「こんにちわッ、テディちゃでス!
ふゥ~…これがァ、ねんどまつゥ~…」
「がるる!ぐるるるがるるる~…」(←訳:虎です!いろいろ寂しいね~…)
こんにちは、ネーさです。
念怒魔Ⅱ! いえ、年度末とあって、
箱根の『星の王子さまミュージアム』閉園や、
TV番組は最終回を迎えたりリニューアルしたり……と
しょんぼり落ち込みそうになるこころを、
さあ、読書タイムで引っ張り上げましょう。
本日は、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― とりどりみどり ――
著者は西條奈加(さいじょう・なか)さん、
2023年3月に発行されました。
木内達朗さんによる
新緑の頃を想わせる装画の表紙をゆっくり開くと……
そこは、日本橋。
数ある江戸の町々の中でも、
最も賑わい、最も富裕で、最も人が集い、
経済の中枢でもある大繁華街です。
「にッ、にぎやかァすぎてェ~」
「ぐるがる~!」(←訳:目が回る~!)
目が回りそうな人混みも、
ここ日本橋で生まれ育った者にとっては
見慣れた日常に過ぎません。
鷺之介(さぎのすけ)くんも、
そんな“日本橋っ子“のひとりです。
生家は、廻船問屋『飛鷹家(ひだかや)』。
世間では、
土地・家屋敷・金子など動産不動産をひっくるめて
千両以上の財産がある店を千両店、
万両以上の財があるなら万両店、
と呼ぶそうですが、
鷺之介くんのお家『飛鷹屋』も、
江戸で三指に入る大店ですから、
立派な万両店、ですね。
「ふァ~…おかねもちィ、なのでスゥ!」
「がるるるるぐる!」(←訳:大富豪さんだね!)
富豪の家の子なら、
毎日のんびり♪遊び放題♫……だったらいいのですが。
十一歳の鷺之介くん、
のんびり、には程遠い状態です。
長兄の鵜之介(うのすけ)、二十三歳。
長姉の、お瀬己(せき)、二十歳。
次姉の、お日和(ひわ)、十七歳。
三姉の、お喜路(きじ)、十五歳。
この三人の姉たちが、
今日は買い物よ!お芝居見物よ!
お寺社さんへ参詣にゆきましょ!
と鷺之介くんを連れ回すので、
イヤだぁ~もう勘弁してくれよう~というのが、
偽らざる気持ちなんです。
「はわわァ~…おそろしやァ~…」
「ぐるる~…」(←訳:災難だ~…)
お瀬己ねえさんは、去年お嫁に行った……と思ったら、
あららら、今日も里帰り?
しかも、厄介事と一緒に?
母さんの形見の櫛が、無くなった!
婚家の誰かに盗まれた!
と、プンプン怒ってお瀬己姉さんは言うんです。
「とうなんじけんッ?」
「がるるぐるる?」(←訳:形見のお品を?)
もう婚家には戻らないと宣言する長姉、
話を聞いて眉をひそめる次姉と三姉。
そんな姉たちの横で、
ああ、と頭を抱える鷺之介くん。
の~んびり、おだやかな暮らしは、
やはり遠のいてゆくばかり……。
「うむむッ、とりあえずゥ~」
「ぐるがるるぐるる!」(←訳:盗難事件の解決を!)
元気も意気もありあまる姉たちと、
優しい兄と、
江戸の町と、人びとと。
鷺之介くんを軸に描かれる短編7作品は、
ちょっと切なくて、
大いにコミカルで、
春休みの読書におすすめの一冊ですよ。
本屋さんの新刊コーナーで、
ぜひ、探してみてくださいね~♪