テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 桜に、捧ぐ ~

2019-08-06 23:23:46 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 はッぴィ~たなばたァまつりィ~!」
「がるる!ぐるるがる!」(←訳:虎です!今年も開幕!)

 こんにちは、ネーさです。
 国内きっての規模を誇る仙台の《七夕まつり》が
 賑やかに始まっていますよ♪
 この暑い季節に行われるのが本来の七夕なのかな?
 などと想像しながら、
 本日の読書タイムは、
 こちらの美しい御本を、さあ、どうぞ~!

  


 
          ―― 桜狂の譜 ――



 著者は今橋理子(いまはし・りこ)さん、2019年3月に発行されました。
 『江戸の桜画世界』と副題が付されています。

 ↑縦が約25㎝×横が約17㎝、と
 美術展の図録としても立派に通用しそうなこの御本は、
 アート評論であり、
 意欲的な歴史ノンフィクション!でもあるんですよ。

「おおォ♪ さくらァ、さいてまスゥ!」
「ぐるるがる!」(←訳:繊細な画風!)

 私たち日本人がこよなく愛する花――
 サクラ。

 そのサクラの花を描く、
 いえ、サクラの花だけを描く、という、
 ちょっと変わりダネな画家さんがいたことは
 あまり知られていない、と
 著者・今橋さんは御本の『はじめに』で述べています。

「えッ? さくらァ、だけッ??」
「がるるぐるるるる?」(←訳:桜しか描かないの?)

 三熊思考(みくま・しこう)さん(1730~1794)。

 江戸時代中期、
 京の都に生まれた思考さんは、
 自ら《桜顚(かてん)》と号しました。

 《花顚》とは、《花狂い》を意味すると
 今橋さんは解きますが、
 思考さん、本当にもう、桜が大好きだったようで。

 キレイに描く、のが思考さんの目的ではありません。

 桜の名木があると聞けば、
 遠地であろうと訪ねてゆく。

 訪ねて、描いて、花の種類や、
 地域と気温によって生育に差があるかを観察し、
 桜についてとことん考えてみる。

「ふァ~…まにあァでスねッ!」
「ぐるるるるぅ~!」(←訳:桜マニアかぁ~!)

 思考さんの情熱は、
 妹さんやお弟子さんたちを巻き込み、
 “サクラだけを描く”流派は、
 60年の間、隆盛を見たのでした。

 一方、同じ頃、東国では。

「あれッ? ここにもォ?」
「がるるるる!」(←訳:桜マニアが!)

 未曽有の大飢饉を前に、
 被害を最小限に抑えて殆ど死者を出さなかったため
 《名君》と謳われ、
 その数年後には幕府老中に就任、
 さらには将軍補佐となって、
 実質上、幕府の全権を握った人物――

 松平定信さん(1758~1829)。

 定信さんが目指したのは、
 桜の絵、ではなくて、
 “桜がある庭造り”。

「おにわァづくりィ、ッてェ~」
「ぐるがるる……?」(←訳:それ大丈夫……?)

 老中・松平定信さんといえば、
 はい、歴史好きな方々には
 《寛政の改革》でお馴染みですよね。

 財政の緊縮、大奥への倹約命令、
 風紀の取締りに関連して
 山東京伝さんや蔦谷重三郎さんを処罰するなどして、
 ケチと罵られることもあった定信さん、
 《浴恩園(よくおんえん)》と呼ばれる
 江戸随一の名園の
 オーナーさんでありました。

 いえ、正確を期すなら、
 江戸と、所領地の白河に
 合わせて五つもの庭園を造り上げた造園狂だったのです。

「むじゅんッしてるでスゥ!」
「がるるるるぐるるる!」(←訳:財政緊縮と庭園造り!)

 江戸の湾岸地域に広がるサクラ咲く大庭園と、
 植物学にも踏み込まんとする京の画家さん。

 第Ⅰ部『花惜しむ人――三熊派の桜画』と
 第Ⅱ部『花を訪なう人――松平定信の庭園』で
 対比される《桜狂》たちの生涯は、
 フィクションさながらの熱さ&面白さ!

 図版資料も豊富に収録されていて、
 ノンフィクション好きな御方、
 歴史ものが好きな活字マニアさんに
 激おすすめの一冊です。
 本屋さんで、図書館で、
 ぜひ、探してみてくださいね~♪
 
 

 
コメント
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