京料理 道楽のブログ

道楽の新着情報や、日常のちょっとした一言を書き込んでいきます。

砧(きぬた)

2009-11-16 | Weblog
『砧巻(きぬたまき)』という料理があります。大根や蕪を薄く剥(む)いて、さまざまな食材を巻き込んで、甘酢に浸け込み、小口から切って用います。スモークサーモンや白身魚なんかを巻き込むことが多いです。
砧とは、衣板(きぬいた)が転じた語で、かつての衣(ころも)は布目も粗くゴワゴワしたもんでした。
『砧打つ』とは、主に女性の夜なべ仕事で、洗うと硬くゴワゴワになった衣を、平らな木や石の上にのせて、槌(つち)で打って柔らこうしたり艶つやだしをしたりしてました。
『砧打つ』は秋の言葉で、《秋とだに忘れむと思ふ月影をさもあやにくにうつ衣かな》の藤原定家卿の有名な一首があります。正岡子規の《砧打てばほろゝと星のこぼれける》も見えます。
女性が『砧打つ』音は、月明かりのもと、秋の夜更けに、いかにも侘びしく響いたことでしょう。