夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

大根島から

2017-03-25 22:29:30 | 日記
今日の午前中は、境港でミニ講演会。
主に先日見てきた倉吉・小鴨神社の「三十六歌仙額」や、歌合・歌仙絵などについての話をした。
境港の古文書の会の皆さんは非常に意欲的で、話をしていてその熱気に押されっぱなしであった。
参加者はご年配の方が多いのだが、好奇心がある限り、人はいつまでも若々しくいられることを教えられる。

講演会の後で、古文書の会代表の方にランチをおごっていただき、四方山話で楽しい時間を過ごした後、広島に向けて出発。
ひろしま美術館で開催中の「ランス美術館展」が明日終了なので、今日のうちに移動しておいた方がよいと思ったのだ。
美術館見学は、年が明けてから今日まで、ほとんど休みなく活動してきた自分へのご褒美である。


境港からは、江島大橋を渡って大根島を通り、松江経由で広島に行った。
途中、大根島から大山を遠くに眺めることができた。
こんな美しい景色を見ると、日頃の疲れも吹き飛んでしまう。

帰る雁

2017-03-24 22:27:09 | 日記
今日は勤務校の卒業式。
昨年は桜が咲き始めていたが、今年は春寒き年で、開花は来月4日頃になるらしい。

春は別れの季節。
私が何かにつけお世話になった職場の同僚も、この春で退職することになった。
気の利いたことも言えず、今がちょうど、中海で冬を過ごした渡り鳥がまた北へと帰って行く時期であるのに託して、

  よそながら思ひこそやれ今はとて花をも待たで帰る雁がね

甲羅に似せて

2017-03-12 22:42:01 | 日記
今日は原稿を書く作業で、ほぼ一日、研究室に缶詰め。
原稿がなかなか進まないのはつらいが、研究室にずっといること自体は、私にとって少しも苦痛ではない。

私は、今の職場に来て以来、自分の研究室を、仕事がしやすく過ごしやすいようにレイアウトし、本棚・ロッカーや用品を揃え、日々少しずつ手を入れ続けているので、ここは私にとって世界で最も居心地のよい快適空間なのだ。

しかし、今日ふと気がついて愕然としたのは、この部屋が結局、前任校で私が仕事と勉強の大半をそこで行っていた進学指導室と似ているのではないか、ということである。

私は前任校では、ずっと進学指導部に所属しており、普段は職員室より進学指導室にいることが多かった。

ここは、大きく3つの部屋に分かれており、来客用の応接室と、教員の執務室と、生徒用の進路資料閲覧室があった。
執務室には各教員用の机とPC、流しと電子レンジ・冷蔵庫、コピー機にFAXまであるので、一通りの仕事は全てここで行える。
また、閲覧室には幾つも長机があるので、私は放課後、生徒が帰る時間になった後は、ここの広いスペースを使って教材研究をしたり、本を読んだり、手紙や短歌を書いたり、自分の研究につながる勉強をしたりしていた。

もしこの部屋がなかったら、私は研究を続けることなどできていなかったに違いない。


そういう、私にとって重要な意味を持っていた部屋と、今の研究室が似ているというのは、考えてみれば至極当然のことなのかもしれない。
結局、蟹は自らの甲羅に似せて巣穴を作るということか。

思いの外の

2017-03-01 19:00:39 | 日記
前任校の教え子たちには、風邪で休んだ一人を除き、全員に会って話をすることができた。
初めのうちは、みんなすごく変わったように見えたが、目が慣れてくると、一人一人に〈ああ、あの頃のままだ〉と感じる部分があってホッとした。
彼らと近況報告や、私が担任していた当時の話などをするうちに、あっという間に時間が過ぎてしまったが、その中で特に、印象に残ったことがあった。

ある先生から、
「ここに先生のことが書いてありますよ。」
と言って渡された学校新聞に、教え子の一人が卒業を前に、学校生活の思い出を綴った作文があった。

そこには、自分にとって一番の転機になったのは、一年の終わりに担任から転職を告げられたことであること。「私は自分の夢を実現するために転職します。皆さんも自分の夢を絶対にあきらめず、追い続けてください。」と言われたが、その頃自分には夢といえるものはなかったこと。しかしそれ以後、その言葉が自分の中に常に存在し、しだいに夢が見えてくるようになったこと。そして、自分でも努力を重ね、先生方のサポートもあって、自分の夢への第一歩を踏み出すかたちで進路が実現したこと、が書かれてあった。

正直、前任校に対しては、職場にも生徒たちにも多大な迷惑をかけて退職し、ずっと自責の念を持ち続けてきたので、中にはこうしてプラスに受け止めてくれた生徒もいたのだと、少し気持ちが軽くなったように感じた。
思いの外の出来事に感激を覚えつつ、私のいなくなった後も生徒たちを卒業まで教え、支えてくださった先生方に心から感謝しつつ、その日は帰ってきた。