テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

♪2021新春特別企画《オレンジのタネ100個》その5!

2021-01-04 22:12:14 | 2021も!新春特別企画♪
 ♪ブォ~ッ、ブオオ~…
 ♫ブオォ~ン……

 新年の始まりを嘉する新春特別企画も
 そろそろゴールが見えてまいりました。
 クマたちの毛並みを震わせる重低音は、
 ロンドンの鐘……ではなくて、
 港町サウザンプトン名物の
 霧笛の響きです。

「どのォふねだろうゥ??」

  

 名探偵テディちゃムズは
 港に接岸中の船舶を見比べました。

 背後の即席コンテナの内部には、
 動物学者チャレンジャー教授が
 南米から連れてきた先史時代の生物、
 ロンドン市民を恐怖のどん底へ突き落した
 《怪物》くんが隠れています。

 《怪物》くんを、
 ひっそり、こっそり、
 アマゾンの奥地へ運んでくれる
 貨物船は……?
 
「あれか?」
「がるる!」(←訳:あれだ!)

 名探偵テディちゃムズの盟友ユキノジョン・H・ワトソン博士と、
 友人の虎くんは唱和しました。
  
 港の端で、
 《エスメラルダⅡ》
 と船腹に記された大型の貨物船は、
 出港準備の真っ最中です。

 そして、甲板の木箱には、
 “マナウス行き“の荷札が。

「はいっ、書類ですっ!」

 準備してきた書類を、
 ウシくんが港の税関と検疫所に提出して、
 ハンコをビシバシ捺してもらいました。

 ええ、マイクマフトお兄ちゃんの仕事に
 抜かりはありません、
 すべてのゲートをパスして、
 《怪物》くんのコンテナは、
 貨物船の甲板前方へ。

 気の優しそうな船員さんに、
 オレンジのタネが詰まった小袋を渡し、
 世話をしてくれるよう頼めば。
 
  

 出港を告げる、
 汽笛一声!

「たッしゃでェ、くらすんだよゥ!」
「ぐるがる!」(←訳:元気でね!)
「あうあうぅ~」

 あらら、ユキノジョン・H・ワトソン博士ってば、
 別れの涙で鼻周りがべそべそですよ。

  

 のちに判明したところでは、
 《怪物》くん、
 オレンジのタネ100個を平らげたあたりで
 コンテナの壁を破り、
 大西洋上を悠々と飛翔、
 西南の方角へ消えていった……
 とのことでございます。

「めでたしィ~めでたしィ!」
 
  

 さあ、騒動にもケリがつきました。

 『怪物ハ英国ヲ去リ、万事解決ス』
 とロンドン市長宛ての電報を打ったら、
 ベーカー街の下宿に帰りましょう。

 新年の御馳走で、
 お腹をいっぱいにしようじゃありませんか♪

「そういうゥわけでェ~」

 はい、あらためまして、
 名探偵テディちゃムズからの御挨拶を。

「みなさまッ、どうかァ、ほんねんもォ~」
「がるるるぐるるるる~る!」(←訳:よろしくお願いしま~す)


 ~ 完 ~
 
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♪2021新春特別企画《オレンジのタネ100個》その4!

2021-01-03 22:06:29 | 2021も!新春特別企画♪
 ゴォ~ン、ゴォ~ン……
 鐘が鳴ります、また鐘が。
 新年の到来をしろしめすために、
 ビッグベンの鐘の音がゆっくりと、
 ロンドンの街に響き、流れてゆきます。

 いつもと違って、
 人の気配が絶えた町角で、
 名探偵テディちゃムズが呟いたのは。

「さくせんはァ、もうゥ~ちゅうしィ!」

「ぼくも、それがいいと思います!」

  

「わっ!誰っ??」
「がるぐる??」(←訳:今の声は??)

 名探偵テディちゃムズと、
 盟友のユキノジョン・H・ワトソン博士、
 友人の虎くんが振り返ると、
 そこにいたのは。

  

 ウシくん!

 新しい年の象徴とされる、
 干支のウシくんではありませんか。

「……でもさ、ウシくん?
 このままにしておいて、いいの?」

 ユキノジョン・H・ワトソン博士が指さす先には、
 オレンジのタネを楽しそうに食べる
 《怪物》――
 動物学者チャレンジャー教授が
 南米から連れ帰ってきた
 先史時代の生き物がいます。

 ロンドン市民は《怪物》を恐れて
 屋内に閉じこもり、
 市の全域がゴーストタウン化。

 実は、
 早く《怪物》をなんとかせねば!と
 パニックに陥った
 ロンドン市庁と自然史博物館に依頼され、
 テディちゃムズたちは
 《怪物》捕獲作戦を遂行していたのですが、

  

「みんなッ、よォ~くゥみたまえッ!」

 名探偵テディちゃムズ、
 一同を促します。

「このォかいぶつくんッ、
 まだァこどもォ、なのにィちがいないよッ!」

 は?
 子ども?
 ユキノジョン・H・ワトソン博士と虎くん、
 テディちゃムズが示した《怪物》の首筋、
 爪、皮膚、瞳をじっくり観察します。

 ……なるほど、なるほど。
 皮膚には張りがあり、
 爪は透明で、
 瞳にも濁りはない。

 そう、この《怪物》は、
 まだ小さな子ども、なのかもしれません。

「新年の始まりは、
 明るく!
 たのしく!ですよ」

 ウシくんは力説します。

 新たな年の幕開けに
 悲劇は似合わない。
 檻に捕獲なんていうのも、
 むごたらし過ぎる。
 
 小さな子どもが帰ってゆくのは、
 博物館や動物園の檻の中ではなく、
 なつかしい密林の緑の中であるべきでしょ。

「そうかあ~…」
「ぐるるるる~」(←訳:そうかもね~)

 ユキノジョン・H・ワトソン博士と虎くん、
 納得しつつも、
 う~んと唸ります。

 《怪物》を、
 南米の密林へ帰す。
 言うのは簡単ですけれど、
 いったい、どうやって……?

「うふふッ♪
 まかせてェくれたまえッ!」

 おや? 名探偵テディちゃムズの頭には
 既に名案が浮かんでいるようですよ。

  

「えっ? わし??」

 はーい、そうです。
 もちろん答えは、
 名探偵テディちゃムズの兄、
 マイクマフト氏!

 ディオゲネスクラブで居眠りしているところを
 捕まえました!

  

「お願いです!
 外務省の機密費と、
 財務省の運用準備金を、
 ちょっとだけ融通してください!」

 ウシくん、ぐいぐい迫ります。
 ずいっ、ずいっ、とにじり寄ります。
 これには、政府の要職者たる
 マイクマフトおにいちゃんも敵いません。

「わわわっ分かった!
 ちょっとだけ、だぞよ?」

  

 準備はたちまち整いました。
 港町サウザンプトンまでの
 特別貸切り列車を手配!
 税関に提出する書類を作成!
 南米のマナウス行き貨物船の
 コンテナも借りちゃおう!

「いそげやァ~いそげッ!」

 相変わらず一心不乱に
 オレンジのタネにかぶりついている《怪物》くんを
 大型荷馬車の幌の下に隠し、
 名探偵テディちゃムズたちは
 出発しました。

 急がないと、
 貨物船の出発時間に
 間に合いませんよ……!
 
 

     ~その5!に(きっと!)つづく!~
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♪2021新春特別企画《オレンジのタネ100個》その3!

2021-01-02 23:09:16 | 2021も!新春特別企画♪
 ドタバタ、ジタバタ。
 毎度お騒がせしております、
 新春恒例の特別企画2021!は、
 ええ、またしても
 名探偵テディちゃムズたちが、そのぅ~…

「むッ! ちかづいてェきたぞォ!」
「ゲホゴホっ!」
「がるぐるる~!」(←訳:風圧すごい~!)
 
  

 おお、見上げてみれば。

 名高い動物学者・チャレンジャー教授が
 南米の秘境から連れてきたという、
 先史時代そのままの生きもの――
 ロンドンの新聞各紙が

 《怪物》
 《ガーゴイルそっくり》
 《悪魔の化身》

 などと評した翼もつ黒い影が
 こちらへ舞い降りようとしています。

 獰猛なくちばし、
 真っ赤な小粒の目は石炭のおきのように輝き、
 色あせた灰色の肩掛けにも似た翼の被膜、
 サメを思わせる鋭い歯を
 ガチガチと打ち合わせるその威容……!

 ああ、名探偵テディちゃムズたちの命も
 風前の灯火……!!って、
 あらっ?

  

「えッさァ!」
「ほいさ!」
「ぐるるぅ!」(←訳:よいしょ!)

 ちょこまかと動き回って、
 名探偵テディちゃムズ、
 盟友のユキノジョン・H・ワトソン博士、
 友人の虎くんは、
 石畳の上に何かを並べてゆきます。

 えーと、
 まずは右から、特大フライドチキン。
 隣りに、サーモン1匹。
 真ん中に、キュウリのサンドイッチ。
 次いで、ジャムを盛ったスコーン。
 いちばん左に、リンゴとオレンジ。

 そこへ、
 南米の怪物は――

  

「くッ、くいついたァっ!」
「ええっ?」
「がるるる??」(←訳:それなの??)

 鋭い歯を持つ怪物が、
 地面に舞い降りるや
 まっしぐらに突進していったのは、
 肉ではなく、
 魚でもなく、
 パンやお菓子でもなく。

 オレンジを、ざくり。

 しかも、果皮や果肉には目もくれず、
 タネを掘り出して、
 ぱくり、
 ぱくっ、ぱくり。

「たねがァ、すきなのかァ~…」
「いい食べっぷりだなぁ~」
「ぐるるるがるる~…」(←訳:幸せそうだねえ~…)

 一同、
 しばし呆然としておりましたが。

「うん、急ごう、テディちゃムズ!
 作戦の第2段階だ!」

 ユキノジョン・H・ワトソン博士が言うのへ、
 名探偵テディちゃムズは
 ゆっくりと首を振りました。
 
「……いいやッ、
 さくせんはァ、ちゅうしィにィしようッ!」



       ~その4!に(きっと)つづく!~
 
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♪2021新春特別企画《オレンジのタネ100個》その2!

2021-01-01 23:09:58 | 2021も!新春特別企画♪
 ひゃあああっ!
 何ですか、あれは?

 あっと、失礼いたしました。
 毎度おなじみ新春特別企画!をお送りしておりますが、
 2021年は……いささか様子がヘンですよ?
 静まり返った大晦日のロンドンの夜を引き裂く
 『怪物だ!』の叫び……!

 そう、頭上を過ぎる
 暗黒の影は――

「かいぶつゥめッ! みつけたぞォ!
 ……ふぎゃッ!」

  

 ころりん。

 あらあら。
 かの名探偵テディちゃムズが
 上方からのものすご~い爆風に
 すってんころころ。

「ぐはふぅ!」

  

 ぽてん。

 シロクマのユキノジョン・H・ワトソン博士も、
 盟友の名探偵テディちゃムズと同じく、
 あえなく突っ転がされました。

「がるるっ!」

  

 お!
 名探偵テディちゃムズのお尻の陰に隠れ、
 足を踏ん張って
 転倒を免れたのは、
 テディちゃムズの友人の虎くんです。

「ぐる!がるぐるる!」(←訳:いた!塔の天辺だ!)

 夜空を背景に、
 塔の天辺でうごめく影。

 あのシルエットには見憶えがある、と
 ハッといたします。

「がるるぐるるがっるる!」(←訳:夕刊の挿絵にそっくり!)

 ええ、それは数日前のこと。

 ロンドンの新聞各紙が
 大きな見出しで伝えたのは、
 クィーンズ・ホールで起きた
 奇怪な出来事でした。

 高名な動物学者である
 チャレンジャー教授と仲間たちは、
 南米での探検旅行の成果を
 聴衆を前に発表したのですけれど、
 そこでアクシデントが!

 教授たちが南米の奥地で捕獲してきた
 先史時代の生物が、
 あっさり逃亡!
 
 ロンドンの空に解き放たれた!と。

「ぐるるる!」(←訳:アイツだ!)
「うむッ! たしかにィ!」
「じゃあ捕まえなくちゃ!」

 虎くんの声に、
 名探偵テディちゃムズ、
 ユキノジョン・H・ワトソン博士も、
 うむうむと頷きます。

 首都上空を
 我が物顔に飛び回る
 翼を持った怪物。

 怯えた商人たちは
 店を臨時休業にし、
 母クマたちは
 子クマたちとともに家の中に籠もり、
 ロンドン市街全域が
 息をひそめています。

 ふたたび街々に活気を取り戻すために、
 名探偵テディちゃムズたちは――

「よゥしッ!
 さくせんッかいしィ~ッ!」




       ~その3!に(たぶん)つづく!~
 

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♪2021新春特別企画《オレンジのタネ100個》その1!

2020-12-31 21:26:02 | 2021も!新春特別企画♪
 えへん、おほん♪
 はい、今年もやってまいりました、
 恒例の新春特別企画でございますよ。
 ゴォ~ン、ゴオォ~ンという
 旧い年の終わりと
 新年の訪れを告げる鐘の音が……

 あら? おかしいわね、
 聴こえないわ?

「し~っ! 静かにぃ!」

  

 低く、鋭く、囁いたのは、
 ユキノジョン・H・ワトソン博士。
 かの名探偵テディちゃムズの
 盟友として知られるシロクマです。

「がるるる、ぐるる!」(←訳:そうそう、静かに!)
 
  

 そしてまた
 友人の虎くんも、
 思わせぶりに頷きます。

 静かに、ですって?

 ……おや、そういえば、変ですね。

 クマたちの都であるここロンドンは、
 大晦日ともなれば、
 お祭り気分のクマ市民たちが
 広場や道路に面したパブで
 飲めや歌えやの大騒ぎ♪
 新年の鐘が鳴り始めたら、
 飲み物の杯を掲げて
 皆で一緒にカウントダウン!
 女王陛下の健康を祈って
 くいっと飲み干す!
 っていうのが、いつものこと、なんですけど?

 市街は、
 怖ろしいほどの静寂。

 通りに人影はなく、
 お店は扉と窓を固く閉ざしています。

 チドリ歩きのクマッ子ひとりすらいない街路は、
 まるでゴーストタウンのよう……?
 
  

「うむゥ!
 それにはァ、わけがァあるのさッ!」

 おや、登場しましたね、
 名探偵テディちゃムズ!

 ロンドンの街から
 クマたちが消えた理由って、いったい――
 おややっ?
 あれは?

 2、3区画向こうの交差点近くから、でしょうか。
 恐怖に震える者たちの
 悲痛な叫び声が……!

「で、でたぞぉ~っ!」
「かかかか怪物だぁ!!」

 え? は?
 かかかか怪物ですってえ~!?!

「でたかッ、かいぶつゥ!」

 黒い目玉をキラリと輝かせて、
 名探偵テディちゃムズは走り出します。
 悲鳴が響いた方向へ。
 異様な気配が漂い来る方向へ。

 怪物とは何のことなのか、
 はたし――
 あ? ああっ?
 うわああああ~っ!
 

 
       
      ~その2!に(たぶん)つづく!~
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