夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

有明の月

2017-04-30 16:20:19 | 日記
先日の歌会に、

  徹夜して論文を書き有明(ありあけ)の月見て帰る後朝(きぬぎぬ)となく

という歌を提出したところ、先生からの添削で下の句が、

  月を見てゐる後朝の気分

となっていた。

有明の月は、陰暦二十日過ぎの、夜が明けてもまだ空に残っている月のこと。
平安・鎌倉時代の和歌や、日記・物語文学では多く「後朝」、男女が一夜を共にした翌朝の別れのつらさを象徴する景物として出てくる。


私が初めに先の歌を詠んだときは、徹夜明けで研究室から自宅に帰る途中、運転する車の窓から有明月を眺めつつ、女性のもとからの朝帰りでもないのに、とやや自嘲気味な気分を込めて歌っていた。
先生が直した後の歌からは、艶なる風情が感じられ、徹夜して論文を書き上げた後の充足感が読者に伝わってくる。
やはり先生の添削の冴えはすごい、と思った。

ちなみに、今回先生から○をいただいた方の歌は、

  午前零時湯船に沈み昨日とも今日ともつかぬ時にたゆたふ

というもの。
安逸感や浮遊感を詠んで気に入っていた歌なので、評価していただいて嬉しかった。

海北友松展

2017-04-23 22:02:12 | 日記
海北友松(かいほう・ゆうしょう)展を見に、京都国立博物館へ。


写真の「雲龍図」や「花鳥図」などが人気を集めていたが、私としては「網干図屏風」が最も気に入った。
また、「花弁図屏風」に描かれた牡丹の花が実に見事で、牡丹は実物を見るより、絵のほうがずっと美しく見えると思った。

友松が源氏物語絵巻の絵を描いていたことは初めて知った。
惜しくもその絵は失われ、中院通勝筆の詞書だけが残っているのだが、「東屋」や「手習」巻の詞書を読みながら、この場面をもとに、友松がどんな絵を描いていたのだろうと想像するのも楽しかった。


展覧会を見た後は、三条通りに出て土産などの買い物を済ませてから、居酒屋で食事とともに昼酒を楽しみ、しばし友松展の余韻に浸った。

かたはらいたし

2017-04-22 21:55:56 | 日記
例会に参加するため、京都へ。会場校は立命館大学。
大学構内が広く、校舎の数が多すぎて、例会の行われる校舎になかなかたどり着けなかった。


研究発表を聴くのは非常に勉強になるが、時々こちらの方がハラハラさせられるものもある。
今回は、通説や従来の研究のあり方に異を唱えようとするあまり、基本的な手続きを欠き、質疑の際に、根拠を挙げて論証するよう厳しく詰め寄られている方がいた。

私も昔、準備不十分なまま学会発表に臨み、叩かれた経験があるので、こうした現場に立ち会うと、まるで自分が責められているかのようにつらく感じる。
他人事ながら、端で見ていて気がもめ、「かたはらいたし」という古語が思い出されてならなかった。

神山

2017-04-13 21:53:38 | 日記
大山研修2日目の早朝、宿舎の窓から大山がとてもきれいに見えた。
朝日さす大山の眺めに、昔は「神山」「大神山」と呼ばれていたのをもっともだと思う。
それにしても、普段は研究室の窓から見ている大山がすぐ目の前にあるのが、ひどく不思議な感じがする。


今日は午前中はガイダンス、午後は大山寺周辺の散策である。
天気が良いので、まだ雪残る大山の山道を歩くのが、今から楽しみだ。

フルーツバスケット

2017-04-12 21:44:53 | 日記
今年も新入生を引率して、1泊2日の大山研修へ。
宿舎が大山の中腹にあるので、大山の山頂がすぐ間近に見える。
先週の入学式以来、緊張で固くなっていた学生たちも、ここに来て皆で一緒に行動しているうちに、互いの距離がぐっと縮まったように見える。


今日、クラスの学生たちが急速に仲良くなったきっかけは、なんと「フルーツバスケット」だった。
私がクラスでのレクリエーションで使うはずの「五色百人一首」を持ってくるのを忘れ、他の先生の意見を聞いてやってみたのだが、意外に大盛り上がりだった。

学生に言われ、私も仲間に加わったが、フルーツバスケットなんておそらく30年ぶりくらいだろう。
おかげでとても懐かしい気分を味わった。