英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『時間差攻撃』 中田章道七段作 解答 ……「あらかじめ只捨て」

2011-08-29 16:58:19 | 詰将棋
8月25日記事『時間差攻撃』 中田章道七段作
の解答です。

 初手、候補はA▲1四香、B▲1五香、C▲1四馬が考えられます。
 C▲1四馬は△同玉なら▲3四龍以下詰みますが、馬を取らずに△1二玉と引かれると続きません。
 なので、AかBに候補を絞ります。
 通常の指し将棋の場合は離して打つ方が、香の利きが多いのと、相手に取られる危険性も小さいので良いことが多いのです。
 しかし、詰将棋の場合はそうとも限りません。たとえば、玉が2三に逃げた時、1五に桂を打つ手が可能です。

 香打ちに対しては2三に玉をかわします。この他の受け方としては、1四に合駒をする手もありますが、私の都合で、あとで考えることにします。
 とにかく、玉を2三にかわして、第1図、第2図を考えます。

 両図ともに、打ち歩詰状態です。違いは香車の位置のみ。
 さて、打ち歩詰と言えば、前回の詰将棋の解答、『攻防!打ち歩詰』 中田章道七段作 解答
で、
 その打開策として、

=============================
①攻め駒を弱くして、歩を打っても詰まないようにする
②守備駒を呼び込んで歩を打てるようにする(呼び込んだ守備駒で歩を取れるようにする)
③守備駒を動かして、玉の逃げ道を作る
 などが考えられます。
 ①②③に共通すること……と言うよりは、攻め駒を捨てれば、①~③のどれかの効果が表れます。
 というわけで、取りあえず駒を捨ててみましょう。この時に気をつけることは、上部の押さえになっている駒は捨てないようにすることです
============================

と述べました。

 ①②③の分類は後から考えるとして、とにかく攻め駒を捨ててみましょう。
 捨てる駒は龍か馬。龍を捨てると2四の利きが消え、▲2四歩が可能(玉で取ることができる)となり、一応、打ち歩詰の解消はできますが、龍が消えてしまうと、詰みそうもありませんね。
 そこで、馬捨てを考えます。ここで、目につくのは玉方の4四歩の存在。この歩、一見、玉の詰みに何の関係もないように見えますが、詰将棋の場合、意味のない駒は置かないのが通常なので、怪しさが漂う歩です。
 という訳で、馬をその歩頭に捨てたくなります。
 取りあえず、1図で▲4五馬(第3図)と捨ててみましょう。

 △4五同歩の局面をご覧ください。▲2四歩(第4図)が可能になっていますね。

 3六の馬が消えたので、1四の香が宙ぶらりん(只)になっています。(打ち歩詰解消の分類としては①)
 △1四玉に▲1五龍で詰みです。


 もうお分かりですね。これが初手▲1五香だと玉が1四に行けず、せっかく馬を捨てても打ち歩詰が解消されていません。よって、初手▲1五香に合駒するのは、▲同香とされて、詰まなかったのにわざわざ詰まされてしまうことになります。


 初手は▲1四香と近づけて打つのが正着でした。
 ちなみに、▲4五馬に△1四玉とかわすのは、▲1五龍(変化図)で詰みます。


 本作は5手目の▲4五馬の只捨てが決め手ですが、実は、分岐点は初手にあり、今日の打ち場所を間違えると、馬捨てが有効になりません。
 この初手の香打ちは「あらかじめ只捨て」とか、「時間差只捨て」と呼んではいかがでしょうか。
 この「あらかじめ只捨て」と「馬捨ての打ち歩詰打開策」のコンビネーションで、玉を翻弄する様が、バレーボールの時間差攻撃を彷彿させ、本作のタイトルを『時間差攻撃』と勝手に名付けました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする