夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

デヴィッド・シルヴィアン2001年10月ライヴCD

2014-02-07 23:23:42 | JAPANの思い出・洋楽
先月、西新宿のSTRANGE LOVE RECORDSで見つけた。
デヴィッド・シルヴィアンの2001年10月22日、中野サンプラザでの公演を収録した2枚組CDである。


収録曲は以下の通り。
DISC 1
01.Introduction
02.The Scent Of Magnoria
03.Black Water
04.God Man
05. I Surrender
06. Jean The Birdman
07. Midnight Sun
08.Boy with The Gun / Orpheus
09.Waterfront
10.Heartbeat

DISC 2
01.Linoleum
02.Rooms of sixteen Shimmers
03.Ghosts
04.Pollen Path
05.Cover Me with Flowers
06.Zero Landmine
07.Forbidden Colours
08.Krishna Blue
(Encore1)
09.Nightporter
(Encore2)
10.Bhajan

一見すると、このツアーの2年前、12年ぶりに発表されたソロアルバム『Dead Bees on a Cake 』(1999)や、前年のコンピレーション・アルバム『Everything & Nothing』(2000)からの曲が多い。だが、時代的に見ると、ジャパン時代の「ゴウスツ」「ナイトポーター」「禁じられた色彩」、ソロ第3作『シークレッツ・オヴ・ザ・ビーハイヴ』、ジャパンの実質上の再結成であるレイン・ツリー・クロウ、ロバート・フリップや坂本龍一とのコラボレーション作品など長期間にわたる多様な曲を取り上げており、デヴィッドのこの時点でのベスト盤的な選曲である。

この時の来日公演は、米国で発生した同時多発テロ事件の影響で、1月ほど延期になり、10月下旬に行われた。
このライヴのメンバーは、
  デヴィッド・シルヴィアン(ボーカル・ギター)
  スティーヴ・ジャンセン(ドラム・パーカッション)
  キース・ロウ(ベース)
  ティモシー・ヤング(ギター)
  マット・クーパー(キーボード)
であり、エレクトリックな要素は少なく、かなりジャズっぽい印象の演奏だった。


オープニングに続いて、1-2「セント・オヴ・マグノリア」のやや攻撃的で疾走感ある演奏で一気にハートを持って行かれる。
と思うと、1-3「ブラック・ウォーター」でのデヴィッドのゆったりと包み込むようなボーカルに、たゆたうような気分になる。
1-6「ジーン・ザ・バードマン」は、デヴィッドのライヴではよく取り上げられるが、ブルースっぽいノリのよい曲で、聴衆も大いに盛り上がっているのを感じる。
ライヴの前半では、1-8「銃を持った少年/オルフェウス」・1-9「ウォーターフロント」と、ソロ第3作『シークレッツ・オヴ・ザ・ビーハイヴ』から3曲立て続けに演奏しているのが圧巻。
特に、「オルフェウス」で、マット・クーパーが弾いている間奏のピアノソロが素晴らしい。
これは、元のアルバムでは坂本龍一が弾いていたのだが、1988年の来日公演のときはリチャード・バルビエリがキーボード担当だったため、この間奏はかなり間引いた感じの演奏になり、物足りなく思っていたのだ。

後半は、1、2曲目でジャパン時代の「ゴウスツ」を想起させる雰囲気の曲が続くなあと思っていたら、本当に2-3で「ゴウスツ」が始まったのでびっくりした。
ミック・カーンは、デヴィッドがソロのライヴである時期以降から、ジャパンの楽曲も演奏するようになったことについて、辛辣に批判していたが、キャリアを重ねて磨きのかかった声で、アコースティックヴァージョンのこの曲をデヴィッドが歌っているのを聴けるのは嬉しい。
2-7「禁じられた色彩」も、ファンにとってはたまらない選曲。やはり名曲だ。
2-8「クリシュナ・ブルー」・2-10「バジャン」(ヒンズー教の賛美歌の意味)などは、この時期のデヴィッドがインド宗教に傾倒していた(らしいが詳しくは知らない)ことを如実にうかがわせる曲。
ライヴの後半では、やはりアンコール1曲目の「ナイトポーター」が、ジャズっぽいアレンジでカッコよすぎる。
この曲だけでなく、全体を通して、スティーヴ・ジャンセンのドラムがデヴィッドの楽曲にとって不可欠の存在であることを改めて感じた。いつ、何度聴いても、スティーヴのプレイには発見がある。他の誰が叩いても、これほど有機的にデヴィッドの音世界の構築に関わることはできないだろう。

このライヴを生で鑑賞できたらどれだけよかったろう。演奏が非常にすばらしいだけに、かえって飢餓感が高まってしまう。



ジャパン『ライヴ・イン・キョウト』

2013-11-09 22:28:44 | JAPANの思い出・洋楽
前回(10/5)紹介した1981年7月のロンドン・ハマースミス・オデオンでのライヴCDと同時に、オンラインショップで購入。

1980年代、ニュー・ウェイヴ・シーンを代表する”ジャパン”1981年、伝説の来日公演より京都第一会館でのステージを高音質サウンドボード音源で収録したタイトルが登場!本タイトルは、日本でも絶大なる人気を誇った”ジャパン”の伝説の来日公演より京都第一会館でのステージを収録した奇跡のタイトルです。当時の最新アルバム「GENTLEMEN TAKE POLAROIDS」のオープニング・ナンバー「SWING」で幕を開け、それまでの4枚のアルバムからチョイスされた選りすぐりのベスト・ナンバーを網羅した内容は感動の一言!ファースト・アルバム「OBSCURE ALTERNATIVES」のオープニング・ナンバー「AUTOMATIC GUN」で幕を閉じる憎いセット・リストは必聴です!

という宣伝文句が書いてあったが、まさにジャパン・ファンなら必聴そして感動モノのCDだった…。
前年(1980)12月にリリースされたニューアルバム『孤独な影』からわずか二ヶ月後の日本ツアーで、観客の期待がいやが上にも高まっていたことがわかる京都公演(2/23)だった。



収録曲は、以下の通り。
01 Swing
02 Gentlemen Take Polaroids
03 Alien
04 ...Rhodesia
05 Quiet Life
06 Obscure Alternatives
07 Taking Islands In Africa
08 Methods Of Dance
09 Ain't That Peculiar
10 Sometimes I Feel So Low
11 Halloween
12 European Son
13 Life In Tokyo
14 Adolescent Sex
15 Automatic Gun

約4ヶ月後のロンドン公演と曲順はさして変わらないが、後半に10「孤独な安らぎ」13「ライフ・イン・トウキョウ」14「果てしなき反抗」15「オートマティック・ガン」など初期の曲を中心に増やしている点が大きく異なる。
3rdアルバム『クワイエット・ライフ』(1979)以降、音楽性も評価されるようになってきたとはいえ、そのビジュアルから日本ではまだまだアイドル的な人気であっただけに、曲間やイントロ演奏中の女性の声援、というか悲鳴がすごい。「でびっど~!!」「みっく~!!」「すてぃーぶぅ~!!」ほとんど金切り声だ。
しかし、デヴィッド初めメンバーの演奏はひたすら淡々と進んでいく。
MCもほとんどなく、時々デヴィッドが曲名紹介でちょっとしゃべるだけ。
一曲終わるとすぐ次の曲の演奏が始まり、02「孤独な影」と03「エイリアン」などはほとんどつながっている。どれだけ無愛想なバンドなんだ。


それでも、彼らのパフォーマンスを通じて、クールな熱気みたいなものは伝わってくるし、翌年の解散コンサートでも演奏されたいくつかの曲が、このときは未成熟でこなれておらず、それゆえに洗練される前の荒々しさやフレッシュさを感じさせるのも面白い。
私としてはやはり、01「スウィング」02「孤独な影」03「エイリアン」08「メソッズ・オヴ・ダンス」などが好きかな。
05「クワイエット・ライフ」のように、人気曲のイントロが始まると、観客が手拍子を始めるのは、若干の違和感と共に時代を感じる。13「ライフ・イン・トウキョウ」は、日本でやるとやはり盛り上がり、会場のボルテージが一気に高まる。この熱気を、当時ぜひ味わいたかったと思う。

このところ仕事がずっと忙しかったので、行き帰りの車の中でこのCDを聴いて癒されている。

ジャパン1981年7月ライヴCD

2013-10-05 23:43:56 | JAPANの思い出・洋楽

オンラインショップで購入。
伝説のブリティシュ・ニュー・ウェイブ・バンド“ジャパン” 
1981年、ロンドン・ハマースミス・オデオンでのライブを高音質サウンドボード音源で収録したタイトルが登場!
本タイトルは、1970年代中期から80年代に特に日本で絶大なる人気を誇った”ジャパン”の1981年、ロンドン・ハマースミス・オデオンでのライブを収録した貴重なタイトルです!
それまでのブラック・ミュージック、グラム・ロックをベースにした荒削りなポスト・パンク・ロック路線を脱却し、シンセ・サウンドを前面に押し出したポップでシニカルなバンドへと変貌を遂げた時期のライブだけに、その後の成功もうなずけるパーフェクトなライブを展開しております!
昨年、この世を去った”ミック・カーン”のうねるようなフレットレス・ベースの音がいつまでも耳から離れない感動のタイトルです!!
という謳い文句が書いてあったので、一も二もなく買い求めてしまった。
ジャパンの5thアルバム『錻力の太鼓』のジャケットを表裏ともそのままパクッたパッケージはどうかと思うが…。

収録曲は、以下の通り。

01 Swing
02 Gentlemen Take Polaroids
03 Alien
04 ...Rhodesia
05 Quiet Life
06 My New Career
07 Taking Islands In Aflica
08 Methods Of Dance
09 Ain't That Peculiar
10 Halloween
(Encore)
11 European Son

前年(1980年)に発表された4thアルバム『孤独な影』から6曲と演奏曲の過半数を占め、ニューウェイヴ・バンドとして面目を一新したライヴになっている印象を受ける。
ギターのロブ・ディーンはこの年2月の日本公演の後で脱退しているのだが、5月からのイギリス公演ではゲスト参加。したがって、彼の最後の演奏が聴けるライヴCDでもあるということになる。

『孤独な影』とは、曲順の入れ替わった形の1.「スウィング」2.「孤独な影」では、バンドの音楽性が成長するにつれて、ロブのギタリストとしての役割が低下したことがはっきりとわかり、ほとんど装飾的なフレーズだけ弾いているのがなんだか気の毒になる…。


04「熱きローデシア」を除き、初期ジャパンのようなハードなギターワークの曲はほぼ影を潜めている。(この曲にしても、テンポを速め、オリジナルより洗練されたアレンジになっている。)
シンセサイザーを全面に押し出し、独特のリズムにも支えられながら、デヴィッドの低く粘りのあるボーカルが絡みつくような耽美的なサウンド。
しかし、電子音が野暮ったく感じられるところも含めて、新鮮さも多分に感じられ、…なによりも、デヴィッドの声が若々しい!
まだ翌年の解散ツアーのときほど歌唱法が熟成していないのが、逆に魅力に感じられる。

レコードの音を、ステージ上でかなり忠実に再現していることにも驚かされるが、これには前作『クワイエット・ライフ』からジャパンのプロデューサーとなり、ライヴでもPAエンジニアを担当したジョン・パンターの貢献によるところが大きいそうだ。
07「アイランズ・イン・アフリカ」(デヴィッドと坂本龍一の共作)のような、キーボードパートの多い曲までライヴで演奏しているのもすごいと思うが、もともとこの曲のドラムとベースはエレクロニックで、そのフレーズをなぞるように演奏するのをミックは拒み、他のメンバーからもリハーサルでは不満の声が上がっていたという。(もちろん、デヴィッドがこの曲をセットリストに入れるのにこだわり、強行したのだという事情が『ミック・カーン自伝』に書かれている。)

私としては、このライヴCDの中では3.「エイリアン」がいちばん好きだ。
10「ハロウィーン」は、シーケンサーの音が耳障りに感じ、元の曲の方がかっこよかったと思ってしまう。
アンコールの11「ヨーロピアン・サン」は、私がこれまでに聴いたどのヴァージョンとも違っており、この曲はどれだけアレンジを変えて歌い続けられたのかと感慨を覚える。

気になる音質も、30年も前の演奏と思えないくらいによく、十二分に鑑賞に堪えるものだった。
今回は、ほぼ同時期の別のライヴCDと共に購入したのだが、そちらについてはまた後日紹介したい。

デヴィッド・シルヴィアン2004年4月ライブCD

2013-09-09 23:20:35 | JAPANの思い出・洋楽

西新宿のBLIND FAITHで購入。
2004年4月にデヴィッド・シルヴィアンが来日公演を行った際の、24日、東京・昭和女子大学人見記念講堂でのライブ(2日目)を収録した2枚組CDである。
「ギターとエレクトロニクスを主体としたサウンドでありながら、限りない温もりをもったシルヴィアンの歌声が引き立ち、名状し難い美しさを持った独自の世界が披露されています。」という謳い文句に惹かれて買い求めたのだが…。


収録曲は以下の通り。
DISC 1
01.Opening
02.Blemish
03.The Good Son
04.The Only Daughter
05.The Heart Knows Better
06.She Is Not
07.Late Night Shopping
08.How Little We Need To Be Happy
09.A Fire In The Forest
10.The Other Side Of Life

DISC 2
01.When Poets Dreamed Of Angels
02.The Shining Of Things
03.Blue Skinned Gods
04.Praise
05.Maria
06.Don't Stay Away Too Long
(Encore 1)
07.World Citizen
(Encore 2)
08.Jean The Birdman

このライヴには、スティーヴ・ジャンセン(ドラム)、高木正勝(映像担当)が参加。
ビートがあまり強調されず、CDの紹介にあったように、ギターとエレクトロニクス、それとヴォーカルの、きわめてシンプルなサウンドだった。


ライヴの前半(02~09)は、前年(2003)に発表されたアルバム『ブレミッシュ』の曲で、順序までそのまま。
以前書いたことがあるが、『ブレミッシュ』は初めて買ったとき、最後まで聴き続けられなかったアルバムである。大半の曲はメロディがあってなきがごとしで、聴いているのがつらい、というよりほとんど苦痛に感じた。

ただ、これはいつか、デヴィッド本人がインタビューで答えていたと思うが、『ブレミッシュ』は〈不快な感覚〉をテーマとしており、そのタイトルが示すように(“blemish”は傷、汚れ、しみの意)、つらく、目をそらしたいような不快な感情や、それを生み出すもとになった現実の出来事といった傷、汚点にデヴィッドが向き合い、表現するところから生まれてきた作品なのだ。

そんなわけで、02~08まではおおむね、陰鬱で気が滅入りそうな曲が延々と続く。
特に02「ブレミッシュ」は15分近い長さで、慣れれば心地よくなってくる面もあるが、これだけ地味で華のない音の世界は正直つらい。そんな中で、09「ア・ファイアー・イン・ザ・フォレスト」は、メロディもサウンドも美しく響き、印象に残った。
だが、DISC.1ではなんといっても、10「ジ・アザー・サイド・オヴ・ライフ」が素晴らしい。
ジャパンの3rdアルバム『クワイエット・ライフ』(1979)の掉尾を飾る佳曲で、当時の彼らにとっては、それまでのジャパンのイメージを打ち破り、大人っぽい、芸術的で洗練されたこの曲を完成させたことは大事件だったと、確かリチャードが語っていたように思う。元の曲では、オーケストラが入った豪華なサウンドだが、このライヴでは、ほぼギターとドラムのみで、デヴィッドのボーカルが冴えわたっている。


DISC.2になると、01「詩人が天使を夢見るとき」、05「マリア」、アンコールの07「ワールド・シチズン」、08「ジーン・ザ・バードマン」など、馴染みもあり素晴らしい曲が多いので、素直に聴いてライヴの雰囲気を楽しむことができた。
観客の反応がひときわ大きかったのが、「ワールド・シチズン」。曲調はポップに聞こえるが、かなり過激な政治的なメッセージ(特にアメリカに対する)がこめられている。

In the name of progress and democracy
(発展と民主主義の名の下に)
The concepts represented in name only
(概念は名ばかりのものになってしまう)

His world is suffering
(彼の世界は苦しんでいる)
Her world is suffering
(彼女の世界は苦しんでいる)
Their world is suffering
(彼らの世界は苦しんでいる)
World citizen
(世界市民よ)

このライヴは、NHKのBSで放映され、You Tubeにもupされているらしいので、そちらも機会があったら観てみようと思う。

デヴィッド・シルヴィアン「abandon hope」(3)

2013-08-09 22:49:42 | JAPANの思い出・洋楽

実家に帰っていた間、東京・南青山のスパイラル・ガーデンで開催していたデヴィッド・シルヴィアン写真展を見に行った。(8日終了)


先日紹介した、「瀬戸内国際芸術際2013」の「abandon hope」展と同時開催であり、この二つの展覧会によって、デヴィッドのフォト・インスタレーションの全貌を見ることができるのだという。


主催者側の案内では、
デヴィッド・シルヴィアンのサウンドは、作品を発表するごとに神秘性を深め、みずみずしい好奇心と清冽な実験精神をあふれさせて多くの人々を魅了してきました。その詩的世界にこめられた、繊細でありながら強靱なスピリットは、写真家としての活動にも、鏡のように写りこんでいます。
という説明が書かれていた。


ただ、前回も書いたと思うが、彼の写真は確かに繊細で美しい一方、全体を覆う虚無感とか、情熱の不在が気になってしまい、どうしても惹きつけられるものがない。やはりデヴィッドの本領は音楽、特にヴォーカルにあり、そこでこそ唯一無二の彼の個性が表現できるように思う。


会場でいただいたパンフレットの本人写真を見ていたら、あれれ!? これって、岡山県宇野港会場の「abandon hope」展が背景じゃないのかな?


そういえば、今回見た写真の中に、フェリーのなおしま(直島を経由して宇野と高松を結ぶ)とおぼしきものがあった。
デヴィッドは、2006年にアート・プロジェクト「直島スタンダード2」にサウンド・インスタレーション作品を出展してもいるし、風光明媚な瀬戸内の景色に惹かれるところもあったのだろうか。

今回はとてもお洒落な会場で、先日の写真展とはまた趣が変わった感じなのが面白かった。