福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

40年前の自分との対話

2007-06-06 06:35:09 | 南極

少しブログの更新が滞りましたね。時にはそういうこともありますので、お許しください。

さて、40年前の自分自身と対話することになったら、どんな話題で盛り上がるのでしょうか?大学院生の皆さんにとっては、あまり意味のない問いかも知れませんね。私の場合、ちょうど小学1年生の頃がちょうど40年前。

今の私:君は、将来何になりたいのかね?
小1の私:わかんねー。
今の私:うーん、それじゃ、尊敬する人は?
小1の私:いねー。
今の私:それじゃ、今、何がしたいの?
小1の私:腹イッペ、チョコレート食いテー(「腹一杯、チョコレートを食べたい」の意)。
今の私:そうなの(笑い)。じゃあ、学校の勉強は楽しい?
小1の私:つまんねー。
今の私:どうして、学校の勉強はつまんないの?
小1の私:担任の先生が怖いっけねー(「担任の先生が
怖いから」の意)。
今の私:それは、困ったねえ。

とまあ、こんなふうに、あまり盛り上がらない会話なのでしょうね。

70歳にして、40年ぶりに南極大陸を再訪したジャーナリスト柴田鉄治さんは、近著『世界中を「南極」にしよう』(集英社新書、2007年5月22日刊)で40年前のご自身との対話を綴っています。

30歳の私:7次隊(第7次南極観測隊のこと。1965年)に同行したころの私は希望にあふれ、新聞も読者から熱い期待が寄せられ輝いていましたよ。
70歳の私:あのころの希望に満ちあふれた気持ちをどうしたら取り戻せるのだろう。
30歳の私:「平和と人権を守るために」新聞記者になったのでしょ。その志に照らしていまの新聞はどうなのか?新聞記者のOBとして後輩たちにガンガン言うべきですよ。
70歳の私:ずいぶん言ってきているつもりだが、なかなかよくならなくて・・・。最近は、朝日新聞の幹部たちからも煙たがられて、「少しは黙っていてくださいよ」とまで言われているのだよ。私だって言いたくて言っているのではなく、やむにやまれぬ気持ちから言っているので、煙たがられるとがっくりしてしまう。
30歳の私:遠慮せずに「新聞よ、しっかりせよ」と言い続けてください。南極へ行ったころの元気さと明るさを思い出して・・・。
70歳の私:そうだ。もう一度、南極へ行ってみよう。そうすれば、いまの暗い気持ちも吹き飛び、あのころの明るい希望が取り戻せるに違いない。そして、「新聞よ、しっかりせよ」とあらためて檄(げき)を飛ばす元気も出てこよう。そのためにも、もう一度、平和の地、南極へ!だ。
30歳の私:それはいいですね。南極に行けば元気を取り戻し、希望がわいてきますよ。南極にはそういう力があります。
   (
柴田鉄治著『世界中を「南極」にしよう』より

そうでしたか。そんな熱い思いを抱いて、柴田さんは、71歳の誕生日を南極大陸で迎えたのですね。

0602で、南極での柴田さんはどうだったかと言うと、隊員の誰よりも元気で情熱にあふれていました。昭和基地から数十キロ離れたラングホブデの観測小屋で1泊した柴田さん。里芋を中心とした和風の煮物とカレーライスをおかわりした柴田さん。話尽きず、あっという間に翌朝を迎えましたね。

0705柴田さんの近著。内容は南極を中心としていますが、核となるメッセージは南極を遥かに超えています。これからの世界や地球のことを考えていく上で示唆に富む内容ですので、お薦めの一冊です。