さあさあ、良い子のみんな、寄っといで。
坊ちゃん、嬢ちゃんも見ておいで。
《うえぶ紙芝居》の始まりだ、
さあさ、座ったり座ったり、
飴玉いるかい、水飴ァどうだい、
ほいよ、後ろの御子らも、よっく見な。
いざや、語って聞かせましょう、
昔むかしのその昔、
花のお江戸のそのむかし、
町を沸かせた騒がせた、
テディちゃ頭巾のものがたり――
** ** ** ** ** ** ** **
「うんしょッ、こらしょッ、はァ、つかれたァ~」
走っております、ころころと。
小路を右へ、左へと、
テディちゃ頭巾が走ります。
寒がりで、何かにつけては頭巾を被り、
あァやッぱりィずきんはぬくいィ、などと言っておりますところで、
人呼んで、
《テディちゃ頭巾》。
はあ、なんと?
頭巾なんか被っていないじゃないか、と?
さよう、
それには訳がございます。
なんと、テディちゃ頭巾、
追いかけられている真っ最中。
こけつまろびつ、
東へ西へ
道から道へと進むうち、
頭巾はふっ飛ぶ、
草履は無くす。
お腹は空いて、喉も渇いた。
まったくもって困りもの。
ぜんたい何者に追いかけられているか、と申しますと――
『やい、寄越せ!
やれ、寄越せ!
オマエが隠したことはお見通しだ!』
飛来する黒い影!
鋭い爪が狙うのは、テディちゃ頭巾の頭としっぽ。
「やめろォッ、
テディちゃはァ、なにもォかくしてなんかいないやいッ!」
払いのけ、押しのけ、えいッとゲンコツを振りまわし、
するとそのうち、
一斉に散る黒い影。
「あァ、よかッたァ、あれはッ」
木戸をくぐって現れ出たのは、
火の用心~と声を揃える見回りの小父さんたち。
「おうッ、テディちゃじゃねえかッ。
早くけえんなよッ、今夜は北風が冷たいぜッ!」
「うんッ。ありがとう、おじさんッ」
帰りたいのは山々ですが、
はて、まっすぐ帰っていいものか。
さっきの黒い影たちが、家へ襲い来ぬとも限らない。
いやいや、
そもがそも、
なにゆえ奴等は襲ってきたのか?
「さッぱりィ、わからないなァ……?」
どうしたものかとテディちゃ頭巾、
黒いお鼻を一撫で、二撫で。
と、妙案に膝を打つ。
「そうだッ、ネーさししょうにィ、そうだんしようッ!」
そうだッそうだい、そうしよう、と。
テディちゃ頭巾はえッこらさ、
またまた、こけつまろびつ、小走りに。
「お~いッ、ネーさししょう~ッ!」
はて、ネーさ師匠とは何者ぞ?
黒い影たちの正体を、誰が知る?
長い語りとなりまして、
続きまするは第二巻、
ゆるりゆるりとお待ちあれ。
[つづく]
坊ちゃん、嬢ちゃんも見ておいで。
《うえぶ紙芝居》の始まりだ、
さあさ、座ったり座ったり、
飴玉いるかい、水飴ァどうだい、
ほいよ、後ろの御子らも、よっく見な。
いざや、語って聞かせましょう、
昔むかしのその昔、
花のお江戸のそのむかし、
町を沸かせた騒がせた、
テディちゃ頭巾のものがたり――
** ** ** ** ** ** ** **
「うんしょッ、こらしょッ、はァ、つかれたァ~」
走っております、ころころと。
小路を右へ、左へと、
テディちゃ頭巾が走ります。
寒がりで、何かにつけては頭巾を被り、
あァやッぱりィずきんはぬくいィ、などと言っておりますところで、
人呼んで、
《テディちゃ頭巾》。
はあ、なんと?
頭巾なんか被っていないじゃないか、と?
さよう、
それには訳がございます。
なんと、テディちゃ頭巾、
追いかけられている真っ最中。
こけつまろびつ、
東へ西へ
道から道へと進むうち、
頭巾はふっ飛ぶ、
草履は無くす。
お腹は空いて、喉も渇いた。
まったくもって困りもの。
ぜんたい何者に追いかけられているか、と申しますと――
『やい、寄越せ!
やれ、寄越せ!
オマエが隠したことはお見通しだ!』
飛来する黒い影!
鋭い爪が狙うのは、テディちゃ頭巾の頭としっぽ。
「やめろォッ、
テディちゃはァ、なにもォかくしてなんかいないやいッ!」
払いのけ、押しのけ、えいッとゲンコツを振りまわし、
するとそのうち、
一斉に散る黒い影。
「あァ、よかッたァ、あれはッ」
木戸をくぐって現れ出たのは、
火の用心~と声を揃える見回りの小父さんたち。
「おうッ、テディちゃじゃねえかッ。
早くけえんなよッ、今夜は北風が冷たいぜッ!」
「うんッ。ありがとう、おじさんッ」
帰りたいのは山々ですが、
はて、まっすぐ帰っていいものか。
さっきの黒い影たちが、家へ襲い来ぬとも限らない。
いやいや、
そもがそも、
なにゆえ奴等は襲ってきたのか?
「さッぱりィ、わからないなァ……?」
どうしたものかとテディちゃ頭巾、
黒いお鼻を一撫で、二撫で。
と、妙案に膝を打つ。
「そうだッ、ネーさししょうにィ、そうだんしようッ!」
そうだッそうだい、そうしよう、と。
テディちゃ頭巾はえッこらさ、
またまた、こけつまろびつ、小走りに。
「お~いッ、ネーさししょう~ッ!」
はて、ネーさ師匠とは何者ぞ?
黒い影たちの正体を、誰が知る?
長い語りとなりまして、
続きまするは第二巻、
ゆるりゆるりとお待ちあれ。
[つづく]