夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「おおかみこどもの雨と雪」(その2)

2012-09-23 23:20:41 | 映画
花が部屋に帰って来て泣き明かしながら見た夢に、生前のままの彼が現れる。
「こどもたちを頼むよ」
彼はそう言ったように聞こえた。

花の子育ては、悪戦苦闘の日々。雪は怒ったりぐずったりするとすぐ、毛を逆立ててオオカミの姿になってしまう。大学は子育てのため休学し、アルバイトもやめざるをえなくなり、彼の残した貯金でなんとか暮らしている。

子育ても、誰にも相談するわけにもいかず、人間のこどもの分と、オオカミのこどもの分と、両方勉強しながら必死で二人の子の面倒を見ているが、花はみるみるうちに憔悴していく。こどもたちも、オオカミとしての生き方か、人間としての生き方をとるか、迷っているように見えた。

困るのは病気のとき。雪が誤ってシリカゲルを飲んでしまったときなど、小児科に行くか、動物病院に行くかで迷って、双方に病状を問い合わせているうちに、雪が回復してしまったこともあった。

こどもたちは、いつオオカミの姿になるかもわからないので、花は外出も憚られ、外に出てもママ友の輪にも入れない。夜泣きの絶えない雨に、隣人が苦情を言ってきたり、雪の遠吠えの癖のせいで、大家がペットを飼っていると誤解し、「このままだったら出て行ってもらいますよ。」と脅されたり。あるときは、地域の児童相談所から相談員がやって来て、「お子さんに定期検診や予防接種をまったく受けさせていませんね。お話を聞かせてもらえませんか?」と言われてしまったり。花はしだいに追い詰められていく。

ある日、花はこどもたちに尋ねる。
「ねえ、これからどうしたい?引っ越そうか?人間か、オオカミか、どちらでも選べるように。」