Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【プジョーな話】拾った画像でプジョー60...いくつだっけ、なプジョー604まつり。

2011-04-07 | プジョーな話。


あーあie、もうこれ出して来ちゃったか...って声が聞こえてきそうです(汗



今回の「まつり」は、
「世界最悪クルマ大全」にノミネートされた(号泣)記念すべき
1970年代のプジョーのフラッグシップ、
プジョー60...いくつだっけ、ああ、604か(涙)、をお送りしちゃいます。

この本にこう書かれているんです(笑




プジョーは戦後、ラインナップでは最上位でも2L+αのクラスで、
俗に言う「高級車」を持っていませんでした。

1968年登場の504は、当時のプジョーのトップレインジ(フラッグシップ)だったのですが、
メルセデスやBMWといったライバルメーカーに存在した、6気筒以上のエンジンを持つ
「プレステージカー」といった性格までは与えられていなかったのです。


そこで1975年、戦前にあった「601」以来実に41年ぶりに、プジョーは「600」番台のネーミングを
与えた「604」を登場させます。




控え目な高級車。しかし、買ってこういうシチュエーション(謎が多いがw)を再現したいなあ



うーん、リアも控え目なデザインだ...




プジョーにとって、戦後初の6気筒エンジン搭載車となりましたが、
その心臓たる6気筒はV6のOHC、2664cc。これは、プジョー独自一社での開発ではなく、
プジョー・ルノー・ボルボがそれぞれの会社のフラッグシップに搭載すべく共同開発したエンジンで、
1974年にはボルボ264、その後1975年にはルノー30(R30、トラント)、
そして同年に登場したこのプジョー604に順次搭載されました。



ボルボ264。244のボディにV6を押しこんだもの。



高級車にまったく見えないR30(そういうところがたまらない...国営ルノーの萌えポイントw)。



なお、このPRV・V6は、PRVとメーカーの違うランチアテーマV6にも採用されたほか、
ルノーではR30の後継であるR25(ヴァンサンク)、フレンチスポーツたるアルピーヌV6/V6ターボ、
PSAグループではプジョー505、605とシトロエンXMに排気量の拡大などをして搭載され、
1998年まで製造されました。



閑話休題。

でこのPRV V6エンジンを引っ提げて登場した、戦後初のプレステージサルーン604なのですが、
ターゲットは完全にメルセデスのコンパクトやBMW5シリーズの高級車市場でした。

ベースになった504同様、ピニンファリーナが手掛けた外観はご覧の通り素晴らしくシンプルで、
水平基調のデザインは流麗でもあり、でも前後がどっちかわからないような、
プレステージカーとしては個性と押し出しの無いデザインでもありました。
でもその控え目さこそ、フランス車らしさであり、プジョーらしいとも言えました。
なお604は、ライバルであるシトロエンCXやルノー30がFFであったのに対し、
504がベース故、FRです。




どっちが前か後ろかわからん、というほどの水平基調デザイン!



ホイールベース2800mm、全長は4720mmに達するサイズは、当時では大柄なクルマのひとつです。
自分はこれよりもひとつ下、504の後継である505に乗っていましたが、
これがまた、全長は4580mmしかないのに、車内は驚くほど広く、トランクもFRとは思えないほど
広大だったのです。
なので、それよりもさらにひとまわり大きな604の車内の広さは想像に難くない。



いまの時代、4720mm×1770mmというディメンションを持つクルマはいくらでもありますが、
車内は「なんでこんなに狭いんだ」って云うクルマが多いのですけど、
この当時のこのサイズのクルマって、ほんとうに広いです。


604の特長は、404以来504、そして604に受け継がれたNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)
の高いレベルでの遮断による静粛性、
そしてサスペンションは504譲りの4輪独立、フロント/マクファーソンストラット、
リア/セミトレ+コイルの形式を持っていましたが、ラバーブッシュを多く用いることなどによって
乗り心地の良さも際立っていると評されていました。



室内。当時のフランス車としては群を抜く高級感と装備を誇り、
見るからに座り心地の良さそうなシートも高く評価されていました
(でもCGが言うには柔らか過ぎとの評も)。



ダッシュボード。ライバルのCXに比べて凡庸。フランス車らしさは薄い。
でも飽きの来ない、いかにもプジョーなテイスト。



604は当初「SL」というグレードのみが用意され、そのエンジンは
ソレックスのシングルキャブのみで131HPだったのですが、
1977年にはボッシュのインジェクション(Kジェトロニック)版の「TI」と「STI」を追加(144hp)、
さらには1979年にはターボディーゼル
(504Dでおなじみの直4・2304cc+ギャレット・エアリサーチのターボ)を積んだ「604D」、
翌1980年には官公庁むけ(日本で言う黒塗りのクラウン的な使いみち)の「SR」、
そしてユーリエでボディをストレッチした8人のりの「HLZリムジン」を追加しています。



2304ccターボディーゼルの604GRD(フランス以外の輸出仕様)


これはたぶん、604SRD。同じくターボディーゼル。






これがリムジン。生産台数147台だとか。
もとが高級感のないクルマなので、たんに長くなっただけって感じが寂しい(涙



1983年にはV6エンジンが2849ccに拡大し150hpを発揮した「GTI」、
2498ccディーゼルの「GTD」などを追加しバリエーションの拡大を図って行ったものの、
ですがやはり高級車ブランドとしてのイメージ不足、
さらには604自体の訴求力の無さ(涙)などもあって、
いかにフランス車らしいソフトで形状も素晴らしいシートや、
504譲りの乗り心地・ハンドリング、そして絶賛された秀逸なパワーステアリング、
広い室内など高い基本設計を持ってしても、生産台数は製造が終わる1986年までに
15万台にとどまり、決して成功したとは言えないモデルになってしまいました。



GTI。GTIはゴルフのクラスだけにあらず、フランス車ではCXにも505にもあったりします。


これもGTI。やばいすっごくカッコイイー!


604が製造中止になった事を受け、505にこのPRV V6を積んだ505V6がラインに加えることで
605が1989年に登場するまでのしばらくの間、505がプジョーの旗艦となったのでした。



なお、604は日本にも、そして北米にも輸出されていました。
日本仕様はSLのみで、西武自販によって圧縮比を下げられて輸入されていましたが、
外観などはちゃんと欧州仕様で、好ましいものでした。

このころは日本の厳しい排ガス規制をクリアにするために、
同じく規制が厳しいアメリカ仕様をベースに日本導入をはかる欧州車は多かったのですが、
それと引き換えに無骨な5マイルバンパーなどで本来のデザインを台無しにすることも多かったのです。
そんな中、604は504D同様、可能な限り本国に近い仕様で輸入されてました。
触媒を自前で開発したり、専用クーラーをあたえたり。西武自販ってすごかったんですね。



ちなみに北米仕様はこれだぜ...。





もう服装とかポーズがアメリカだw


まるで違う車だし、エレガントさを大幅に欠くよなあ...(泣


604って、オールド・クラシック・プジョーらしく、
上質であり、極めて実用的であり、高い品質を誇り、
504譲りの耐久性を持ち、華美では無い高級感を有し、
実用に徹し切った504ほどではないですが、
これまた知的水準の高いクルマだと思います。


ただたしかに、その控え目さが仇になってしまったのは確かかも。
それなのにプジョーはこのあとも控えめな高級車...605、そして607を出し続け、
いずれもあまり成功したといえないというのが...なんとも。
でもどちらも大型ネコ科クルマとして、あまりにも魅力的です。

今度の旗艦508は、
どの程度市場内でのポジションを確保出来るのでしょうか。
頑張ってほしいものですね!





>>がーん!日本にいま売りものの604がある



>>どひゃあ。100万。走行7万。車検なしかあ...やっべー!これやばいー。

>>タルボ・サンバが来て...タルボ・オリゾンが来て...プジョー604が来たら...
次回のフランス車ネタの展開は...ご想像にお任せしますw
ヒントはまた「【プジョーな話。】の番外編」です。




コメント (16)
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