先日(4月23日)の記事、棋王戦第1局『将棋世界4月号(先月号)』自戦解説:佐藤九段①の続きです。
第5図
局面は終盤の入り口、佐藤九段は形勢に自信を持っていたようだ。とはいえ、▲8三馬は金桂両取りになっていて、予断の許さない形勢。
佐藤九段は9分の考慮で△7八歩。この手は先手玉への直接の響きが弱く、手抜きで▲6一馬と踏み込まれる危険性がある。実際はその変化は大丈夫(その変化の一例が、先日の変化5図)。
なので、普通は玉の付近の銀を取る△6八と指したい。これなら、手抜きはされない。しかし、佐藤九段はそう指さなかった。なぜか?
【以下は、佐藤九段の自戦記】============
まず第5図で△5一金寄は▲6五馬で悪い。また△6八とと取るのが普通に見えるが、▲同金△7九角に▲5八金と寄られてしまう。以下△5七桂成▲同金△5九銀▲同玉△5七角成に▲4九銀(変化1図)で悪い。
これは1八の飛車の守備力が最大限に生きる形だ。
だが、変化1図で7八の地点に歩があると、△6九金▲同玉△7九歩成から詰むことがお分かりだろう。つまり本譜の△7八歩は(△7八歩▲6九金を利かせておけば)、次の△6八と▲同金△7九角に▲5八金と寄れない仕組みなのだ。
△7八歩には▲6一馬と踏み込まれるのが怖いが、△7九歩成で勝ちだ。………《変化は省略》………
よって本譜、先手は△7九角に▲5九銀と1枚投入する必要がある。
=========【以上、佐藤九段の自戦記】
ネット中継を見ていて、この第5図での△7八歩の意味がよくわからなかったが、こういう深い読みがあったのかと感服。
ちなみに、ネット中継での解説陣は第5図を「後手かなり優勢」と見ていたようだ。
【以下、ネット解説より】=========
「これは形作りになってきましたね」と青野九段。
「ずっと言っているけれど、1八の飛車がどうしようもないんです。」
継ぎ盤では△6八と▲同金△7九角▲5九銀(1)△5四香の攻めが厳しい。さらに、(2)△6九金▲同金△5七角成▲4九玉△6七馬の王手飛車のほうがより厳しいと言われている。
=========【以上、ネット解説】
対局者とは異なり、解説陣は1八の飛車を単なるお荷物と見ている。佐藤九段の△7八歩の意味にも触れていない。
そのかわり、佐藤九段は(1)を選んだが、解説陣推奨の(2)のほうがより良かったようだ(自戦記で佐藤九段も認めている)。
この後、ややもつれ気味となった73手目の局面では
「後手に銀を渡しても、じつは先手玉は寄らないんです。△3九銀▲同玉△5九竜のときに▲4九銀!」(青野九段)1八の飛車が最強の守り駒となっている。
という解説があるのが、おもしろい。
やはり、対局者はよく読んでいるなあと思ったが、変化1図には疑問がある。
再掲、変化1図
確かに。この図においては7八に後手の歩があれば、先手に詰みがあり後手の勝ちだ。しかし、変化1図でも△5五香と打てばこれが詰めろになる。たとえば△5五香に対して▲6一馬とすると、
△4八金(変化2図)で詰む。▲4八同銀は△5八金の1手詰みなので▲同飛だが、△7九馬(変化3図)の開き王手で決まる。
5八に合駒を打つのは△6九金の1手詰みなので、玉の逃げ道を作る▲5八飛か▲5八銀の移動合が最善の抵抗。しかし、▲5八飛には△同香成▲同銀△6八金以下、▲5八銀にも△6八金▲4九玉△5八金以下の詰みがある。
よって、変化1図では詰めろを受けなければならないが、うまい受けは難しい。一番延命できるのが▲6九銀だが、△4七馬(変化4図)で▲5六歩△同香▲5八歩△同香成▲同飛(銀)△8三馬と馬を抜かれては先手の負け。
と、ケチをつけましたが、第5図で△7八歩が利けば、その方が得のようなので、私の疑問は取るに足らないもののようです。
第5図
局面は終盤の入り口、佐藤九段は形勢に自信を持っていたようだ。とはいえ、▲8三馬は金桂両取りになっていて、予断の許さない形勢。
佐藤九段は9分の考慮で△7八歩。この手は先手玉への直接の響きが弱く、手抜きで▲6一馬と踏み込まれる危険性がある。実際はその変化は大丈夫(その変化の一例が、先日の変化5図)。
なので、普通は玉の付近の銀を取る△6八と指したい。これなら、手抜きはされない。しかし、佐藤九段はそう指さなかった。なぜか?
【以下は、佐藤九段の自戦記】============
まず第5図で△5一金寄は▲6五馬で悪い。また△6八とと取るのが普通に見えるが、▲同金△7九角に▲5八金と寄られてしまう。以下△5七桂成▲同金△5九銀▲同玉△5七角成に▲4九銀(変化1図)で悪い。
これは1八の飛車の守備力が最大限に生きる形だ。
だが、変化1図で7八の地点に歩があると、△6九金▲同玉△7九歩成から詰むことがお分かりだろう。つまり本譜の△7八歩は(△7八歩▲6九金を利かせておけば)、次の△6八と▲同金△7九角に▲5八金と寄れない仕組みなのだ。
△7八歩には▲6一馬と踏み込まれるのが怖いが、△7九歩成で勝ちだ。………《変化は省略》………
よって本譜、先手は△7九角に▲5九銀と1枚投入する必要がある。
=========【以上、佐藤九段の自戦記】
ネット中継を見ていて、この第5図での△7八歩の意味がよくわからなかったが、こういう深い読みがあったのかと感服。
ちなみに、ネット中継での解説陣は第5図を「後手かなり優勢」と見ていたようだ。
【以下、ネット解説より】=========
「これは形作りになってきましたね」と青野九段。
「ずっと言っているけれど、1八の飛車がどうしようもないんです。」
継ぎ盤では△6八と▲同金△7九角▲5九銀(1)△5四香の攻めが厳しい。さらに、(2)△6九金▲同金△5七角成▲4九玉△6七馬の王手飛車のほうがより厳しいと言われている。
=========【以上、ネット解説】
対局者とは異なり、解説陣は1八の飛車を単なるお荷物と見ている。佐藤九段の△7八歩の意味にも触れていない。
そのかわり、佐藤九段は(1)を選んだが、解説陣推奨の(2)のほうがより良かったようだ(自戦記で佐藤九段も認めている)。
この後、ややもつれ気味となった73手目の局面では
「後手に銀を渡しても、じつは先手玉は寄らないんです。△3九銀▲同玉△5九竜のときに▲4九銀!」(青野九段)1八の飛車が最強の守り駒となっている。
という解説があるのが、おもしろい。
やはり、対局者はよく読んでいるなあと思ったが、変化1図には疑問がある。
再掲、変化1図
確かに。この図においては7八に後手の歩があれば、先手に詰みがあり後手の勝ちだ。しかし、変化1図でも△5五香と打てばこれが詰めろになる。たとえば△5五香に対して▲6一馬とすると、
△4八金(変化2図)で詰む。▲4八同銀は△5八金の1手詰みなので▲同飛だが、△7九馬(変化3図)の開き王手で決まる。
5八に合駒を打つのは△6九金の1手詰みなので、玉の逃げ道を作る▲5八飛か▲5八銀の移動合が最善の抵抗。しかし、▲5八飛には△同香成▲同銀△6八金以下、▲5八銀にも△6八金▲4九玉△5八金以下の詰みがある。
よって、変化1図では詰めろを受けなければならないが、うまい受けは難しい。一番延命できるのが▲6九銀だが、△4七馬(変化4図)で▲5六歩△同香▲5八歩△同香成▲同飛(銀)△8三馬と馬を抜かれては先手の負け。
と、ケチをつけましたが、第5図で△7八歩が利けば、その方が得のようなので、私の疑問は取るに足らないもののようです。