ザハロワ降板

  もうあちこちで話題になっているようですが、この10月に開催されるボリショイ&マリインスキー・バレエ合同ガラ公演、そして来年1月に上演される新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』に出演予定だったスヴェトラーナ・ザハロワ(ボリショイ・バレエ)が、「健康上の理由」により両公演を降板しました。

  来年の公演にまで影響するような「健康上の理由」が何なのかは説明されていません。でも、ゆっくり養生してしっかり体調を整え、また舞台に戻ってきてほしいものです。

  ボリショイ&マリインスキー・バレエ合同ガラ公演では、すでにマリーヤ・アレクサンドロワ(ボリショイ・バレエ)の参加が取りやめになったことが発表されていました。その代わりとしてアンナ・ニクーリナが出演することになりました。

  ザハロワの代わりとしては、ガリーナ・ステパネンコが出演することになったそうです。

  アレクサンドロワとザハロワの降板については、私個人はさほど残念ではありません。両人とも日本ではとても人気のあるダンサーです。彼女らの踊りはこれまで何度か観てきたし、これからもその機会はいくらでもあるだろうからです。

  でも、アンナ・ニクーリナやガリーナ・ステパネンコの踊りは、日本ではおそらくめったに観られないのではないでしょうか?将来有望だというニクーリナがどんなダンサーなのか楽しみですし、超ベテランのステパネンコについては、ベテランならではの円熟した、表現力の豊かな踊りがきっと観られることでしょう。それに、ベテランといっても、ボリショイ・バレエのダンサーたちは、基礎体力そのものが常人とはかけ離れているので、年齢なんてまったく感じさせない踊りを見せてくれると思いますよ。

  それにしても、合同ガラに出演するボリショイ・バレエの男性陣を見てみると、日本で知名度のあるダンサーがほとんどいませんなー。もちろん、彼らは優秀なダンサーばかりなんだろうけど、観客をその名前だけで吸引できるとはいいがたいと思います。ニコライ・ツィスカリーゼあたりが来てくれれば、大騒ぎにもなるんでしょうが。

  一方、新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』で、ザハロワの代わりにニキヤを踊ることになったのは、なんと英国ロイヤル・バレエ団のファースト・ソリスト、小林ひかるさんです。これには驚きました。

  ロイヤル・オペラ・ハウスの公式サイトに載っている小林さんのレパートリーを見ると、彼女は『ラ・バヤデール』(ナターリャ・マカロヴァ版)では、「影」の第1ヴァリエーション、第3ヴァリエーションを踊っているとのことです。新国立劇場の公式サイトには、ガムザッティを踊っている、と書いてあります。

  いずれにせよ、来年1月の新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』が、小林さんのニキヤ・デビューになるということなのでしょうか。

  ザハロワに代わるニキヤ役の人選がどういう経緯で行なわれたのかは分かりませんが、芸術監督であるデヴィッド・ビントリーの意向が強く働いたのではないか、と私は憶測しています。

  もちろんビントリーは小林さんの踊りをイギリスで実際に観ているでしょう。小林さんならニキヤを踊れる、とビントリーは踏んだのかもしれませんし、日本人の小林さんなら、新国立バレエ団のダンサーたちと(見た目的に)違和感なく共演できる、と思ったのかもしれません。あくまで勝手な憶測ですが。

  『ラ・バヤデール』のチケットの一般発売は今週末です。私はザハロワの出演日を観るつもりでしたから、気合を入れてチケット争奪戦に臨もう、と覚悟していました。でも、こんな言い方は小林さんに失礼ですが、これで余裕をもってチケット取りができそうだな、と気が楽になりました。

  こうなった以上、小林さんのニキヤを観るのが楽しみでなりません。降板劇も、見方を変えれば、今まで知らなかった優秀なダンサーと出会える貴重な機会になるのです。

  でも、ザハロワのファンのみなさんの残念なお気持ちは察しております。私ももちろん、ザハロワの舞台復帰を強く待ち望んでいる一人です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )