ドバイ免税テニス選手権 ロジャー・フェデラー総括-1


  新国立劇場バレエ団『ジゼル』の詳細な感想(=相変わらず異様に長たらしくて粘着でくどくてイタい感想)は後で書きます。とりあえずテニスネタでよろぴくっす。

  大会名がヘン?いいじゃん。"Dubai Duty Free Tennis Championships"だもん。「ドバイ免税テニス選手権」じゃん。ドバイはロンドンでスキミング&偽造された、私のクレジット・カードが不正使用された思い出深い(行ったことないけど)土地である。


 1回戦 対 マレク・ジャズィリ(Malek Jaziri、チュニジア)

   5-7、6-0、6-2(←だから何なんだよこのスコアはよ)

  先週、フェデラーは理解不能な行動をとった。母リネットとともにいきなり南アフリカのリンポポを訪問し、「ロジャー・フェデラー基金」が支援している、貧困層の子どもたちの就学前教育(幼稚園)プロジェクトの視察に自ら赴いたのである(そこで子どもたち相手に絵本を使って様々な球技を説明した際、「おぢさんはクリケットはできないけれど、テニスならほんのちょっとだけできるよぉ」と言ったのがファンに大ウケしている)。

  試合がない期間が2週間とか3週間とかならまだ分かるが、前の大会(ABN AMRO World Tennis Tournament)と今回の大会の間隔は1週間しかなかったのである。それなのに、わざわざ南アフリカまで行って慈善活動。ポイント稼ぎにガツガツしてる状態なら、こういうことは普通やらんだろう。

  ちなみに、フェデラーがアフリカの子どもたちと一緒にいる映像を観ると、フェデラーが小さな子どもの扱いに慣れているのがよく分かって面白い。

  アフリカのかわいらしい子どもたちと交流してなごんだ、優しい父親モードのままで試合に臨んだせいか、あるいは、この日は風が強くて意外に蒸し暑かったらしいせいか、第1セットのフェデラーは「やる気あんのかおっさん」と言いたくなるほどのだれっぷり。最後のサービス・ゲームをあっさりブレークされ、第1セットを取られてしまった。

  ジャズィリは若く見えるが29歳、現在の世界ランキングは128位。プロ転向は2001年で、フェデラーと活動時期がほぼかぶってるにも関わらず、両者の対戦は今回がはじめてだという。この大会にはワイルドカード(主催者推薦特別枠)で出場した。

  ジャズィリのここ数年のランキングは乱高下はしていない。むしろ緩やかだけど上がっている。たぶん、ずっと下部大会ばかりを回っていた、大きな大会では予選落ちし続けていた、資金不足で大きな大会にずっと出られなかった、といった理由で、フェデラーと対戦する機会がなかったのだろう。

  フェデラーは第1セットを先取されて、ようやく「アフリカぼけ」が治ったらしい。大して良いプレーもしなかったものの、第2、第3セットは手早く片づけて勝った。第1セットは45分くらい、第2、第3セットは45分くらい、合計で1時間半もかかってしまった。こんなことは書きたくないが、この調子だと優勝できるとは思えない。

  しかし、今日のフェデラーは苛立ったり、がっかりしたりする様子はなく、またエキサイトしたり、嬉しがったりする様子もなく、いったい何を考えているのか、いつにもましてまったく分からなかった。

  フェデラーは今シーズン、あんまりランキングとか優勝とかにこだわるつもりはないように思える。今シーズンは何かの調整期間に充てているのだろうか?


 2回戦 対 マルセル・グラノリェルス(Marcel Granollers、スペイン)

   6-3、6-4

  1回戦、対ジャズィリ戦でのフェデラーの面妖な戦いぶりから、フェデラーが今日負けても驚かんわ、と思っていた。1回戦でフェデラーが第1セットを落としたことは大きな話題になっているようで、1回戦の試合後、2回戦の試合前とも、実況中継が話していたのはそのことばかり。セットを落とした程度で大騒ぎになる選手はフェデラーぐらいだろう。

  解説者が原因として指摘していたのはフェデラーのメンタル面だった。テニスのみに集中できるかどうかが鍵だとかなんとか言っていた。

  対戦相手であるGranollersの日本語表記は一定してない。実況中継では「グラノラルス」と聞こえた。正式名はMarcel Granollers-Pujolらしい。Marcel、Pujol、フランス系かな。

  グラノリェルスは長身で、ビッグ・サーブが持ち味のようだった(といっても200数キロ台だけど)。サーブをするときのポーズに特徴がある。手足がやたら長い。バレエ・ダンサーだったら王子になれるかも。あとは、横のラインぎりぎりに突き刺さるかのようなフォアハンドが見事だった。

  フェデラーは1回戦での不可解な試合内容から一転、今日は普通に強かった。典型的な序盤戦でのフェデラーのプレーだった。フォアハンドは置いといて、特に目立ったのは、バックハンドの鋭いリターンとネット・プレー、ラインのかなり外側から打ち返して相手コートのラインの内側に入れたリターン、それから、フェデラーならではの、「反射的に思わずこう打ったら何でか分かんないけどウィナーになっちゃった」的変則技が多く見られた。

  観客はお金を払ってチケットを買って、時間を割いて観に来てくれている。1回戦みたいな試合はいけないと思う。テニスはスポーツだけど、興行でもあるんだから。ほとんどの選手は、自分が勝つことで精一杯で、観客のことを考える余裕はないだろう。今日のフェデラーは観客を楽しませるという義務もちゃんと果たした。

  今日もフェデラーは感情をまったく見せなかった。試合中もひたすら無言。でも、ひそかに機嫌はまあまあ良かったらしい。ボールをサッカーみたいに背中で受け止めたり、アウトのボールを股抜きショットで返したりして、無表情で遊んでいた。また、ミスをした直後に、「おっかしいな~、こんな感じかな~?」的に確かめるように素振りをしてもいて、やっといつものフェデラーに戻っていた。

  でも、これから相手がどんどん強くなってくるから、試合ごとに、またセットごとに好不調の波が激しいプレーをするのでは危ないよね。それがフェデラーの面白いところでもあるんだけど。


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