#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

オーギー・レンのChristmas Story

2005-12-21 | BOOKS&MOVIES
映画「SMOKE」の題材になった
Paul Austerの新聞小説。

シガーショップのオヤジ、オーギーが
毎朝7時、同じ場所で12年間撮り続けた記録写真を
作家のポールに見せるシーン。

同じ交差点の同じアングルの写真が
1月1日から12月31日まで几帳面に
1冊のアルバムに収められていて、
どう解釈すればいいのか、困っているポールに向かって
オーギーは言う。

オーギー「ゆっくり見なきゃダメだ。」
ポール 「どうして?」
オーギー「ちゃんと見ていないだろ?」
ポール 「でも皆同じだ。」
オーギー「同じようで一枚一枚全部違う。よく晴れた朝、曇った朝。
     夏の日差し、秋の日差し。ウィーク・デー、週末。
     厚いコートの季節、Tシャツと短パンの季節。同じ顔、違った顔。      
     新しい顔が常連になり、古い顔が消えてく。地球は太陽を回り、
     太陽光線は毎日違う角度で差す。」
ポール 「ゆっくり見る?」
オーギー「おれはそれを勧めるね。明日、明日、明日。時は同じペースで流れる。」


…。


写真は一瞬をとらえる。
しかし、時間は連綿と流れている。
そこに現実と写真の乖離が生じてくる。

無責任に切り取られた写真は
その一瞬を永遠に封じ込めるからだ。

そこに写真の暴力性がある。

それが写真の魅力ともなるのだが、
オーギーはその暴力性を償うかのように、
一瞬一瞬を積み重ねて記録する。

自分の人生を封じ込めてしまうかのように…だ。

クリスマスの夜、人は自分の一生に神秘を感じたいと思う。
キリストになぞり、その享けた生を神格化したいと願う。

しかし、その神秘は一瞬一瞬に輝いているのだ…
ということをこの小説は語っているように思う。

毎日の積み重ねの中に、それは宿っていると。

写真はそのことを伝える手段として、在る。


⇒添付の写真は、ManilaのMakati、トライアングルパークのクリスマスツリー。

Comments (2)
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