夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

2016年追懐

2016-12-31 22:03:49 | 日記
毎年大晦日には、その年の主な出来事を振り返って感想を書くことにしているので、今年も同様に。

1番はやはり、『蠖園集』(かくえんしゅう)の翻刻・出版の仕事に関わったことになるだろうか。
昨年10月に境港の古文書の会代表の方からお話があって、それからほぼ1年かけて翻刻作業や本文作成・校訂などのお手伝いをさせていただいた。
門脇家の資料調査のメンバーにも加えていただき、貴重な文書類を実見することができたし、私自身も門脇重綾について調べた内容を、何度か講演会で市民の方々にお話しすることができた。研究を通じて地域の方々と交流し、わずかではあるが貢献できた喜びは何にも代えがたい。
11月の境港での講演会の直前に、自筆掛軸が手に入るなど、まさに門脇重綾生誕190年のメモリアル・イヤーに様々なことが重なり、故重綾公のお導きなのかもしれないと感じた。

2番目は内緒です。

3番目は、4月から今の職場で初めて担任を持ったこと。学校の違い、システムの違いや共学であることなどから、なかなかうまく対応できず、学生・保護者や職場の方に迷惑をかけてしまったことも多い。それでも、教育現場を最前線で支えている感はあり、この仕事を通して今の学校や地域社会に役立てたらと思っている。

4番目は、文学の授業を担当するようになったこと。前期は近代短歌、後期は百人一首の講座を持っているが、後期は特に自分の専門を学生にわかりやすく伝え、学ばせることの難しさと面白さを日々実感している。

5番目は、カルチャースクールで源氏物語講座を行うようになったこと。月1度の講座ではあるが、受講者の方々との話し合いを通して、源氏物語の作品としての面白さに改めて目を開かされている。

以下、ランダムに挙げると、職場内で日本酒の会が結成され、不定期だが楽しく活動していること。大山に初めて登ったこと。
趣味の短歌は相変わらず上達できないままでいるが、近代短歌の授業で学生に教え、自分なりにその世界に向かい合った経験を通して、以前は花鳥諷詠が主だったのが、次第に自分の内面を率直に打ち出し、現実味を重視する方向に変わってきたような気がする。

今年も学会・例会に多く参加し、東京・関西(奈良・大阪・京都・滋賀)・松山など様々な場所を訪れるとともに、近代短歌や古典文学にまつわる土地を実際に歩くことができた。美術館・博物館にもたくさん行ったし、また、旅先で得られた詠歌も多い。
結局、私にとっての旅は、研究・趣味を問わず歌学びと歌作りに直結しており、だからこそ日常業務にしわ寄せが生じようと遠くに出たくなるのだろう。(勿論、旅先でお酒を飲みたいのもあるが。)


一方、今の職場や地域の方々との交流が増え、米子での暮らしが充実してきていることを考えると、来年はもう少し私生活を大切にし、すでに若くはない体をいたわり研究・教育・趣味の各面で生き生きと活動できるようにしたい。

今日の米子は暖かくおだやかなよい日和で、大山の夕映えがきれいだった。
このブログを読んでくださっているみなさまにとって、今年はどんな一年だったでしょうか。
それでは、みなさまよいお年を。

美酒鍋の会

2016-12-30 23:00:33 | 日本酒紀行
職場内で秘かに結成され、活動している日本酒の会。
第3回目は、同僚の先生の家で「美酒鍋の会」をした。

メンバーがそれぞれ自分のおすすめの酒を持ち寄り、テイスティングした後で人気投票し、最下位の酒は鍋の出汁にされる、という残酷なルール。

一口紙コップでそれぞれの酒を少量ずつ味わい、投票してから、鍋を熱し、美酒鍋づくりをはじめる。
同僚の一人が発酵食品の研究者で日本酒にも詳しく、この会のリーダー的存在であり、すべてを仕切ってくれた。

鍋はすき焼き鍋のような蓋付き深鍋タイプのものがよく、今回は私がグリル鍋兼用のホットプレートを持って行った。
熱した鍋にオリーブオイルを入れ、まず鶏もも肉・砂ずり・せせりを炒める。焼き色がついたら、ネギ・ニンジン・ゴボウ(シャキシャキ感が出るのでおすすめ)・シイタケ・シメジ・春菊・厚揚げ・モヤシなどを入れ、さらにその上に白菜と豚薄切り肉を交互に何層も重ねていき、日本酒を投入。(味付けは具材を入れながら適宜塩コショウする。)
その酒を持ってきた人の悲鳴も意に介さず、ドバドバと惜しみなく注ぎ、鍋に蓋をして野菜のかさが減り、アルコールが飛ぶまで待つ。

美酒鍋ができると、みんな「美味しい」を連発しながら食べていた。
確かに、お酒がいい仕事をしてくれ、野菜を最も美味しく食べられる鍋料理だと思う。
それぞれの野菜の持ち味がしっかり引き出されるので、塩コショウ以外の味付けは全く要らない。


お酒はどんな酒でもよいが、なるべく純米酒でお燗に向くものがよいと思う。
美酒鍋の二回戦は、私が持参した「神亀 純米吟醸 ひこ孫」を敢えて投入したが、もったいないほど美味な鍋になった。

寒い冬の夜、日本酒を愛する者同士が集まり、鍋をつつきながら飲むのは楽しく、美味しいお酒と料理を味わいながら語らいを楽しむ、というこの会が今回も実施できてよかったと思った。

大荒れ

2016-12-28 23:22:20 | 日記
私が担任しているクラスの学生が、先日足を骨折して、現在は実家に近い鳥取市内の病院に入院しているので、今日見舞いに行った。
朝早めに出たつもりが、山陰道が事故で一部通行止めとなり、結局鳥取に着くまでにはかなり時間がかかってしまった。
昨日からの寒気の影響で天気は荒れ模様、鉛色の雲が空を覆い、強い風が吹いたりやんだりし、時折空からパラパラと霰が降ってくる。


運転が長時間になったので、眠気覚ましに北栄町のあたりで車を停め、砂浜から荒れ狂う海を眺めた。
いかにも冬の日本海という感じがする。
曇りがちで、長く厳しい山陰の冬であるが、私は決して嫌いではない。

源氏論議

2016-12-27 16:29:21 | 日記
先日の源氏物語講座の後、教室に残っていた受講者の方数人と、源氏物語の当初の構想について話題になった。
「源氏物語を書き始めた頃、紫式部はどのくらい先まで話を考えていたのでしょうか?」
「よく言われることではありますが、「藤裏葉」の巻あたりまでは構想していたと思います。」

帝の皇子として生まれ、類い稀な美貌と才能を持ちながら臣籍に降下した光源氏が、恋愛遍歴を重ね、一時は政争に敗れ須磨・明石を流離することは、作者は当初から考えていただろうと思う。また源氏が、許されて都に帰ってからは順調に昇進を重ね、後宮政策も功を奏し、六条に広大な邸宅を構えて妻妾を住まわせ、不義の子・冷泉帝の配慮で准太上天皇に至り栄華を極める、という大団円までも、あるいは初めから構想に入っていたのかも知れない、という話をした。

「少なくとも、今日、図に書いてご説明したような人物関係や、大体の事件はあらかじめ決めていたでしょうし、そしておそらく年表も作っていたと思います。じゃないと…」
「話のつじつまが合わなくなる。」
「そうですね。それから、光源氏が何歳でどう出世していくかという、官位・官職の昇進のことも…。」


こんな感じで、受講者の方々と源氏物語について語り合うのは楽しく、学生時代にやっていた源氏物語の読書会の雰囲気を懐かしく思い出す。

人心地

2016-12-26 19:30:59 | 日記
師走の忙しさもようやく一段落つき、わがWEB日記も再開できるようになった。
思えば、10月末以降、講演会、論文、学会・例会行き、日常業務等で休日もなく、今月に入ってからは定期試験の作成・採点・成績処理に加えて、忘年会も度重なり、他を顧みる余裕がなかった。

先週木曜日に最後の忘年会があり、翌日、保護者との懇談のため休日出勤した後、これまでの疲れが出たのか、一昨日昨日はこんこんと眠り続けた。
体調不良ではなく、三食しっかり摂った上でひたすら寝ていただけなので、ご安心されたい。


ゆっくり休養できたので、なんだか人心地ついたような気分になった。
このふた月ほどの間に、本当は書きたかった記事がいくつかあるので、書けるものは後からでも書いて追加しようと思う。

とりあえず、今日は先月の源氏物語講座についての記事(その1その2)を上げておいた。
よろしかったらご一読あれ。