goo blog サービス終了のお知らせ 

函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

初出漁!(漁業見習7)

2008年12月14日 14時07分53秒 | えいこう語る
昨夜8時頃の海は、波は静かで風もなかった。
いよいよ明日は出漁か。夜9時に寝床に入る。なかなか寝付けなかった。
朝4時起床。6時に各家庭に設置された防災無線から「今日のウニ漁は、7時30分から8時15分まで」と、放送される。
迎えのトラックが来て、築港に向かう。港はすでに舟を海に出す準備で、空気のどよめきを感じる。
ほとんど顔見知りだが、挨拶など無用の緊迫感が漂っている。次から次へと舟が港を出てゆく。港から外洋に出ると、船は大きく右に曲がった。まるで競艇のレースのようである。海から見る山々は薄っすらと雪に覆われて、山水画の世界である。そんな思いなど口に出せないような緊張感がある。採取場所に到着した。
急いで準備に取り掛かる。7時30分、ウニ漁開始の放送が流れる。わずか45分間の勝負である。
うねりも出てきた。ウニがたくさんいる場所になかなか船を維持することができない。流されて海草の多い、ウニが見えない場所に船が動いてしまう。私が操作する小型の船外機の操縦が未熟だからだ。私もメガネで海の中をのぞいているので、自分の操作の仕方がまずいのをヒヒと感じる。
漁の中止が迫って来た時、胃がむかついてきた。頭痛がしたり目が回っていないので船酔いではないのだ。海中を覗き込んでいたのと緊張で、胃が動転したのだろう。
「うっ・・・うっ・・胃酸がこみ上げてくる」
ここで嘔吐しては、村中に知れ渡り「根性のない奴だ」と言われかねない。
もし嘔吐したら、飲み込んでやるとまで決心した。「うっ・・・うっ」が10分ほど続いて、ウニ漁終了の合図が聞こえた。海から顔を上げると、胃の調子があっという間になおってしまった。
「船酔いしたのか」と、船頭は言わなかった。しかしすぐ隣で「うっ」である。
聞こえていたかもしれないが、海の男はそんなことには触れないのだ。
そんなわけで私の初出漁は、自己採点30点である。
「初漁ご苦労さん。家に持って帰って食べればいい」と、こんなにたくさんいただいていいの、というくらい、ウニをたくさんいただいた。
嘔吐を我慢した分、半歩だが海の男に近づけたような気がした。