夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

中秋の名月

2012-09-30 20:20:29 | 日記
台風が思いのほか早く過ぎ去ってくれたので、今日の朝まではあきらめていた中秋の名月を見ることができた。

外出の後で、旭川に沿って帰って来ると、夜空に浮かぶ満月もそうだが、川面に月の光が映っているのが、宝石のかけらを敷きつめたようで、とてもきれいに見えた。

  川面には玉と見えつつ吹く風にくだけて寄する秋の月波


『後撰集』撰者の一人、源順(みなもとのしたごう)に、
  水の面(おも)に照る月なみをかぞふれば今宵ぞ秋の最中(もなか)なりける
という歌がある。「月なみ」は「月波」(月の姿を映した池の水面の波)の意味と、「月次」(月の順序)の意味を掛けている。陰暦八月十五夜は、三月ある秋(七・八・九月が秋)の最中にあたるので、こう詠んだもの。

この歌を思い出して作ってみたのだが、あやしの腰折れ歌になってしまった。

  

文化祭

2012-09-29 18:01:45 | 日記
今日は生徒たちが心待ちにしていた文化祭。

朝から一生懸命たこ焼き液を作って焼いてトッピングして、を飽きもせずに繰り返していた。たこ焼きを出す模擬店は一つしかなかったので、よく売れて、出来たたこ焼きは、並べる先から売れて行く。また作って並べて売れて、という感じだった。

私も一つ食べさせてもらったが、表面はパリッとして中身はトローリで、とても美味しかった。他の先生方からも好評をいただいた。

閉会式のときに、文化祭の人気投票アンケートの結果が発表され、「八つ足本舗」は模擬店部門の2位だった。たこ焼きの味もさることながら、看板やメニューの短冊、「これが一番人気!」のポップなど、飾り付けにも工夫を凝らしていたのが評価されたのだろう。

こうした面では、美術班の実質的リーダー、「H画伯」の活躍が光った。それにしても、この一見ふざけた感じの看板(H画伯は普段は絵がうまい)といい、京都の銘菓をパクッた屋号(「井筒八ッ橋本舗」から訴えられたらどうするんだ)といい、彼らは遊び心満載で、自分たちの文化祭を大いに楽しんでいるようだった。

片付け・清掃や機材の返却、収支決算を済ませた後、教室で彼らの労をねぎらい、ジュースを振る舞ってやったら、
「先生も一緒に乾杯しましょう」
と言われ、文化祭リーダーのO君の発声で、
「かんぱーい!!」
コーラで乾杯なんて、とても久しぶりで、なんだか新鮮だった。

私にとって、高校の文化祭が特別な意味を持つ記憶であるように、今日のことも、生徒たちが大人になったときに、高校時代のいい思い出になるのだろうか?ぜひそうなってほしい。

彼岸花

2012-09-29 17:50:43 | 日記
昨日の夕方、用事を済ませて歩いて帰って来る途中、線路沿いの草むらに彼岸花が咲いているのを見つけた。

花はこんなにきれいで可憐なのに、地下茎には毒があるということを子供の頃に知ってから、不思議に心惹かれつつ、不気味にも感じてきた。

このとき見た彼岸花は、盛りを過ぎているせいか、やや色あせて見えたが、それがちょうど夕焼けの色を集めたようにも見えて、心の中に浮かんだ句。

  夕映への色をうつして曼珠沙華

思ったことそのままの句なので、なんだか恥ずかしい。


明日は文化祭

2012-09-28 16:06:09 | 日記
今日は午前中のみ短縮授業が行われ、午後からは文化祭準備。

先ほどまで、生徒に頼まれて買い出しなどの手伝いに行っていた。たこ焼き器をレンタルショップで借りて、郵便局で釣り銭を用意し、その後、業務用の食品や調理器具を売る問屋を2、3軒回った。

「お好み焼きソース」があるのは知っていたが、最近は「たこ焼きソース」というのまであるのには驚いた。

普段はまず足を踏み入れないたぐいの店なので、こういう機会に入ると、「こんなものまで売っているのか」という商品を次々に発見して、すごくわくわくする。

この写真の店には、他のクラスの先生方も生徒を連れて来ていて、「お宅のクラスもですか?」と挨拶しあうのもおもしろい。

…まだ生徒たちは教室で看板やチラシなどの製作をしている。

明日、どんな文化祭になるのか楽しみだ。


「おおかみこどもの雨と雪」(その5)

2012-09-27 14:24:41 | 映画
雪の小学校最後の夏、記録的な豪雨がこの地方を襲った。

この頃、雨は頻繁に山に行くようになっていた。そして花に、「先生が足を悪くしてもうすぐ死ぬ。先生が山で果たしてきた役割を、誰かが果たさなければならない」と言う。

ある朝、ラジオでは晴れのち雨の天気予報を告げている。スクールバスが来る時間に、雨は雪に、「今日は家にいた方がいいよ」と注意するが、雪はそのまま登校する。果たして、午後から集中豪雨となり、花の家は落雷で停電する。雨は思いつめた表情で、「行かなきゃ…。」とつぶやいている。

小学校から、大雨で休校になったとの連絡を受け、花が小学校に雪を迎えに出かけようとしていると、雨がどこかに行こうとしている。次に気づいたときには、雨の姿は見えなくなっていた。花は雨の後を追って山をさまよい、崖下に転落してしまう。

花は倒れたまま、夢の中で彼(おおかみおとこ)に会う。
「今まで苦労かけたね。…ずっと君を見てた。こどもたちを立派に育ててくれてありがとう。」
「雨がいないの。」
「雨なら大丈夫だよ。もう大人だよ。自分の世界を見つけたんだ。」

翌朝早く、崖下に倒れていた花を、雨が見つけて安全なところまで運んでやり、そっと山へ帰ろうとする。花が気づいて、
「行ってしまうの? 私まだ、あなたに何もしてあげていないのに。」
雨は黙って去り、山の上からオオカミの姿で花の方を振り返る。
「元気で。しっかり生きて!」
花は雨に向かって叫ぶ。

次の年、雪は中学校に進み、寮に入った。花は今も村の家で静かに暮らしている。山からは時々、オオカミの遠吠えが聞こえてくる。

感想
実際にはありえない、現代のおとぎ話のはずなのに、不思議なほど引き込まれて見てしまった。映像の美しさ、人物設定の確かさ、脚本の良さもあるのだろうが、細部まで徹底して描き込まれ、作り上げられているのが大きいと感じた。国立市内や富山に住んでいる人なら、きっと見ていて思い当たる場所がたくさんあることだろう。主人公の花のまっすぐでひたむきな生き方や、村人たちと打ち解けていく様子、山里での暮らし、こどもたちの成長と別れなど、花と同じ視点で体験して、つらかったり悲しかったり嬉しかったりを感じたように思った。素晴らしい作品で、この夏休み、何人もの生徒たちが見ていたのも納得した。