これも境港で、古文書の会の代表の方から勧められていたのだが、現在、岡山の林原美術館で、岡山・鳥取池田家連携展示の一つとして、「戦陣に舞う揚羽蝶―池田家草創期―」という企画展が行われている。
揚羽蝶は池田家の家紋で、本展では、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康にそれぞれ仕えつつ、戦乱の時代に活躍して、後に岡山藩主として繁栄する池田家の草創期に焦点を当て、当時の文書や武具、画像・絵巻などが展示していた。
池田家の当主たちだけでなく、信長・秀吉・家康の書状も多く紹介されており、展示品に添えられた解説も懇切丁寧で、彼らの人柄や武将間の交渉、当時の世相も伝わってくる内容だった。
本展で心に残ったのは、寛永9年(1632)、岡山藩主・池田忠雄が31歳の若さで亡くなったときに、当時鳥取藩主だった池田光政が、叔父の忠雄の死を悼んで詠んだ歌である。
憂きにそふ涙ばかりを形見にて見し面影のなきぞ悲しき
光政の幼い頃はその後見人であった忠雄の死を哀傷する思いが切々と伝わってくる。