『百人一首』講座の授業は、先日、試験を行った。
穴埋め和歌を出題するのも、今期はこれが最終回。
①横走(よこばし)る 葦間(あしま)の蟹(かに)も 雪降れば ■■■■■とや 急ぎ隠るる
(為忠家初度百首・葦間雪・五一四・源仲正)
(葦の間を横向きに歩いていく蟹も、雪が降ると、ああ、寒そうだと思って急いで隠れることだろうか。)
元の歌 あな寒げとや
学生の解答(括弧内は私のコメント)
・「寒すぎる」(元の歌と同発想です。)/「一大事」「世の末」(カニにとってはそうなんでしょうね。)/「足冷える」(8本もあるから大変だ。)/「埋もれ死ぬ」(身が平べったいから、少しの積雪でも命の危険に。)
②つらからぬ 人のけしきに はかられて ■■■■とのみ 思ひけるかな
(同・詞和不逢恋・五九四・藤原為業)
(つれないそぶりを見せないあの人の態度にあざむかれて、それでも(いつかはきっと自分になびいてくれる)とばかり思っていたことだなあ。)
元の歌 さりとも
学生の解答
・「幸せ」(幻想だったと悟ったときの絶望感たるや…。)/「両想ひ」「脈あり」「付き合える」(男子にありがちな勘違いなり。)/「いい人」(笑顔の仮面の下で、舌を出されていたのだと思うと…。)
③浅からず 契(ちぎ)るにつけて つらきかな ■■■■■■■ 心と思へば
(同・怠偽恋・六〇四・藤原為忠)
(愛情をこめて(将来を)約束してくれるにつけてもつらいことだなあ。真実でない気持ちだと思うと。)
元の歌 まことしからぬ
学生の解答
・「お金目当ての」(富豪の娘の悩みでしょうか?)/「その時だけの」「どうせ一時の」(光源氏がこのパターン。)/「口先だけの」(と知りつつ、頼みにしてしまうのが女心だったりする。)/「義務感からくる」(女性にはつらい。)/「いつか裏切る」「いずれなくなる」(不実な人が、世の中には溢れているようで…。)
④知られじと 君つつむめり われもまた ■■■■■■■ ほどぞ苦しき
(同・共忍恋・六二五・藤原為忠)
(二人の仲を他人に知られまいとして、あなたは隠しているようだ。私もまた他人の目をあれこれ気にしていることが苦しい。)
元の歌 人目はからふ
学生の解答
・「隠されている」(自分のこと、本当に好きなの?と思ってしまいますね。)/「他人に言えぬ」(人目を憚る事情があるのでしょうか。)/「独占できぬ」「自慢できない」(まさに夜の錦。)/「知ってしまった」(自分が好きになった相手には別に好きな人がいて、それを他人には隠しているけれども、自分はそれに気づいてしまった、という状況ですね。思いもよらない発想に脱帽です。)
感想
今回の歌は、藤原定家の父・俊成がまだ若く歌壇にデビューした頃に参加した『為忠家(ためただけ)初度百首』から選んだ。
②「詞(ことば)に和すれども逢はざる恋」(手紙は交わしてくれるけれど逢ってはくれない恋)、③「怠りて偽る恋」、④「共に忍ぶる恋」(相手も自分も共に、人に知られまいと、秘めて明かさない恋)など、恋愛の様々なシチュエーションを細かく設定して題にしているのが面白いので、選んでみた。学生の解答を見ていると、恋愛感情というのは、昔も今も変わらないものだなあと感じる。
……今気づいたが、今回の出題はすべて第四句を答えさせるものだった。
偶然こうなったのだけれども、和歌というのは基本的に、上句で情景や状況を述べ、下句に主意となる心情を詠むパターンが多いことを改めて感じる。
穴埋め和歌を出題するのも、今期はこれが最終回。
①横走(よこばし)る 葦間(あしま)の蟹(かに)も 雪降れば ■■■■■とや 急ぎ隠るる
(為忠家初度百首・葦間雪・五一四・源仲正)
(葦の間を横向きに歩いていく蟹も、雪が降ると、ああ、寒そうだと思って急いで隠れることだろうか。)
元の歌 あな寒げとや
学生の解答(括弧内は私のコメント)
・「寒すぎる」(元の歌と同発想です。)/「一大事」「世の末」(カニにとってはそうなんでしょうね。)/「足冷える」(8本もあるから大変だ。)/「埋もれ死ぬ」(身が平べったいから、少しの積雪でも命の危険に。)
②つらからぬ 人のけしきに はかられて ■■■■とのみ 思ひけるかな
(同・詞和不逢恋・五九四・藤原為業)
(つれないそぶりを見せないあの人の態度にあざむかれて、それでも(いつかはきっと自分になびいてくれる)とばかり思っていたことだなあ。)
元の歌 さりとも
学生の解答
・「幸せ」(幻想だったと悟ったときの絶望感たるや…。)/「両想ひ」「脈あり」「付き合える」(男子にありがちな勘違いなり。)/「いい人」(笑顔の仮面の下で、舌を出されていたのだと思うと…。)
③浅からず 契(ちぎ)るにつけて つらきかな ■■■■■■■ 心と思へば
(同・怠偽恋・六〇四・藤原為忠)
(愛情をこめて(将来を)約束してくれるにつけてもつらいことだなあ。真実でない気持ちだと思うと。)
元の歌 まことしからぬ
学生の解答
・「お金目当ての」(富豪の娘の悩みでしょうか?)/「その時だけの」「どうせ一時の」(光源氏がこのパターン。)/「口先だけの」(と知りつつ、頼みにしてしまうのが女心だったりする。)/「義務感からくる」(女性にはつらい。)/「いつか裏切る」「いずれなくなる」(不実な人が、世の中には溢れているようで…。)
④知られじと 君つつむめり われもまた ■■■■■■■ ほどぞ苦しき
(同・共忍恋・六二五・藤原為忠)
(二人の仲を他人に知られまいとして、あなたは隠しているようだ。私もまた他人の目をあれこれ気にしていることが苦しい。)
元の歌 人目はからふ
学生の解答
・「隠されている」(自分のこと、本当に好きなの?と思ってしまいますね。)/「他人に言えぬ」(人目を憚る事情があるのでしょうか。)/「独占できぬ」「自慢できない」(まさに夜の錦。)/「知ってしまった」(自分が好きになった相手には別に好きな人がいて、それを他人には隠しているけれども、自分はそれに気づいてしまった、という状況ですね。思いもよらない発想に脱帽です。)
感想
今回の歌は、藤原定家の父・俊成がまだ若く歌壇にデビューした頃に参加した『為忠家(ためただけ)初度百首』から選んだ。
②「詞(ことば)に和すれども逢はざる恋」(手紙は交わしてくれるけれど逢ってはくれない恋)、③「怠りて偽る恋」、④「共に忍ぶる恋」(相手も自分も共に、人に知られまいと、秘めて明かさない恋)など、恋愛の様々なシチュエーションを細かく設定して題にしているのが面白いので、選んでみた。学生の解答を見ていると、恋愛感情というのは、昔も今も変わらないものだなあと感じる。
……今気づいたが、今回の出題はすべて第四句を答えさせるものだった。
偶然こうなったのだけれども、和歌というのは基本的に、上句で情景や状況を述べ、下句に主意となる心情を詠むパターンが多いことを改めて感じる。