英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

清水女流王将×あから2010戦に思う

2010-10-12 23:43:15 | 将棋
 実はこの件については興味が薄かったのですが、その反響が想像以上に大きかったのに驚いています。
 この反響も偏りがあって、TVで報道されても、多くの人(将棋を知らない、知っていても指さない、興味がない)は、「ふ~ん、そうなの」という感想だったのではないでしょうか。
 ところが、ネット上ではかなりの反響があったようで、普段、将棋について書いていないブロガーの方が取り上げています。普段ブログを開いているのでPCにも興味が深いわけですから、過去に将棋と関わりを持った人、普段指しているが記事にはしていない人でも、「将棋」「PC」と2つの事象で執筆意欲をくすぐられるのでしょう。

そういう中で、少々誤認されている記事やコメントが見受けられます。もちろん、私の認識も怪しいのですが。

①清水女流王将の地位と棋力
 「清水女流王将」という書き方だと、「王将」というタイトルを保持している女性の棋士という受け取り方もできます。(実際は「女流王将」というタイトルを保持している)
 世間一般的には、「女流棋士」は単に女性の「棋士」と思っている方も多いのではないでしょうか。
 しかし、実際は「女流棋士」と「棋士」には大きな隔たりがあって、端的に言うと「地位」が違うのです。これは差別によるものではなく、性別関係なく「棋士」への門戸は開かれています。
 過去にも棋士の養成機関である奨励会に入って(入会試験がある)、棋士を目指した女性はいます(現在もいます)が、棋士になった女性はいないというのが現状です。
 要因としては、棋士を目指す女性の絶対数が非常に少ないこと、そして、女性には負けないという男性の凝り固まったプライドと、奨励会全体の雰囲気。「女に負けたら坊主になる」と公言する者もいたそうです。そういう言葉を聞いたら、ふつうの少女なら気遅れてしまうでしょう。
 とにかく、「女には負けない」という雰囲気が充満する中、ひとり、あるいは二人しかいない少女が孤独感と圧迫感を感じながら将棋を指すのは並大抵のことではなかったと容易に想像できます。
 話が逸れてしまいましたが、「女流棋士」は棋士と別枠、つまり女性だけ枠の中で設けられたプロなのです。「女性棋士」ではなく「女流棋士」と呼ぶのはそういう区別があるからです(将棋に「女流」や「男流」はありません)。
 女流棋士は将棋連盟の正会員でなく、総会の議決に参加できないそうです。収入も低いようです。
 女流棋士も将棋で収入を得ているプロなのでもちろん強いのですが、女流のトップでも実力的には男性棋士の下位よりも低いと言われています。プロ棋戦などの実績を分析するとアマチュアトップレベルよりも落ちると思われます。
 
 ですから、今回の件で、「将棋ソフトが将棋のプロ(棋士)を破った」と言うのは少々気が早いのです
 こういう誤認を招かないためにも、将棋ソフトの対局相手に女流棋士を選ぶべきではなかったと考えます。

②「完敗」ではない。
 終盤、受け一方にまわらされ、投了図ではあから2010の美濃囲いは無傷状態だったので、「清水女流王将の完敗」という判断した方も多かったです。
 将棋は、
Ⅰ.普通相手の攻めを受けながら、その一方で攻めるという展開
Ⅱ.とにかくお互いほとんど自陣を顧みず、先に相手の喉元を切り裂いた方が勝ちという猛烈な攻め合い

 というパターンが多い(特にⅠ)のですが、相手の攻めを受け切る、しのぎ切らなければ勝てないというパターンもあります。
 この場合、相手の攻めをしのぎ切るまで、攻める手はほとんど皆無。時には、攻めを見せて、相手の攻めにプレッシャー(ゆっくりした攻めは許されない)を掛けることもありますが、受け切りに失敗すると、投了時には大差になるのが普通です。
 受け切る、受け切れないが紙一重、つまり形勢は互角、あるいは微差でも終局時には大差のことが多いのです。
 今回の将棋も、攻められていたが、中盤では「こう指せば清水女流が有望」「こう指していれば、まだまだ難しい」という局面が続いていた。
 こういう受け切って勝つというのは、相当な棋力(特に受けの力)が必要なので、勝つのは大変な将棋にしてしまった。たぶん、「形勢は難しいが、清水女流が勝つのは大変」と思っていた観戦者は多かったのではないでしょうか。
 ただ、この将棋を「完敗」というのは妥当ではないと言えます。初めから最後まで勝機がなかった勝負を「完敗」と言うべきです。

 機会(時間)があれば、今回の勝負の公平性や、背景について言及したいと思いますが、「あれ」が始まりますからね。ええ、あれ(竜王戦)です。
コメント
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