一体科学というものは、現象のすべて自然に備わっているものを、各時代ある限定された知識を以て説明せんとするものであるから、その時代に於てある現象が説明し得たと思っても、新事実が出れば破壊されてしまうのである。即ち、今日の自然現象は今日の知識を以て説明されるものであって、明日は当然の知識を以て、再び説明されるべきものである。この結果として学説の生るべきは当然ながら、これを固執すればとんでもないことに陥ってしまうのである。今日の学説は明日の学説ならざるものが多いのである。それは知識は増加する結果にほかならないからである。
(石本巳四雄著『科学を志す人々へ』(講談社学術文庫1984、原題『科学への道』柁谷書院1939)より)
上記の文章が書かれた時代にくらべて、現在は科学の進展が著しいし、競争も激しくなっています。
今、大学院生として研究して得られた成果がいずれは否定されるかもしれません。そう考えると、研究そのものが意味の無いように思えてしまうこともあるかもしれません。しかし、今の研究があるからこそ未来の発見に繋がっているのです。歩みを止めてしまえば、先には進めません。それに、「知りたい」という欲望を抑えることが出来るでしょうか?
石本巳四雄さん(1894-1940)は実験物理学者で、戦前東京帝国大学の地震研究所の所長を務め、46歳の若さで亡くなっておられます。本書は、病気療養中に書かれたものだそうです。
『石本』?そう言えば、Desulfonema ishimotoniiという微生物がありましたね。
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