シュトゥットガルト・バレエ団『オネーギン』(11月22日)


 シュトゥットガルト・バレエ団『オネーギン』全三幕(2015年11月22日於東京文化会館大ホール)


   振付:ジョン・クランコ
   音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
   選曲・編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
   装置・衣装:ユルゲン・ローゼ


   オネーギン:ロマン・ノヴィツキー

   タチヤーナ:ヒョ・ジョン・カン(カン・ヒョジョン)

   レンスキー:パブロ・フォン・シュテルネンフェルス

   オリガ:アンジェリーナ・ズッカリーニ

   グレーミン公爵:マテオ・クロッカード=ヴィラ

   ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
   乳母:ダニエラ・ランゼッティ


   指揮:ジェームズ・タグル
   演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


   第一幕:約45分、第二幕:約25分、第三幕:約25分


  今日のキャストはおそらく第二キャストか第三キャストだと思うのですが、それなりの舞台だったと思います。とびきり良い出来とはいえないけど、わるい出来というわけでもない。しかし、キャストはみな適役でした。芸術監督のリード・アンダーソンは、男性ダンサーに衰えがみられると容赦なく即刻クビにする、というイメージがありますが、キャスティング能力はさすがです。

  第一幕では、レンスキー役のシュテルネンフェルス、オネーギン役のノヴィツキーともに、やや硬さがみられました。シュテルネンフェルスはソロでの踊りとオリガとのパ・ド・ドゥでのパートナリングがぎこちなく、ノヴィツキーもソロが少し不安定でした。ただ、庭を散策していたオネーギンとタチヤーナが踊る場面で、ノヴィツキーがタチヤーナを持ち上げた瞬間に、ノヴィツキーが高いパートナリング能力を持っていることはすぐに分かりました。

  最初から盤石の踊りを見せたのがオリガ役のズッカリーニで、脚は高く上がるわ、何回転しても軸がまったくブレないわ、両脚を180度以上に広げて跳ぶわで、彼女が今何歳かは知りませんが、「今後に期待」的なダンサーなんだろうなと思いました(もう主役級のダンサーだったらごめんなさい)。

  第一幕では「鏡のパ・ド・ドゥ」まで派手な踊りがないタチヤーナ役ですが、そのタチヤーナ役のカン・ヒョジョンは、腰から直に脚が生えているかのようなアラベスクのポーズ(←キエフ・バレエのオレーサ・シャイターノワを思い出させた)だけで、これまた瞬時に別格感が漂いました。

  「鏡のパ・ド・ドゥ」でも、リフトされ上手というか、あれほど速くて複雑なリフトをされながらも空中で姿勢がまったく崩れず、強靭な筋力を持っているんだろうと思われました。度胸もありますね。一歩間違えると大事故になるような、女性ダンサーがわざとオフ・バランスになって、男性ダンサーがそれを支える危険なリフトやサポートでも、カン・ヒョジョンはまったくためらうことがありませんでした。

  11月30日(月)午前11:15より、WOWOWライブ(192)でメトロポリタン・オペラのライブビューイング『エフゲニー・オネーギン』の再放送があります。エフゲニー・オネーギン :マリウシュ・クヴィエチェン、タチヤーナ:アンナ・ネトレプコ、レンスキー:ピョートル・ベチャワ、オリガ:オクサナ・ヴォルコヴァ、指揮はワレリー・ゲルギエフ大先生(笑)。賛否両論あるようだけど、私はこれは名演だと思います。

  バレエの『オネーギン』を観た後にオペラの『エフゲニー・オネーギン』を観ると、あまりな違いに打ちのめされますが、一緒に楽しむのもいいかと。バレエ『オネーギン』の振付者であるジョン・クランコと選曲・編曲を担当したクルト=ハインツ・シュトルツェが、オペラを直接的な下敷きにしているのがよく分かるよ。

  (続きはあとでねん。)

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