夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

冬の夕暮れ

2016-11-26 23:18:37 | 日記
小用あって岡山へ。
母校の図書館で目当ての書籍を閲覧し、ゆっくり勉強しながら満ち足りた時間を過ごした。
どこに何があるか分かっている、昔なじみの図書館で勉強するのは、心ゆく思いだ。


夕方、調べを終えて館外に出ると、そぞろ寒い風が吹き、散りがたのプラタナスの赤い葉が、本格的な冬を前に、既に生気を失いかけているように感じられた。

山陰の厳しい冬も、いよいよこれから。
そんな思いで母校を後にした。

平安古筆の名品

2016-11-24 23:33:42 | 日記
現在、五島美術館で開催中の特別展「平安古筆の名品 飯島春敬の観た珠玉の作品から」を観に行った。(12月4日まで開催)
敷地内の庭園も散策してきたが、先月来たときより紅葉が進んできれいだった。


書家であり古筆研究家でもあった飯島春敬のコレクションを中心に、仮名古筆の名品が100点近く展示され、非常に見応えがあった。
展示は、平安前期(900年頃)から鎌倉時代(1200年頃)までの約300年間を4期に分け、仮名の変遷が理解しやすいように配慮されていた。

君なくてあれたる宿の板間より月のもるにも袖はぬれけり
(太田切 伝藤原公任筆)

こひすればわが身ぞ影となりにけるさりとて人にそはぬものゆゑ
(古今集切・伝藤原行成筆)

わがごとく物思ふ人はいにしへも今行く末もあらじとぞ思ふ
(拾遺抄唐紙色紙・伝源俊頼筆)

のような名歌も、流麗で格調高い筆致と美しい料紙と共に味わうと、より深く心に響いてくる。
今私は、勤務校の文学の授業で学生に『百人一首』を教えているのだが、彼らに和歌がこのようにしても享受・鑑賞されてきたことを、ぜひ伝えてやりたいという気持ちになった。

都会<地方

2016-11-21 23:17:09 | 日記
土曜日は例会の後、いったん東京に出て、駅地下の喫茶店で書き物をしたり、KITTE(日本郵便が手がける商業施設)で買い物をしたりした。
5階まで吹き抜けのビルの中央に、来週(11/25)から巨大クリスマスツリーが登場するとのことだったが、今はまだ白いシートに覆われて見ることができないのが残念。
今からすでにクリスマスのムードを漂わせている店々を覗いて回り、土産物などを買い求めた。


都会の華やかな雰囲気に魅了されつつ、でも住むとなったらやはり地方がいいなあと思うのは、私の根が田舎者だからだろうか。

例会に参加

2016-11-20 22:26:11 | 日記
昨日は午後も時雨の降る中、東京から京浜東北線で移動し、鶴見大学での例会に参加してきた。
鶴見大は総持寺(曹洞宗の大本山)の境内にあり、緑に包まれた閑静なキャンパスである。


研究発表は3本だったが、特に最後の方が、平安時代前期の哀傷歌の展開について、視野が広く堅実なご発表をされており、大いに勉強になった。
図書館での特別展も、『伊勢物語』『源氏物語』など仮名の物語を中心に、断簡や写本・版本などの貴重資料が展示されており、これだけ取っても来た甲斐があると思った。

もう一つ、今回幸運だったのは、江戸時代の長歌がご専門の先生とお知り合いになれたこと。
たまたまその方が、昨日の例会の司会を務めておられたので、休み時間に自己紹介し、昨年から門脇重綾とその周辺の歌人について調べていることを話した上で、『蠖園集』翻刻本をお渡しした。ご覧になって、もしお気づきの点があればご批正いただきたいとお願いして帰って来たが、やはり折角活字化したものなので、近世和歌がご専門の方に、少しでも歌人としての門脇重綾について知っていただければと思っている。

時雨降る

2016-11-19 22:58:48 | 日記
今日の午前中は、冷たい雨の降る中を、東京駅から歩いて出光美術館に行った。
先月の学会の際、「時代を映す仮名のかたち」展の割引券をいただいていたので、ぜひとも行かねばと楽しみにしていたのだ。

出光美術館開館50周年記念とのことで、同館所蔵の国宝手鑑『見努世友』(みぬよのとも)と、古筆の名品の数々をこの目で見られる幸せ。
重要文化財の「高野切第一種」(伝紀貫之筆)・「和漢朗詠集巻下」(伝藤原行成筆)・後鳥羽上皇筆「熊野懐紙」をはじめ、仮名古筆の優品・逸品が目白押しの豪華な内容で、私などには非常に勉強になった。
今回は特に和歌関係の資料が多かったので、これは後日、源氏物語講座や百人一首講座で、受講者の方や学生たちに詳しく報告しなくては。


観覧を終え、休憩スペース(出光美術館はビルの9Fにあり、窓外の眺めが素晴らしい)でくつろいでいると、皇居のお堀周辺の木々が美しく色づき、霧を生じさせながら時雨が降り注いでいる。
その様子を見ていたら、先ほどの展示品の中の、伝藤原良経筆 和歌色紙に、

  もらすなよ雲ゐる峰の初しぐれ木の葉は下に色かはるとも

と書かれてあったのを思い出した。
しばしその歌の世界を重ねて、眼前の光景を眺めていた。