夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

使ったことが

2017-10-28 19:13:21 | 日記
先日開講した『百人一首』の講座でも、毎回出席確認用に小テストの提出を求めており、そこで短歌の穴埋め問題をさせている。
今回出題した歌は、すべて村上しいこさんの小説『空はいまぼくら二人を中心に』(講談社)から選んだもの。

①「■■■■」と いうのが確か あったけど 使ったことが ない機能です

元の歌「死ぬ気で」 
学生の解答(括弧内は私のコメント)
・「諦める」(勉強や資格取得、スポーツに関してなら可、恋愛に関しては不可、かもしれません。)/「人を好き」(「ときめき♡」とか、「Fall in Love」などとすると面白いのでは?)/「留年」(留学のために制度として利用する人もいるし、色々です。大学(院)では就職浪人や学位取得のために留年するケースも多いですね。私も留年を繰り返し、繰り返してやっとこさ学位論文を書きました。(笑))

②結論は 好きか嫌いか どちらかと わかっていても ■■■■■■■

元の歌「迷う花びら」
学生の解答
・「期待ふくらむ」「聞けない返事」(気持ち、わかります。)/「考えさせて」「選べぬ答え」(結論保留し続けでは、相手が気の毒ですよ。)/「教えたくない」「言わないでおく」(出た!〈蛇の生殺し〉パターン。私も昔、これをやられたことがある。)/「花びらをちぎる」(花占いを連想した人は一人だけでした。しかも男子。鋭い。)

③わからない 何がいったい 楽しいの? ■■■■■■■ ■■■■■■■

元の歌「台風情報 見つづける母」
学生の解答
・「インスタ映えに かける魂」(紗〇子を想像してしまった。)/「先生の言う 専門知識」(私もきっと、学生にそんな思いをよくさせていると思う。)/「自分のしっぽ おいかけまわるの」(私は犬で見たことがある。)/「リアルな目を描き ほくそ笑むキミ」(本人注、東京喰種(グール)に感化されてリアルな目のイラストを描く友人に…(私の担任するクラスにも、東京喰種に感化されて、机にそんなグロい絵をデカデカと描いてるヤツがいました。→試験前に強制消去。)

今回取り上げた小説は、『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編で、短歌甲子園出場の夢に破れた「うた部」の高校生たちの一年後が描かれている。
登場人物は、新入部員以外はおおむね共通だが、今回は視点人物が別の部員になっており、しかも人間関係やそれぞれの置かれた状況も変わってくるので、前作との重なりとずれも楽しめる。
昨年は県大会予選で敗退した「短歌甲子園」への道は今年はどうなるのか、部員たちの友情と恋の行方はどうなるのか、読み始めたらとまらなくなり、深夜2時までかかって夢中で読み終え、翌日は寝不足でふらふらの状態のまま授業をした。

ちなみに①は、スマホについている機能を挙げる学生が多かったのだが、短歌の発想は、あまり身近すぎても面白みが出ない。
色々な想像(時にはありえない妄想)の翼を広げてみることの大切さを感じる。

無意識の影響

2017-10-25 22:05:50 | 日記
先日のシンポジウムではやはり、俵万智さんの講演とご発言を特に注目して聴いた。
私の『百人一首』の講座に参加している学生で、俵万智が好きだという者がおり、歌集も全部読んでいるようなので、今度の授業のときに紹介してやりたいと思ったのだ。
もちろん私が高校以来、ずっと憧れている歌人だというのもあるけれど。

現在『文学界』に連載中の「牧水の恋」の話や、自分の歌への影響、創作と言語表現の機微など、興味をそそる話題ばかりだった。

牧水からの影響で、一例を挙げると、

  空の青海のあおさのその間(あわい)サーフボードの君を見つめる

が牧水の

  白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

の本歌取りであるのは明瞭だが、

  ゆりかもめゆるゆると走る週末を漂っているただ酔っている

も、後で気づけば、自然にその影響を受けていたことに気づいた、と語っていた。
この話が強く印象に残った。



俵万智さんでさえ、こんなことがあるのだから、私などは無意識に先人の表現を取って、自分の表現のように思っていることが多々あるに違いない。
というより、自分のオリジナリティのある歌が詠めているかどうかすら怪しい。

それでも、私自身が長いこと短歌の創作でも学生への指導でも、壁にぶつかっていることを感じていたので、今回のシンポジウムへの参加で、少し光が見えたようには思っている。

さよなら宮崎

2017-10-22 21:41:33 | 日記
学会2日目は研究発表会。
今回、強行軍を覚悟で、高速バスと深夜バスを乗り継ぎ、宮崎まで往復したのは、恩師の発表をぜひとも聴きたいと思ったからである。
恩師らしく手堅い論証、柔軟な発想、明晰な説明で、非常な早口なのに、内容がすらすらと頭に入ってくる。
最近、研究の上で打開しがたい難所にさしかかっていたが、再び立ち向かう勇気を与えられた。
恩師のお陰で研究が続けられ、そして今なお、進むべき道を身を以て示し続けられていることに、改めて感謝したい思いになった。


こうした機会でもなければ、きっと来ることのなかった宮崎。
短い滞在の上、台風の影響でずっと雨風の激しかった印象しかないが、食べ物は美味しいし、人々は親切で優しかった。
次に来るときは、必ず若山牧水記念文学館に行こう。
さよなら宮崎。

短歌県にてシンポジウム

2017-10-21 22:20:42 | 日記
学会の1日目は公開講演会とシンポジウム。
台風が近づき、雨風の激しい中、やや遅れて会場の宮崎市民プラザに入った。

宮崎県は、「牧水短歌甲子園」を毎年開催しており、昨年、俵万智さんが移住してきたこともあって、「短歌県」を目指そうという機運が高まっていると聞く。
今回のシンポジウムでは、現在活躍中の歌人と、和歌の教育・研究に携わる研究者とが、「研究」と「実作」の両面から近現代短歌、そして古典和歌について討議し合う企画で、宮崎出身の歌人、若山牧水についても大きく取り上げられていた。


歌人としては、若山牧水記念文学館館長の伊藤一彦さん、「牧水短歌甲子園」の審査員でもある俵万智さん、NHK短歌講座選者の小島なおさん。
パネリストの方たちが錚々たる顔ぶれで、また議論が沸騰し、ほとばしり流れるように語られる言葉を必死で書きとめようとしても到底及ばず、ただ素晴らしかったとしか報告できないのが残念である。

宮崎へ

2017-10-20 23:13:49 | 日記
学会に参加するため、米子から深夜バス、高速バスを乗り継いで宮崎に行く。
宮崎といえば、歌人・若山牧水の故郷であり、「牧水短歌甲子園」の開催地でもある。
学会の公開シンポジウムでは、若山牧水記念文学館館長で歌人の伊藤一彦さんの講演もある。
今から期待がふくらみ、興奮を禁じ得ないでいる。


写真は壇の浦パーキングエリアから、関門橋を映したもの。
宮崎に行くのは初めてなので、食・酒もついでに楽しんできたい。