夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

富岡製糸場世界遺産登録

2014-06-29 23:53:32 | 短歌

先週末に帰省したとき、その前日(21日)に「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)が世界文化遺産に正式に登録決定となったため、そのことが両親と話題になった。
このブログで一昨年(2012/8/8)、富岡製糸場を見学したことを記事として取り上げたときは、世界文化遺産への推薦が決定し、登録に向けて地域での運動が盛り上がっていることを書いたが、それから二年経って、晴れて「世界の宝」として認められたことを、とても嬉しく思っている。


世界遺産への登録は、すでに4月末にはほぼ確実と見られていたため、実はその頃に、昔、富岡製糸場で働いていた祖母を思い、歌に詠んでいた。今回の正式決定の報を受けて、ここで紹介することとする。(先月の初心者短歌講座の際に、先生に添削していただいている。)

  祖母のかつて勤めし「富岡製糸場」が世界遺産に登録されぬ
  物言はず見えぬ人となりしわが祖母よ「世界遺産登録」をいかに聞くらん
  まれまれは呼べば応ふることもありとわが母が祖母のこの頃を告ぐ
  体つきの小さき祖母は役人の見回る日には隠されしといふ
  「女工哀史」にはあらず職業婦人との誇りを持ちて働きし祖母
  昔語りの尽きぬ話をうとみしが真剣に聞かざりしを今は悔やむ


富岡製糸場は、このように山紫水明の地にある。
製糸場の南を流れる鏑川(かぶらがわ)の流れは、昔からきっと変わらないままだろう。
祖母も、かつてはこの眺めを見ていたのであろうか。

かねの音に昔のひびき…

2014-06-27 23:57:04 | 短歌
先週、帰省したとき、母親が私のために、6月16日の『東京新聞』を取っておいてくれていた。私の実家では、数年前から『東京新聞』を講読している。
「晶子の未発表短歌2首 愛知・津島の料理店で発見」という記事があったので、残しておこうと思ってくれたらしい。

私もこの件については、朝日、毎日、産経等の各紙のコピーを取っていたが、それらよりも『東京新聞』の方が扱いが大きく、説明も詳しかったので、母親の心遣いに感謝した。

与謝野晶子の短歌二首は、今回見つかった短冊が、新聞の第一面にカラー写真で紹介され、
  くれなゐの牡丹咲く日は大空も地に従へるここちこそすれ
  (紅のボタンが美しく咲く日には、その美しさに大空さえも地にひれ伏しているような心地がする)
  春の夜の波も月ある大空も銀絲の織れるところは(あるいは「ところぞ」)
  (春の夜の波も、月がのぼる広い夜空も、ともに銀の糸で織られたように輝いている)
と、二首の短歌の本文に口語訳も添えられていた。

また、同じ『東京新聞』の社会面には、今回同時に見つかった柳原白蓮の短歌七首の短冊も写真付きで紹介されていた。他の新聞では、白蓮の短歌については小さな扱いだったので、これはとても嬉しかった。
  かねの音に昔のひびき聞こゆなり忘れしことを思ひいでよと
  朝化粧五月となれば京紅のあをき光もなつかしきかな
など七首の短冊につき、白蓮の長女・宮崎蕗苳(ふき)さんは、間違いなく母の字であると述べているそうだ。

そういえば、NHK連続テレビ小説『花子とアン』の今週の放送では、白蓮がモデルの葉山蓮子が、後に恋愛関係に陥る龍一と接近していく様子が描かれていた。今後の展開から目が離せないとともに、白蓮が注目を集めている時期に、本人自筆の短冊が発見されたという巡り合わせに不思議なものも感じる。

月次の会・六月

2014-06-25 23:49:43 | 短歌
先月見学させていただいた、地域の月次(つきなみ)短歌会に、今月から正式に参加することとなった。

7時に結社の事務所へ行き、当会の規約などにつき説明を受けた後で、今月の会が始まった。今回は先生の他に12名が参加。なかなか盛会だ。
例によって、先生の『百人一首』講読から始まったが、赤染衛門(あかぞめえもん)の、

  やすらはで寝なましものを小夜(さよ)ふけて傾ぶくまでの月を見しかな

の歌を、先生は「すらすらと詠んでおり、なかなかよい。」と評し、赤染衛門についても、大変な秀才と褒めておられた。
また、藤原道長・頼通の時代には才媛、才女が輩出したが、女流歌人としては和泉式部が一番、赤染や大弐三位がそれに次ぎ、清少納言は歌がまずい、紫式部はたいしたことがない、とかなり率直な評価を述べられていたのが興味深かった。

その後は、一人ずつ、出席者の詠草の披露、参加者による感想・意見、先生の添削と続く。
今回の私の歌は、先日後楽園で蓮の花を見た印象をもとに詠んだものを持って行った。
(提出歌)
  蓮の花風を誘ふか天上にゐるごと心地すずしかりけり
(添削後)
  蓮の花は風を誘ふか天上にゐるがごとくにすずしかりけり

(提出歌)
  大輪の蓮には茎もたゆげにて風に大きく傾(かし)いでゐたり
(添削後)
  大輪の蓮(はちす)に茎もたゆげにて風吹き来れば大きく傾ぐ

【感想】
先生からは、二首目の歌の方がよいと丸をつけていただいた。
私としては、この歌は第三句を「たゆげにて」と工夫しながら、下句をまとめきれなかった憾みがあったので、先生にうまく直していただいたことに感激してしまった。
先日、後楽園の井田の古代蓮を見たとき、よくこんな華奢な茎で、大きな花を支えられるものだと思って見ていた。
風が吹くたびに、花が大きく揺れるのにも、茎は折れずにもちこたえている姿が、病づいた美女のようにだるそうに、悩ましげに首を振っているように見え、その印象をなんとか言葉にできないかと四苦八苦してようやくひねり出したものの、なお自分では納得がいっていなかったので、毎回のことだが、先生の添削で自分の歌を生かしていただいたことを強く感じた。

最近、食事や運動など生活習慣に気を遣っているため、仕事と勉強の両立が以前より大変になり、短歌がなかなかできず、あきれるほど上達の速度が遅いのだが、あきらめず、腐らず続けていこうと思う。

例会に参加

2014-06-23 23:52:00 | 日記

実家に帰っている間に、東京例会に参加してきた。会場は早稲田大学。確か、3年前にも例会があったが、そのときは戸山キャンパスが会場だった。今回は早稲田キャンパスで、大学のシンボル大隈講堂や大隈重信像はこちらにある。


研究発表は3本。最初と最後の発表に期待していたが、新古今歌壇と権門歌人との関わりや、詠歌主体と和歌的想像力の問題など、まさに今の自分の関心事と重なる内容で、聞きながら多くの示唆や刺激を受けた。
休憩時間に、中央図書館で行われていた「そして能が生まれた。」展を観に行った。
展示室は狭かったが、能関連の史料だけでなく、源氏物語の梗概書・注釈書、新古今集や藤原定家周辺、また連歌師たちの注釈書・歌論書、書状などが処狭しと並べられ、非常に充実した内容であった。早大所蔵の定家自筆明月記断簡を実見できたのも嬉しい。
近頃、自分の勉強を少しずつ続けながら、一方で自分一人の関心の内側に籠もり、視野が狭くなることを恐れていただけに、今回はそうした不安を払拭し、次の論文に向けて気持ちを新たにするよい機会となった。

大七 皆伝 純米吟醸

2014-06-22 23:28:01 | 日本酒紀行

池袋・東武百貨店の地下食料品売り場にある日本酒のコーナーは、品揃えが充実しており(場所が移ってからはやや減ったが)、お勧めの蔵元のフェアもやってくれたりするので、よく利用している。
昨日は、福島・二本松市の大七酒造フェアをやっていたので、思わず足を止めて店員さんの説明を聞いてしまった。
大七酒造は全量生酛(きもと)造りの蔵で、時間と手間をかけ天然発酵させた、真にうまい酒を造っているので、以前から好きでよく飲んでいる。
今回の目玉は、中央にある「大七 生酛純米生原酒」という夏酒。試飲した感じでは、ややクセが強いように思われたので、それよりは香りも味もまろやかな純米吟醸酒の「皆伝」の方を買い求めた。
後日、いつも美味しい日本酒を教えてくれる、例の店の店長のところに持って行こうと思っている。