テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

波の狭間に。

2016-04-01 22:03:39 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 さあ♪ 新年度の到来とともに拙ブログは
 『テディちゃと虎くんとネーさの海外サッカー雑記』
 としてリスタート――

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ちがいまスううゥ~ッ!」
「がるる!ぐーるるがるるぅ!」(←訳:虎です!ネーさの嘘つきぃ!)

 はいはい、エイプリルフールですので
 ちょっとばかり嘘八百してみました♪
 では、あらためまして、
 新年度初の読書タイムは、こちらを、どうぞ~!

  



             ―― 人魚 ――



 編者は長井那智子(ながい・なちこ)さん、2016年3月に発行されました。
 『mermaid & merman』と英語題名が付されたこの御本は、
 《人魚》を主題とするアンソロジー作品です。

 収録順に御紹介いたしますと、

 中原中也さん著『北の海』
 小川未明さん著『赤いろうそくと人魚』
 オスカー・ワイルドさん著『漁師とかれの魂』
 アンデルセンさん著『人魚物語』
 谷崎潤一郎さん著『人魚の嘆き』
 高橋鐵さん著『怪船《人魚号》』
 アイルランド民話『カッパのクー』
 太宰治さん著『人魚の海 新釈諸国噺』
 安倍公房さん著『人魚伝』

「わふゥ! きょしょうがァ、ずらァ~りィ、なのでス!」
「……ぐるっ??がっる??」(←訳:……うんっ??カッパ??)

 そうね、↑上の作品名を目にして、
 あれれ?と首を傾げてしまうのが、
 アイルランド民話の、
 『カッパのクー』
 でしょうね。

「かッぱがァ、でてくるのはァ~」
「がるるるぐるぅ?」(←訳:遠野物語でしょ?)

 カッパと訳されていますけれども、
 実際には、海魔、とでも呼んだらよいのでしょうか。

 御本の英語題名にもなっている、
 『mermaid』とは人魚の女性名詞、
 『merman』は人魚の男性名詞であり、
 しかし、
 このアイルランド民話に登場する『カッパ』は
 人魚の定義とは微妙にズレている存在のようです。

 アイルランドの海岸。
 人里から離れ、荒涼とした場所の一軒家で、
 ジャック・ドハルテは
 妻と寂しく二人暮らし……

 いえ、寂しいかどうかはともかく、
 決して貧しくはない暮らしです。

 海は、色々なモノを海岸に打ち寄せてくれます。
 嵐の後は特に収穫が多く、
 木綿やタバコや葡萄酒の樽やブランデーの樽やらが
 岸辺にどんぶらこ、どんぶらこ。

「それはァ、ぬれてにィあわッ!」
「ぐるるるる!」(←訳:ひと財産だ!)

 海岸は、隅々までがジャックの庭。

 今日もぶらぶら歩いていると、
 ……おや?
 岩の上に、いままで見たことのなかったようなものが?

「かッぱァ、でスゥ!」
「がるるっ??」(←訳:あれがっ??)

 さて、ジャックとカッパの、
 奇妙かつ牧歌的な交遊が向かう先にあるものは――

 ええ、或る意味、これはアイルランドの遠野物語。
 カッパという呼び名の相応しさに頷かされる一編ですよ♪

「よーろッぱにもォ、にほんにもォ!」
「ぐるるるがるるぐる!」(←訳:不思議な何かがいる!)

 アンデルセンさん、谷崎さん、太宰さん、と
 巨匠さんの作品が居並ぶ中、
 読後に特別な余韻を残すのは、
 ひいき目ではなく、やはり、
 小川未明さんの『赤いろうそくと人魚』だと
 私ネーさは思うのです。

 たたみかけてくる絶望感、
 童話というレッテルを貼らせない厳しさ怖さは、
 一度読んだら忘れようもありません。

 赤いろうそくの灯が、
 山の上のお宮へと上ってゆくのが、
 まことに、瞼の裏に浮かぶような、
 鮮やかな幕切れ。

「これこそォ、にんぎょのォものがたりィでス!」
「がるるぐる!」(←訳:海魔の真髄!)

 また、御本の巻末には、
 編者・長井さんによる詳細な作品解説も収録されていて、
 これがすてきに素晴らしい!

 水島爾保布さん作のカバー装画についても
 丁寧な紹介文が記載されていますので、
 どうか読み漏らさないでくださいね。

「いッさつゥ、まるごとォ、にんぎょッ!」
「ぐるがる!」(←訳:稀少です!)

 ミステリやファンタジー小説が好きな御方は
 ぜひ、一読を♪
 
 
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