選手もそれに追従したら、高温の状況では潰れていたかもしれない。
そもそも、五輪本番ではペースメーカーはつかず、ペースの強弱も激しい。いろいろなレースに対応する能力が必要。ペースメーカーについていく消耗を避けるレース展開では、真の選考にはならない。
ペースメーカーがきっちり走ったとしても、気象条件や参加ランナーの顔ぶれが違うので、本当に平等に選考するのなら、1レースのみで行うべきでる。テレビ局などの関係で出来ないだろうけれど。
そうなると、選考側が確かな目を持って判断するのが肝心である。気温、コースの高低差、参加メンバーの強弱、レース展開、走行タイムなどを的確に判断するのである。「陸上競技(マラソン)の専門家」ならば、そんなことは出来て当たり前である。ペースメーカーをつけて選考しやすくするなど、本末転倒である。それに、ペースメーカーの出来不出来という不確定要素を増やしたとも言える。
それに、ペースメーカーがつくレースは面白くない。25km、或いは30kmまで、一定のレースで走って、そこから用意ドンというのはマラソンではない!(参照:『最近のマラソンが面白くない理由 + Wリーグなど』)
さて、今回の記事を書くに当たり、今大会に関する記事を検索した。その中で、気になる表現があった。
『毎日JP』の「横浜国際女子マラソン:木崎、内容に高い評価 代表選考」。この見出しの「高い評価」であるが、本文を読むと、「日本陸上競技連盟の武冨豊・女子マラソン部長は「内容的に見るべきものがあった」と評価」となっている。
「高い評価」と「見るべきものがある」では評価の高さは違うと思うが、どうであろう?
私の評価を述べると、木崎の精神力には「見るべきもの」を感じたが、序盤、5km16分50~55秒を目指したペースメーカーの走りについていく気配はなく、19kmペースメーカー離脱後の20km~25km間は17分56秒と急落。17分20秒~30秒のペースを維持していたヤマウチが追いつき、引っ張ってくれなかったら、どんなタイムになったのだろうか?
中継の不満としては、後続の様子をもう少し拾って欲しかったのと、1kmごとのスプリットタイムを教えて欲しかった。
それに、毎回思うのだが、>「5000m、或いは、10000mの持ちタイムが良いと、スピードがあり、ラスト勝負に強い」というのは間違っている。
問題なのは42km走った後、走りの切り替えができスパートがかけられるかで、ウサイン・ボルトに9900mを走らせて、ラスト100mを走らせるとどうなのかを考えれば、分かりやすい。
スパートの掛け方もラスト100mなのか、200m、400mなのかによっても得手不得手が分かれてくる。その辺りを頭に入れて解説するのは、宗兄弟と金哲彦氏ぐらいであろう。
トラック出身の木崎選手は、トラックのハイペースについていけず、それでも、踏ん張りついていこうとするもがいた経験は、マラソン専門の選手より多い。今回はそういった経験も大きかったのではないだろうか?