翌日の日曜日、ボクは第一の目的地
「Isamu Noguchi Garden Museum」へ向かった。
そこはマンハッタンの東に位置するクイーンズにあるのだが、
そのままブルックリンを北上するコースはなかった。
「G-lineは最低のSubwayだから決して乗らない」
そんな助言もあって、ボクはL-lineでマンハッタンに入り、
ユニオンスクエアから北上してレキシントン駅を経由し、
W-lineでイースト川を渡る道筋を選んだ。
●
しばらく、暗澹とした鉄箱の中で息を潜めていた。
初めてニューヨーカーに紛れ込んだ車内。
ツーリストとしての面持ちを隠そうと
気取ったサングラスをかけ、広告に目をやる。
駅構内のアナウンスを聞き取るべく、耳をそばだてる。
乗り継ぐべき駅を間違えないように、そわそわとしながら、
しかし決して悟られないように。
…今にして思えば、何を悟られないよう注意していたのかおかしな話だが、
おそらくニューヨークに溶け込むことが一番の安全だと思っていたのだろう。
レキシントン駅でクイーンズ行きと記されたプラットホームへ回り、
東へと進む。頭上にはイースト川が横たわっているのだ…と想像をめぐらす。
長い長い地下鉄独特のミニマリスムなサウンドにトランスしかけた時、
突然、太陽が光をもたらした。
晴れ渡った秋の、気持ちよく解き放たれた窓外の風景。
口を開け、完全に心を奪われ、頬も自然と弛んで、外を眺める。
…鉄の箱が左に旋回し、進路を北へ取ったその時に、
夢にまで見た摩天楼が、意外と大きな姿でボクの視界に入ってきた。
「おおおおおおおおおお」
あああ~
あれが、マンハッタンか。
先ほどまで地下を彷徨っていた島の全貌は、こんなに立体的にビルが林立していたのか。
いろんなドラマや映画に、映像として受け止めていたマンハッタン。
ブルックリンブリッジやマンハッタンブリッジの遠景として、スクリーンに納まっていた
あの立体的なビル群が、ボクの視界が捉える風景として、リアルに右から左へと流れていく。
いくら文明が発達して、ヴァーチャルの質がどれだけ上がっても、
この「あああああああ」という感嘆と、完膚鳥肌状態のリアルな感慨には、
決しておよぶことはないだろう…。
インターネットやライブカメラが光通信で「生」の映像を手元に届けたところで、
この肉体が五感で受け止める「本物」の感動には、決しておよぶことはないのだ。
ニューヨークに来て、よかった…と思えた瞬間だった。
「Isamu Noguchi Garden Museum」へ向かった。
そこはマンハッタンの東に位置するクイーンズにあるのだが、
そのままブルックリンを北上するコースはなかった。
「G-lineは最低のSubwayだから決して乗らない」
そんな助言もあって、ボクはL-lineでマンハッタンに入り、
ユニオンスクエアから北上してレキシントン駅を経由し、
W-lineでイースト川を渡る道筋を選んだ。
●
しばらく、暗澹とした鉄箱の中で息を潜めていた。
初めてニューヨーカーに紛れ込んだ車内。
ツーリストとしての面持ちを隠そうと
気取ったサングラスをかけ、広告に目をやる。
駅構内のアナウンスを聞き取るべく、耳をそばだてる。
乗り継ぐべき駅を間違えないように、そわそわとしながら、
しかし決して悟られないように。
…今にして思えば、何を悟られないよう注意していたのかおかしな話だが、
おそらくニューヨークに溶け込むことが一番の安全だと思っていたのだろう。
レキシントン駅でクイーンズ行きと記されたプラットホームへ回り、
東へと進む。頭上にはイースト川が横たわっているのだ…と想像をめぐらす。
長い長い地下鉄独特のミニマリスムなサウンドにトランスしかけた時、
突然、太陽が光をもたらした。
晴れ渡った秋の、気持ちよく解き放たれた窓外の風景。
口を開け、完全に心を奪われ、頬も自然と弛んで、外を眺める。
…鉄の箱が左に旋回し、進路を北へ取ったその時に、
夢にまで見た摩天楼が、意外と大きな姿でボクの視界に入ってきた。
「おおおおおおおおおお」
あああ~
あれが、マンハッタンか。
先ほどまで地下を彷徨っていた島の全貌は、こんなに立体的にビルが林立していたのか。
いろんなドラマや映画に、映像として受け止めていたマンハッタン。
ブルックリンブリッジやマンハッタンブリッジの遠景として、スクリーンに納まっていた
あの立体的なビル群が、ボクの視界が捉える風景として、リアルに右から左へと流れていく。
いくら文明が発達して、ヴァーチャルの質がどれだけ上がっても、
この「あああああああ」という感嘆と、完膚鳥肌状態のリアルな感慨には、
決しておよぶことはないだろう…。
インターネットやライブカメラが光通信で「生」の映像を手元に届けたところで、
この肉体が五感で受け止める「本物」の感動には、決しておよぶことはないのだ。
ニューヨークに来て、よかった…と思えた瞬間だった。