今回の会談は、どう評価して良いのか分かりません。素直に喜ぶ程の情報もないし、かと言って全くの失敗とは言いたくないところもあるという状況でしょうか。
今日、第305回の「安倍晋三首相がトランプ氏と電話会談」で、とりあげた福島香織さんの中国が見放した説を取たいところですが、あの第304回「トランプ、金両氏が署名した共同声明」の包括的な内容読むと、とてもじゃないが上手く行ったとは思えない。
何時もの、宮崎さんが辛辣な評価をしてくれています。
宮崎正弘の国際ニュース・ 早読みより 平成30年(2018年)6月13日(水曜日) 通巻第5724号
米朝首脳会談を過大な期待で予測したメディアは何を間違えたのか
会談は始まりにすぎず、金正恩は中国の意向(何も約束するな)を実践した
日本の期待は夢幻に終わったのか。
発表された米朝首脳会談の共同声明を「素晴らしい」とトランプは自画自賛したが、多くの人々から見れば、具体的内容を欠いているため、「失望」だろう。
第一に「非核化への努力」は謳われたが、「完全な、検証可能な、不可逆的な」という文言は共同声明のどこにもないではないか。
期限も方法も明記されていない。要するに具体的には何も成果はなかったのだから。安倍首相が「高く評価する」などと、トランプの成果を渋々評価したのも、納得するには無理がある。
米国政府筋は「これから高官による詰めが行われて、具体的な日程などがでてくる。ともかく歴史的文脈に於いて、この会談は意議がある」と総括して、今後の交渉に大きく期待する方向にある。
とはいえ、「完全な、検証可能な、不可逆的な非核化」は結局、並ばず、「非核化」の現地を金正恩から得ただけだった。
中国の後ろ盾を得た金正恩は強気になっていた。アメリカとの世紀のショーを演出するために、人質を解放し、使い物にならなくなった核実験場を廃棄処分としたが、これをトランプは記者会見で「成果」と総括した。ディールの名人も、ここまでか、との感想を抱いた読者が大いに違いない。
「総合的に前進した」という米朝首脳会談は、アメリカにとっては中間選挙向け、北にとってはやっぱり時間稼ぎと中国との関連。唯一の歯止めが、米国は「制裁を続ける」という姿勢だけだろう。
大きく期待した人は失望の谷は深い。期待しなかった人にとっては、なんとか、一歩前進したというのが率直な感想ではないか。
「歴史的に米朝が『初の会談』という意議いがいにないもない」(NYタイムズ)
「希望を抱かせたが、保証がない」(ワシントンポスト)
「希望に向けての前進」(ウォールストリートジャーナル)
▲「人権」「拉致」の文言は声明には盛り込まれていない
米国メディアは消極的だが、否定はしていない。しかしトランプは記者会見で「人権に言及した」「日本の拉致問題についてはちゃんと伝えた」と言い訳に終始し、いつものような強気が見られなかったように、そのうえ、米軍撤退を示唆したように、これでは過去の歴代大統領の、その場の人気取り対応と大きな違いはない。
けっきょく、この米朝首脳会談で一番の勝者は、中国である。
おそらく中国は、前進があったとして『制裁』緩和の方向へ舵を取るだろう。『中国抜きには何も進まない』と国際社会に印象づけることに成功し、金正恩の背後でシナリオを描き、トランプに米軍撤退の発言を誘発させた。
同じ日に上野動物園のパンダが誕生一周年とかで、長い長い行列ができた。パンダはチベットの動物であり、中国が外交の道具としているものだ。
これを行列してみるという、あきれ果てた日本人がいるように、精神的劣化がますます進んでいる。
かなり厳しいですが、これもありそうですね。と言うことで、福島・宮崎で完全に分かれましたが、福島さんはあの共同声明を見る前の録画だったので、割り引く必要がありそうです。
いずれにしても、見守るしかない情けない日本です。流石、憲法改正もせず、安倍さんを責める一方でパンダにうつつを抜かしている平和ボケ日本だけのことはあります。
どこまで信実が分かるかと期待していた安倍さんとトランプさんの電話会談があったようです。
残念ながら、予想通り中身は明らかにされないようです。いずれにしても、これからの安倍さんと金の会談次第でしょうね。果たして、金がどう出るか。何とか、全面的な解決に向かって欲しいものです。
産経ニュースより 2018.6.12
【米朝首脳会談】安倍晋三首相がトランプ氏と電話会談、拉致提起に謝意 政府高官「金正恩氏はよく聞いていた」
トランプ米大統領は12日、米朝首脳会談後の記者会見で、日本人拉致問題について「共同声明に盛り込まなかったが、(会談で)取り上げた。安倍晋三首相の最重要課題でもあるからだ。これから彼らが取り組むことになる」と述べた。
安倍首相は同日夜、トランプ氏と電話で会談し、米朝首脳会談の説明を受けた。電話会談後、首相公邸で記者団に「拉致問題について米朝首脳会談で取り上げていただいたことに感謝申し上げた」と述べた。
日本政府高官によると、金正恩朝鮮労働党委員長は拉致問題に関するトランプ氏の話を「よく聞いていた」という。
首相はトランプ氏からの説明の詳細を明かすことは避けたが、「トランプ氏に伝えた拉致問題についての私の考え方は、トランプ氏から金氏に明確に伝えていただいた」と語った。
その上で「この問題はトランプ氏の強力な支援をいただきながら、日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければならないと決意している」と強調し、日朝首脳会談への意欲を改めて示した。
今回の会談について、習がどう動いたかを、福島香織さんが、興味深い考察を【Front Japan 桜】で、詳細に語ってくれています。何と、習は金を見放したようです。
これが信実であれば、金はトランプさんに頼るしかないでしょう。と言うことは、解決もあるのじゃないでしょうか。
共同声明まで秘密にするのかと思ったら、流石にそれはなかったようです。
それにしても、まさに包括的で、こんなものが役に立つのだろうかと思ってしまうのは私だけでしょうか。
只、今回の会談にボルトンさんが出席していたのだけが救いじゃないでしょうか。まさか、ボルトンさんが妥協することはないと信じたい。
産経ニュースより 2018.6.12
【米朝首脳会談】トランプ、金正恩両氏が署名した共同声明
ロイター通信は12日、米朝首脳会談で署名されたトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の共同声明の内容を報じた。全文は以下の通り。
米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長のシンガポール会談での共同声明。
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長は、初の歴史的な首脳会談を2018年6月12日、シンガポールで開催した。
トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係の樹立と、朝鮮半島での恒久的で強力な平和体制を構築することについての問題に、包括的で詳細かつ真剣な意見交換を行った。トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の非核化を完結するための固く揺るぎない約束を再確認した。
新たな米朝関係の設立は朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると確信するとともに、相互の信頼醸成が朝鮮半島の非核化を促進できると認識し、トランプ大統領と金正恩委員長は次のように宣言する。
(1)米国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国民の希望通りに、新たな米朝関係の構築に向けて取り組む。
(2)米国と北朝鮮は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、力を合わせる。
(3)北朝鮮は、2018年4月27日の「板門店(パンムンジョム)宣言」を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
(4)米国と北朝鮮は、すでに身元が判明している者の即時送還を含め、残る戦争捕虜/行方不明者の回復に取り組む。
トランプ大統領と金委員長は、史上初の米朝首脳会談が、重要な意味を持ち、両国間の数十年に及ぶ緊張と敵対を乗り越えて新たな未来を開く画期的な出来事であったと認識し、この共同声明の諸条項を全面的かつ迅速に履行するよう努める。米国と北朝鮮は、米朝首脳会談の成果を履行するため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮側の対応する高官の主導による後続交渉を可能な限り早期に開催するよう努める。
トランプ大統領と金委員長は、新たな米朝関係の発展と、朝鮮半島と世界の平和、繁栄、安全の促進に向け協力すると約束した。
2018年6月12日
セントーサ島 シンガポール
拉致問題は含まれたないようですが、会談では話してくれたようです。
産経ニュースより 2018.6.12
【米朝首脳会談】日本人拉致問題について会談で提起 トランプ氏
【シンガポール支局】トランプ米大統領は12日、米朝首脳会談後の記者会見で、日本人拉致問題について北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談で提起したことを明らかにした。共同声明では触れなかったが、トランプ氏は「安倍総理にとって非常に重要な問題だ。これから協議していく」と述べた。
米朝会談に隠れて殆ど報道されなかったようですが、マレーシアのマハティールさんが来日され、安倍さんと会談したようです。
拉致問題があるだけに会談は大事ですが、それにしても、相変わらず日本にとって良い事は報道しない自由の行使でしょうか。
マハティールさんの健在の内に、マレーシアの再生を全面て気に応援して、中国との繋がりを断つべきでしょう。
産経ニュースより 2018.6.12
対北朝鮮で連携を確認 安倍首相とマレーシア首相が会談
安倍晋三首相は12日午前、マレーシアのマハティール首相と官邸で会談した。両首脳は北朝鮮の完全な非核化に向けた連携について確認。南シナ海への海洋進出を強める中国を念頭に、海洋安全保障分野での協力も協議する。
安倍首相は会談冒頭、マハティール氏が提唱した日本の経済成長を手本にする「ルックイースト(東方)政策」に触れ、「東方政策のもとで両国民の絆が深まった。これを基礎に協力を拡大し、新たな高みに引き上げていきたい」と語った。「東方政策で教育、人材育成、技術移転、産業協力が進展した」とも強調した。
マハティール氏は「東方政策のアイデアを再生させ、日本からの協力も再び得て、強化していきたい」と話した。
安倍首相は12日午後、ラオスのトンルン首相と会談。マハティール氏は会談後、参院議員会館で与野党議員を前に講演する。
— Dr Mahathir Mohamad (@chedetofficial) 2018年6月12日
高山正之さんが、大好きな朝日新聞を思う存分切ってっくれている新しい本が出たようです。ところが、後半は切支丹伴天連批判なのだそうでう。
伴天連と言いながら、戦後のGHQの企みまで書かれているようです。
何時もの宮崎さんが書評で詳しく書いてくれています。相変わらずの高山節炸裂のようです。
宮崎正弘の国際ニュー ス・ 早読みより 平成30年(2018年)6月5日(火曜日)弐 通巻第5716号
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
朝日新聞とい う巨悪の根源を斬る名刀が冴えわたる
切支丹伴天連たちは、戦国の世に何をしたのか
高山正之『高山正之が斬る朝日新聞の魂胆を見破る法』(テーミス)
このシリーズも第四弾。巨大メディアが毎日、息を吐くように平気でつく嘘を抉りだし、真実に迫る快著である。
とりわけ朝日新聞の欺瞞と虚偽とフェイクの作り方、その見破り方など、いつもの高山節が冴える。
朝日新聞はマッカーサー元帥が押しつけた憲法を「良い」と称賛するICU副学長の談話を利用しているが、ICUとは、キリスト 教布教のためにマッカーサーから強要されて、創設された戦後の大学である。
ところがGHQの意図に反して、卒業生はキリスト教に染まらず、要するに日本ではキリスト教は、上から強圧的に布教しても、末 端には普及しなかった。
なぜか。
この先はメディア批判ではなく、高山さんの切支丹伴天連批判となる。
ポルトガルの火縄銃が種子島に漂着した。
「30年もしないうちに自分たちで工夫して世界最大の鉄砲王国となった。キリスト教も、もう八百万の神がいる。一人増えても気 にしなかった」
のである。
しかし伴天連の宣教師らの意図は、日本をキリスト教化し、支配権を握り、ポルトガルの植民地に作り直し、富を搾取することに あった。
「ついでに彼らはその調査費用稼ぎも兼ねて商売をした。日本の美術品の売買とかもあるが、主な商品は奴隷だった。キリシタン大 名は乞われるまま、例えば有馬晴信は領民の子供達を召し上げて『インド副王に献呈した』記録がある」(中略)「敵の城主も妻も子 も大奥の女も捕らえ、ときには百姓領民も捕虜にして海外に売った。鉄砲の火薬に欠かせない硝石1樽は女50人と交換された。大友 宗麟らが出した遣欧少年使節はその旅の先々で日本女性が鎖に繋がれ、秘所を丸出しにして売買される姿を目撃している。切支丹大名 は領内の神社仏閣を打ち壊し、僧侶にキリスト教への改宗を迫り、拒絶する者を焼き殺した」
なんとも凄まじい。
マッカーサーも、これに倣って神道を敵視し、靖国神社を破壊してドッグレース場にしようとした。
そのうえ、日本政府の金で2000万冊の聖書を運びこみ、日本に1500人の宣教師を呼び寄せ、しかも日本の金でICUを建てさ せ、教育にキリスと教を混入させた。
しかしながら伴天連には秀吉の時代から懲り懲りだったので、日本での信者は増えなかった。
一気に読むと清涼飲料10本に値する快著だ。
それにしても、キリスト教を寄せ付けなかった先人が築き上げた日本って、本当に素晴らしいですね。劣化した日本人にその芯が残っている間に何とか再生に結びつけたいものです。
と言うか、今、やらなければ消滅が見えてくるのじゃないでしょうか。果たして、日本は再生出来るでしょうか。
日本や特亜3国は、西洋からどう思われているのかという面白い記事がありました。日中は辛うじて韓国より上に見られているようですが、素直に喜ぶべきか、それとも比べられること自体に西洋が特亜3国を本当に理解していないと怒るべきなのか。
と言うか、広報下手の日本が中国と並んでいるだけでも奇蹟なのかも。さて、今後はどうなるでしょうか。
この中で、日中の下に見られているインドがネットではもっぱら言われているようにトップに躍り出ているのでしょうか。
願わくば、特亜3国が消滅してインドと日本が並び立っているなんてことを願いたいものです。
サーチナより 2018-06-04
西洋はど うして日本と中国を重視して、韓国を軽視するのか=中国メディア
中国メディア・今日頭条は2日、「どうして西洋は中国や日本だけををアジアの代表として見て、韓国やインドなどをないがしろに するのか」とする記事を掲載した。
記事は、「各種の重大な国際会議、フォーラムにおいて西洋がアジアについて語る際、往々にして日本と中国のみが提起される。ま るで日本と中国がアジアのすべてを代表しているかのように考え、韓国やインドなどの国を無視している。これはどうしてなのか」と 疑問を提起した。
そのうえで、「日本は近代以降西洋に深い印象を植え付けてきた。日露戦争から日清戦争、第1次・第2次世界大戦に至るまで、歴 史を語る際に日本に触れないわけにはいかない。そして、日本の科学技術は現代の世界に大きな影響を与えているほか、多くの日本企 業が欧米諸国に進出している。さらに、アニメなどの文化が西洋で流行していることも要素の1つだ」と説明した。
また、中国についても「欧米との政治的、経済的つながりは多くの人が理解している。中国は多くの西洋諸国にとって最大の貿易 パートナーなのだ。また、世界第2の軍事大国であり、国連における影響力も並々ならぬものがある。中国製品も世界の隅々にまで浸 透し、欧米に移住する大量の中国人によって中国文化が現地に根付いている」と解説している。
その一方で、西洋諸国からみて韓国の存在感が薄い状況について「エンタメ産業の発展により、世界各国での認知度は高まっている ものの、残念なことに、大多数の欧米人は韓国の影響を受けておらず、サムスンやLGが韓国の企業だということを知らなかったりさ えするのだ。また、西洋人が韓国人を中国人や日本人と間違えた際、誤りを指摘されてもさして気に掛けない。彼らは、それが韓国人 に対する非礼な行為であり、リスペクトに欠けているということを意識していないのだ」と伝えた。(編集担当:今関忠馬)
こんなの韓国の人達が読んだら五月蝿いことでしょう。それにしても、西欧の人達の中国に対する評価の高さは相変わらずのようです。やはり、人口の力でしょうか。
欧米が中国の信実を知り、見捨てる日は来ないのでしょうか。それとも、予定通り崩壊してくれるのでしょうか。
その時、平和ボケの日本は再生に向かっているのでしょうか。そうあって欲しいものです。
赤尾由美さんが伯父さんの赤尾敏さんを書いた本を、4月24日、第1405回の「愛の右翼 赤尾敏」で、取り上げました。
その本を、何時もの宮崎さんが書評で取り上げてくれています。実際に付き合いのあった方の書評のようです。
それだけに、私など勉強不足で全く存じ上げ無い戦前の愛国保守の方などの話題もあって興味深いものがあります。まだまだ、知らないことばかりです。と言うか当然ですね。
宮崎正弘の国際ニュー ス・ 早読みより 平成30年(2018)6月5日(火曜日) 通巻第1254号
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
赤尾敏氏 の国家主義運動・建国会が最も戦闘的であり、行動的であった
現代日本では完全な死語と化した「義人」と呼ぶに相応しい人物だった
赤尾由美『愛の右翼 赤尾敏』(マキノ出版)
片瀬 裕(国家主義研究家)
故赤尾敏氏の姪にあたる赤尾由美氏が書かれた著書だけに知られざる赤尾敏氏の一面が描かれて居り興味深く読了しました。
想い起せば、昭和37年頃、新橋駅の西口広場に会った街頭ステージで演説中の赤尾敏氏を見掛けて以来、通学路 の渋谷ハチ公前広場を始め、新宿,池袋駅前等で赤尾氏の姿を見掛ける度、あの憂国師子吼に耳を傾けたものです。
初めて赤尾氏の謦咳に接したのは、昭和47年、全日本学生国防会議の集会に赤尾氏を講師としてお迎えする為、大塚坂下町に あった大日本愛国党本部を訪れ、出講を乞うた時です。
赤尾氏は一面識もない学生に快く応接され、小生の依頼を快諾されました。
その後、やまと新聞の記者として赤尾氏とは取材の為しばしば面談致しました。亦、やまと新聞の前身、帝都日々新聞の社長、 野依秀市氏が愛国党の有力な支援者だった事、同党の機関紙「愛国新聞」がやまと新聞の印刷所内で編集、印刷されていた事も あって、赤尾氏も度々やまと新聞に足を運ばれたものです。
そうした折には社の近くにあった芝公園内の喫茶店に氏をお誘いし,珈琲を飲みながら建国会当時の回顧談を拝聴したものです。
赤尾氏を回想するにつけ想起されるのが、孤高の維新者と評された「国の子・桃太郎」こと渥美勝の事です。渥美 大人は京都帝国大学在学中、神政維新の行者たらんことを決意し、徒歩で上京、上野公園や神田須田町の広瀬中佐銅像前で道往く 人々に神ながらの世直しを訴えた一個の哲人です。この人は猶存社の有力な同人であり、北一輝とも親交がありました。互いに霊 的直観に恵まれ、北は渥美を「神様」と称し、渥美は北を「法華」よ呼んでいました。
大正10年の宮中某重大事件に際して北は渥美に精神的な指南を仰いだようで、その折、北が渥美に宛てた書簡の複写が小生の 手元にありますが、北はその踊るが如き筆跡で渥美の霊的な直観の冴えを賞賛して居ります。
渥美は生涯娶らず、一家を構えず、放浪の生活を続けました。晩年は火の用心の拍子木打ちとして谷中三崎町の火の番小屋に住ん でいましたが、昭和5年、同志で易断家の長岡理泉という人の家で、指先を火鉢の灰に埋めたまま眠るように息を引き取りまし た。その葬儀は愛国者葬として神宮外苑の日本青年館に於て盛大に挙行され、頭山満翁が弔辞を読んだと伝えられています。
陋巷に身を置き、赤貧に甘んじながら、理論と云うよりむしろ傑出した直観の力で記紀の神典を読み抜き国体の清明を十字街頭に 説き続けた渥美は、当時の愛国青年に多大な精神的感化を及ぼしたようです。神兵隊事件の首謀者、天野辰夫が渥美を「神兵隊の 父」と称えた事にもそれが読み取れます。
赤尾氏は大正の末年、この渥美氏に師事し深い精神的影響を受けています。左翼無産主義からの転向も渥美勝の思 想が及ぼした力は大きいようです。
渥美勝も赤尾氏を熱誠をこめて支援し、建国会の創設に際しては明治神宮に参籠しその成功を断食をもって祈願したと聞きます。
赤尾氏の数寄屋橋に於ける不屈の街頭演説も、渥美勝が貫き通した辻説法に学ぶところ大なるものがあったと思います。
赤尾氏は亦、憲法学者の上杉慎吉、国家社会主義者の高畠素之の教導と支援を受けています。それ故、赤尾氏の思 想と人格形成には、渥美勝の神典に依拠する国体観、上杉慎吉の熱烈な国家主義、高畠素之の近代的まつ日本的国家社会主義思想 などが渾然一体となってその血肉を成していると思われます。
ただ、類まれなあの闘魂だけは赤尾氏のもって生れた不退転の気性によるものでしょう。
赤尾氏を語る上で見逃され勝ちな事は、戦前の国家主義運動に於いて赤尾氏の率いた建国会が最も戦闘的であり、 行動的であったという事実です。
これは例の「特高月報」を通読すれば一目瞭然です。
毎号、右翼の項目で筆頭に記されるのは建国会の動向と、その精力的な実践運動の状況です。ご承知の通り、民間有志の起した 昭和維新運動と云えば血盟団事件と未発に終った神兵隊事件ですが、血盟団の井上日召が右翼運動に参加したのは建国会入会を契 機とするものであり、神兵隊司令の前田虎雄、同行動隊長の鈴木善一も建国会を通じて国家主義運動に参入した闘士でした。
ともあれ、赤尾氏の師子吼は通俗にして平易、誰にでも分かり易い内容の中にキラリと光る警句を宿していまし た。
これも前期した人々の思想と誠を昇華し、何よりも不断の実践運動によって培われたものと思惟します。赤尾氏は国家社会主義の 立場から天皇を奉じた革命,即ち「世直し」を大衆に提唱したわけです。こうした氏の言行に対し、「所謂・国体論」を弄して清 談に終始し、国難を前に腰一つだに上げない人々から、とかくの批判や嘲笑を耳にしました。
その度に小生は「あなた方にこの愛国の義人を批判する資格があるのか!」という反感を抱いたものです。思えば赤尾敏という 人物は政治運動家、右翼行動家と評するよりも、むしろ現代日本では完全な死語と化した「義人」と呼ぶに相応しい人であったと 思えてなりません。
今般拝読した赤尾先生の評伝を読みつつ、青年時代に親しく接した氏の面影が鮮やかに甦り、懐旧の念しきりです。
以上本書を読んで感じた所懐の一端を述べてみました。
「義人」と言う言葉には胸を打たれます。それに比べて、自分の不甲斐なさに情けなりますが、今更何を言っても遅いとしか言いようがありません。とは言え、消えるまでは、出来ることをやって行くしかなさそうです。
それにしても、気が付くのが遅すぎました。日本人が、こんな後悔をしなくても良いように、一日も早く目を覚まして欲しいものです。