福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

痕跡

2024-08-01 01:06:22 | 研究室紹介
立つ鳥跡を濁さず。10週間弱、海外の研究機関で研究に集中。とうとう帰国の日がやって来た。使用してきた実験台も愛着深い。不要になったものを廃棄、器具等の洗浄等のあと片付けを行う。最後に実験台をアルコールで拭いて、クリーンアップ。



引き出しの中も再確認。一番上の引き出しの奥をチェックすると、使い込んだ木製の定規を確認。私が使ったものではなく、以前から放置されていた。どうしたものか? 



文具をしまう場所に片付けようと思い、その定規を手に取る。裏返してみると、手書きで名前がアルファベットで記されている。その名前をみた瞬間、種々の記憶がよみがえる。そうか、前職研究室卒業生のAさんが使っていたものだ。彼は、20年以上前、博士学位取得後、この研究所にて博士研究員として働いていたのだ。感慨深いものがある。この研究所でAさんは数報の論文を発表しており、引用数も多い。



今回の私の滞在では、Aさんの研究成果を基にしたプロトコル(実験の手順)を用いており、期待以上に実り大きな結果が得られた。帰国目前でAさんが愛用していた定規を発見するなんて。研究者人生として残り僅かな私を勇気づけてくれる出来事であった。

実験を重ねれば重ねるほど新たな発見の連続。キリがない。後ろ髪をひかれつつも、区切りをつける。さあ札幌へ戻ろう!

と、研究所の玄関で技術職員のBさんから、「道中で食べてね」と旅のお供をいただく。彼とは30年来の友人。ありがたい。多くの方々に支援されて、私の「プチ・サバチカル」を無事終える。感謝しかない。