ベルディヒ空気伝説検証-2

今年の全豪オープン、ベルディヒ(あっ、IMEが覚えてくれたよ!)は青と白の縦ストライプのシャツに赤いズボンという、いまこそ空気感を払拭せんとする強い意欲に燃えたウェア↓で試合に臨んだ。

この強烈な色と柄のウェアには私も仰天した。胸元、袖、背中、帽子に"H&M"と書いてあったのを見て更に驚愕した。
ベルディヒはH&Mとスポンサー契約を結んでいるからだが、しかしこのウェアはあんまりだ、とベルディヒが気の毒だった。しかもこういうときに限って、ノヴァク・ジョコヴィッチが着ていたユニクロのウェアがカッコよかったのである。
ジョコヴィッチが準決勝まで進んでいたら、ユニクロ対H&Mという夢のファスト・ファッション対決が実現したところだが、残念ながらジョコヴィッチは準々決勝でワウリンカに敗れてしまった。が、これはベルディヒとH&Mにとってラッキーなことだったといえる。
個人的な意見として、ベルディヒはぜひ「しまむら」とスポンサー契約を結ぶべきだと思う。ユニクロとH&Mは目指すところが違うが、しまむらとH&Mは方向性が似ている。私はH&M渋谷店しか行ったことがないが、H&M渋谷店の品揃えを見て、心中「これならしまむらの勝ちだ」とひそかに思ったものである。
全豪オープンでベルディヒが着用した青と白の縦ストライプシャツは、確かにファンの間に大きな衝撃をもたらした。これでベルディヒの存在感が一気に増すかと思われたが、しかし実際には、「ベルディヒはローソンでバイトしているらしい」という都市伝説を生み出したに過ぎなかった。またこれにともない、2ちゃんねるでも、「空気」と呼ばれていたベルディヒのあだ名として、「ローソンの店員」が新たに加わった。
ベルディヒは準決勝に進出したため、あだ名も「ローソンの店員」から「ローソンの主任」に昇格した。しかし準決勝でワウリンカに敗れたので、「ローソンの店長」には昇格できなかったらしい。また、あだ名としては長すぎるという理由からか、今では「ローソン」という略称で落ち着いた模様である。(しかし、全豪オープン後すぐに「空気」に戻ってしまった。)
追記:ドバイ・デューティー・フリー選手権におけるベルディヒのウェアを見る限り、ベルディヒはバイト先をローソンからファミリーマートに変えたものと思われる。
次なる問題は、ベルディヒは果たして海外でも空気扱いされているのか?ということである。
私はGAORAが放映している『ATPマガジン(ATP UNCOVERED)』を毎週録画して観ている。ちなみにGAORAは最近、いつも『日本ハムファイターズキャンプダイジェスト』ばかり放映しているが、そろそろテニスの大会も放映してほしい。で、なんだっけ、この『ATPマガジン』は、毎週のシングルス・ランキングのトップ10を紹介している。1位はラファエル・ナダル、2位はノヴァク・ジョコヴィッチ、3位にスタニスラス・バブリンカが浮上、てな具合に紹介していくのだが、なぜかベルディヒはほぼ毎回スルーされるのである。
こんな感じ。1位から5位まで紹介してきて、「6位はアンディ・マレー」、次は当然7位のベルディヒに言及するはず、と思ったら、「フェデラーは8位に後退、その後にリシャール・ガスケ、ジョー=ウィルフライ・ツォンガが続きます」とベルディヒを完全にスルー。これが2週連続で続いたときには、「ベルディヒは海外でもやっぱり空気だったー!!!」と、飲んでたコーヒーを噴き出しそうになった。
私個人の経験を顧みるに、ベルディヒはどの大会でも常に準々決勝や準決勝まできちんと上がってくるが、その準々決勝や準決勝の間に、常にいつのまにかいなくなっている、という印象がある。おそらく、勝っても負けても、対戦相手の名前のほうがニュースの見出しに使われてしまうためかと思われる。あるいは、ベルディヒの勝敗の結果が、他の選手の記事の最後に付け加えられて終わることが多いせいもあるだろう。
最も悲惨なのは、ATP公式サイトを見ていて気づき、またしてもコーヒーを噴き出しそうになったことには、実は、ベルディヒは2013年シーズン、1回も優勝していないのである。1回も優勝していないことが悲惨なのではない。1回も優勝していないのに、「ベルディヒ不調」とかメディアに騒いでもらえないことが悲惨なのである。
ロジャー・フェデラーが2013年シーズン、1回しか優勝していないことで「フェデラー今季絶不調」、「フェデラーはもう終わりか」などと大騒ぎされたのに比べると、扱いの違いは明らかである。ニュースの見出しでも「ベルディヒ、今季復活を誓う」とか「ベルディヒ、再起に向け好発進」とか「ベルディヒ、復調への手ごたえ感じる」とかいった文句を見た覚えがない。
ベルディヒのランキング6位または7位に対するこだわりから察せられるように、ベルディヒが目立たない最も大きな理由は、ベルディヒのキャリアの傾向がH&M路線ではなく、むしろ無印良品路線であることだと思われる。
色とデザインは定番中の定番で品質は確か、シンプルだが質が良くて長く使えるという無印良品の特質は、激しいアップダウンがないベルディヒの安定したキャリアと相通ずるものがある。しかし、シンプルすぎて逆に着こなしが難しく、うまく着こなせないと単なる地味な服になってしまう無印良品のもう一つの特質もまた、ベルディヒの空気感と共通する点である。
要は、そろそろグランド・スラムのタイトルを一つくらいとっとけ、ランキングももっと上を目指せ、ということである。フェデラーだけにはめっぽう強い選手として満足していて、それでいいわけがない。もっと上見て欲出せ。
ベルディヒが目立たないもう一つの大きな理由は、単純明快、どの大会のどの試合でも帽子をかぶってプレーしていることである。顔が見えないんだから、顔が覚えられないのも当たり前。休憩中には帽子を脱いでいるのかもしれないが、試合をテレビ観戦しているほうだって、休憩時間にはコーヒーを淹れに行ったりトイレに行ったりする。
フェデラーみたいに、どんなに強烈な直射日光浴びても頑として帽子をかぶらないようにしろ、と言ってるのではない。ジョコヴィッチやマレーのように、必要なときにだけ帽子をかぶればいいんじゃないかと思う。ATP公式サイトの顔写真よく見たら、ベルディヒはけっこうイイ男だ(←ここ大事)。イケメンぶりを公開しないのは罪が深い。
こう書きながら、ベルディヒの顔を思い浮かべようとしてもまだ浮かんでこない。ATP公式サイトのウィンドウを閉じた瞬間に忘れてしまったらしい。あ、代わりに(?)ティムラズ・ガバシュヴィリが出てきた。
ベルディヒのファンのみなさん、茶化しちゃってほんとごめんなさい。

