夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

例会レポート

2013-01-15 21:44:16 | 研究


会場は横浜市にある鶴見大学。曹洞宗の大本山総持寺の敷地内にあり、緑多く閑静な環境で、このようなところで学べる学生が羨ましい。

年明け早々なのに、会場の講堂はほぼ満席。発表は順番に、藤原良経の和歌表現について、万葉集の異伝注記の問題について、賀茂祭と和歌について。お三方目のご発表を楽しみにして参加してきたが、ほとんど圧倒されて帰ってきた。

賀茂祭(京都の賀茂神社の祭。葵祭とも)の儀式の順序・次第を、諸史料から整理され、和歌での詠まれ方との対応を綿密に検証されたご論であった。発表者が数年来、精力的に取り組んでいる『六百番歌合』の年中行事題に関する研究の延長上にあり、聴いていて教えられることの多い、中身のぎっしりと詰まった発表だった。

取り上げるテーマが大きく、ご自身、「始めてから調べなきゃいけないことがたくさんあるのに気づいて焦った」ということを言っておられた。文学・歴史学・民俗学などジャンル横断的に、取り扱う記録や作品類も多岐かつ長い年代にわたる。となると当然、他の分野の、問題意識の違う研究者からも、質疑応答で鋭く斬り込まれたりする。もともと歴史学の成果も十分に踏まえて研究する姿勢の方だったが、今回はさらに広い視野で論じられ、また『六百番歌合』や藤原良経・定家らの新風歌人たちの和歌活動についての理解もさらに深まっていることを強く感じた。私の今考えている問題について啓発されたことも多くあり、多くの収穫を得た研究発表であった。

十月から毎月のようにあった学会や例会も、年度初めまではしばらくお休み。ここ三月ほどで学んだことを、自分の勉強にも生かしていく。

奈良大学で学会。

2012-07-15 21:23:04 | 研究
関西の例会に参加。会場の奈良大学には、八年ほど前、勤務している高校の上司のお供で、訪問したことがあったが、構内はほとんど見学していなかったと思う。単科大学だが、規模が大きく、立派な建物なのに驚いてしまった。

3本の研究発表が行われたが、お三方ともにすばらしく、質疑応答も活発で、盛況な例会だった。特にお二人目のK先生のご発表は、以前から期待していただけに、聞いている方も気合いが入った。

藤原定家の名所表現と歌歴、建保期歌壇の問題についての研究発表だったが、必死にメモをとりながら、聞き漏らしのないようについていくのが精一杯だった。40分の発表時間に、やや早口で鋭い解釈や重大な問題点の指摘が流れるように繰り出されるのは、この上ない知的興奮であった。

今日、発表資料を読み返しながら、ノートを整理し、復習して改めて発表の素晴らしさを認識した。

  ①立論にあたっての着眼点の良さ。
  ②先行研究への幅広く適切な目配り。
  ③論証の際の手続きの確かさ。
  ④一首一首の解釈が鋭く的確でゆき届いていること。
  ⑤常に今問題にしている論点が、その歌人、作品、歌壇、時代との関わりから大きく捉え直されていること。
  ⑥発表技術の高さや発表資料の工夫。

など、精力的に研究され、大舞台も何度も経験されているK先生らしいご発表で、本当に勉強になったと思う。このように、学会発表の内容を後からおさらいすると、その時には気づかなかったことを思い出したり、理解が深まったりする。やはり、復習は大切だ。

そういえば、院生時代は、学会に参加できなかった院生仲間のために、「持ち帰り学会」とか「お土産学会」と称して、後日、みんなが集まれるときに演習室に集まり、資料のコピーを配って、研究発表の内容を報告する会が行われていたなあ。特に、遠隔地で学会が開催されると、留学生などはまず行けないので、参加した人から教えてもらうということが当然のように行われていた。言うまでもなく、学会で行われているのが当該分野での研究の最前線ということになるので、みんな、関心があったのだ。


さて、例会の休憩時間、S先生に会ってお礼を言うことができた。10年以上前に私が東京の例会で発表したとき、司会をして下さったのがS先生だったのだ。あのときは発表を失敗して炎上しただけに、S先生にも申し訳ないとずっと思っていたのだ。今回、そのテーマで研究し直したものが学会誌に掲載されたので、「今頃お礼を言うのも変なのですが、ありがとうございました。少しご恩返しができたかなと…。」ということを伝えると、「よかったですね」と言っていただいた。

短い時間だったが、大きな収穫をたくさん得た学会だった。


例会に参加。

2012-04-21 17:59:10 | 研究
神戸の武庫川女子大学で行われた例会に参加。

女子大としては最大だそうで、その規模の大きさに驚く。小説家の湊かなえの母校でもあったはず。

研究発表は3本。頓阿日次家集についての発表が素晴らしく、聴いていてドキドキした。このように入念に調べあげ、行き届いた発表が理想だ。

今日は時間を遣り繰りして、やっとのことで参加したため、途中で睡魔に負けるアクシデントもあったが、やはり研究の最前線に触れることができたのはよかった。

BIRTHDAY!

2012-01-21 22:56:53 | 研究
昨日は職場の、若手の教員の新年会があったので、記事が書けなかった。でも、こういう職場内での交流は大事ですよね。


一夜明けて今日、本校では1、2年生が模試を受けるのでその監督。生徒と一緒に1年の国語の問題を解いてみたが、第1問の評論が幽玄に関する論で、おそらく生徒にはイメージしずらかったろう。80字の記述問題も非常に解答しにくく、自分の能力不足を棚に上げて言えば、1年生に解かせる問題としては妥当を欠いているように思えた。で、どうも問題の精度が低いのではないかと話していたところ、この時期の模試は、成績資料としては春や秋のものほど現場で重視されることがないために、問題の質が劣ることが多いということを同僚の先生から聞いた。なるほど、さもありなん。


さて、今日は私の誕生日で、この日に次の記事を書けるのはとても嬉しい。


私にとって長年の懸案に一通りの解決を与え、論文を投稿したのが昨年の11月だったのだが、今週、学会の編集委員の方から連絡があり、雑誌への掲載が決まったということだった。


恥を忍んで言うと、学会での発表から論文化まで10年以上かかってしまった。学会で発表したときは、ある人に「血祭りに上げられた」と評されるほど散々の出来だった。学会で自説を公にすることに対する自覚が足りず、全くの準備不足で、読み上げる原稿も徹夜で中途半端なまま、ぶっつけ本番で発表するはめになってしまい、会場で聞いてくださった方々には、本当に失礼だったと思う。また、テクニカル・タームの定義も今思うと非常に杜撰で、発表の技術も稚拙であり、批判されたのは当然だった。


ただ、発見した内容については自信を持っていたので、いつか必ず学会誌に載せようと思っていた。その後、何度も挑戦しては挫折したり逃避したり、また立ち直ったりを繰り返し、ようやくここまで漕ぎ着けた。


こんなに時間がかかってしまったが、大学院在籍時からご指導を受けてきた恩師に、わずかなりともご恩に報いることができ、安堵している。昨日、メールで報告したところ、今日先生から「おめでとう」という返事がきていて、感激してしまった。


不如意な日々を支えてくれた両親や友人達の存在にも感謝している。これから少しずつ、こういった人たちにお礼をしていきたい。


今日の写真は、島根県益田の柿本神社のもの。4年前、ここを訪れ、「学会誌に載せるという宿願を果たさせてください」とお祈りした。以来、ノートパソコンのデスクトップ画面をこの写真にし、常に携行するシステム手帳に柿本神社の学業成就の御守をつけていた。

常に発願を忘れないようにしていたのが、夢の実現につながったと思う。柿本神社にもいずれ、お礼参りをしたいと思っている。







学会に参加。

2012-01-07 22:13:16 | 研究
今日は前から楽しみにしていた学会に参加するため、朝の便で東京に向かった。

寒かったがよく晴れて、空港から乗ったモノレールの窓から、富士山がきれいに見えた。

会場の日大(文理学部)に来るのは15年ぶりくらいだろうか?建物の多くが新しくなり、すっかり印象が変わっているのに驚いた。

学会では、碩学の研究とはこういうものなのかという発表を聞き、深く感じるところがあった。

年明けなので、図書館での資料展示は百人一首関係が多かった。千載集の日野切など貴重なものも見られて、とても有意義な機会になった。