1983年に発表された坂本龍一/デヴィッド・シルヴィアンの「禁じられた色彩(Forbidden Colours)」。坂本龍一が作曲した、映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲にデヴィッドが歌詞をつけて歌い、まるで別の曲にしてしまった。
私は当初、12インチシングルのレコード盤で持っており、そちらはA面が「禁じられた色彩」、B面が坂本龍一の『戦メリ』アルバム所収「ザ・シード・アンド・ザ・ソウワー」「ラスト・リグレッツ」だった。
その後、だいぶ経ってから写真のCDマキシ・シングル盤を入手した。(中古レコード市で見つけたのだが、発売は1991年らしい。)収録曲は、
1.禁じられた色彩
2.バンブー・ハウス
3.バンブー・ミュージック
4.禁じられた色彩(versionⅡ)
と、2・3曲目に1982年の坂本/シルヴィアンのコラボ作品が入っているのが、ファンとしては嬉しい。また、4曲目に「禁じられた色彩」のヴァージョン違い(イントロの教授のピアノが、言語を絶した美しさ)が入っている。これは、もとデヴィッドのシングル「レッド・ギター」のB面に収められていたらしいのだが、たいていの方は、デヴィッドのソロ3作目『シークレッツ・オヴ・ザ・ビーハイブ』(1987)日本版のボーナス・トラックで聴いたヴァージョンなのではないかと思う。
それにしても、インストゥルメンタル作品としてすでに完成している「戦メリ」のテーマ曲にヴォーカルをかぶせようとは、他の誰も思いつかない(あるいは思っても恐れ多くてできない)だろうに、あえてやってしまったデヴィッドは凄いとしかいいようがない。
坂本龍一のピアノとシンセ、ストリングスに、デヴィッドの粘っこいヴォーカルが絡みついて有機的な、別の生命を持つ曲になってしまっている。
歌詞の持つ力を強く感じるのも、この曲の特色である。タイトルは、デヴィッドが愛読したという三島由紀夫の「禁色」(三島の多くの作品は英訳されており、海外でも評価が高かった)から着想したそうだが、映画の雰囲気にも合い、どこか退廃的で人生に対する懐疑的な内容を多く含んでいるのも、この時期のデヴィッドらしい。
My love wears forbidden colours
(僕の愛は禁じられた色彩を帯びる)
My life believes(in you once again)
(僕の生は(もういちどあなたを)信じる)
I'll go walking in circles
(足もとの土すら信じきれず)
While doubting the very ground beneath me
(それでも全てのことに盲目的な信仰を示そうとしながら)
Trying to show unquestioning faith in everything
(何度も同じ地点にたち戻ってしまう)
※訳は中川五郎
坂本龍一とデヴィッドの共同製作は、ジャパン時代の『孤独な影』(1980)の「テイキング・アイランズ・イン・アフリカ」に始まり、前掲「バンブー・ハウス/バンブー・ミュージック」とこの「禁じられた色彩」を経て、デヴィッドのソロ『ブリリアント・ツリーズ』(1984)、『シークレッツ・オヴ・ザ・ビーハイヴ』(1987)につながっていく。この作品はそうした二人の音楽的交流とその結実を見ていく上でも興味深い。