夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「ジェーン・エア」その2

2012-09-02 12:12:32 | 映画
あらすじの続き
ジェーンは、ソーンフィールド館を逃れて荒野をさまよい、やがて降ってきた大雨に打たれて衰弱したあげく、一軒の家の前で力尽きてしまう。戸口のもとに人が倒れているのに気づいたその家の主、セント・ジョン・リバースが彼女を家に助け入れ、ミルクを与え、暖をとらせる。

その後、ようやく回復したジェーンは、仕事もお金もないため、助けてくれたジョンの好意に従って、その家でしばらく暮らすことになる。ジョンは貧しい牧師で、二人の妹は家庭教師をして生活を支えている。

そんなある日ジョンが、「農家の娘相手ではあるが、小学校を開きたい。女性教師が必要なので、やってくれないか」とジェーンに頼む。ジェーンは粗末ではあるものの、家を持たせてもらい、教師として働くようになる。

教師の仕事にも慣れてきたころ、雪の夜、ジェーンの家のドアを叩く音が。ジョンが新聞の探し人の欄にジェーンが載っているのに気づき、知らせに来たのだ。ジョンの話では、亡くなったジェーンの叔父は遺言で全財産をジェーンに譲ると言い残しており、その額は2万ポンドにも上るという。また、ジョン、その妹たちとジェーンが実は従兄妹であったこともわかる。

ジェーンは「叔父の遺産は4等分し、私を家族としてください」と申し出て、4人は仲のよい兄妹として暮らしはじめる。しかしある日ジョンが、「私はインドに神の教えを広めに行くことになった。君は妻となって一緒に来てくれないか」と頼まれる。ジェーンが、「愛する兄でも、夫としては考えられない。結婚のことは忘れて」と答えると、「あの男をまだ愛しているのか。不実な愛は捨てろ」と言われてしまう。だが、そのときジェーンの耳に、自分を呼ぶエドワードの声が聞こえたような気がした…。

ジェーンが久しぶりにソーンフィールド館を訪れると、邸はその大半が焼失していた。聞けば、ジェーンがいなくなった後、バーサが狂気に駆られて邸に火をつけ、本人は焼死したのだという。また、バーサを助けようとしたエドワードは火に囲まれ、視力を失ったものの、生きていた。ジェーンは、邸内に愛犬とたたずんでいたエドワードの手をとる。「ジェーンか?」「目覚めて」。

感想
原作ではこの後、エドワードの視力は回復し、二人の間には息子が生まれ、寄宿舎に入れられていたアデールを呼び戻して幸せに暮らした、となるそうだ。

薄幸のヒロインが、数奇な運命と苛酷な環境、人間関係に耐えに耐えて幸福を得る、というのは古今東西よくあるパターンなのだが、不美人で頑固、理屈っぽい物言いをするというヒロイン像は、当時はきっと新しかっただろうと思う。

高い教養と強い自意識、誇りを持ち、自分で働いて自分の道を切り開いていける。恋愛も受け身ではなく、身分意識や因習にとらわれず、自分の信念に基づいて自分から愛を告白する。現在では当たり前だけれども、女性が1人の人間として自立した生き方ができるようになったのは、歴史の上ではごく最近のことなのだと改めて思った。

うろ覚えだが、この時代のイギリスでは、女性が外に出て働いたりするのは卑しいこととされていたらしい。ただ、家庭教師はその中でほぼ唯一、女性が自らの教養を活かして働くことができる職業だった、ということを読んだ覚えがある。そうした当時の女性の社会的存在についても、いろいろと考えさせられた。

当時を再現した衣装や調度、食事なども見所のひとつ。重厚で見応えのある映画だったと思う。