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「オーシャンズ」の迫力と生物多様性

2010-01-24 | 南の海
いきなりド迫力の映像で始まった。イワシの大群がまるで一個体のアメーバのように形を変えながら濃密な群れを作り出す。そこにイルカの群れがジャンプを繰り返す。空からはカツオドリがまるでミサイルを撃ち込むようにイワシの大群に突き刺さる。さらにはニタリクジラが群れの中を縦横に泳ぎ回り、イワシを空中に跳ね上げながら餌を飲み込んでいる。どうやってこのような映像を撮ることができたのか、驚くばかりだった。映画「オーシャンズ」を今日見ることができた。

 「海底二万マイル」で海中映画の先駆者となったフランス映画陣が、「二万マイル」と違って、純粋にストーリーのない記録映画として撮影したこの映画は、最近テレビでよく見る記録映画(ダーウイン新伝説のような)の集大成だと思って見に行った。たしかにいくつかの場面はそのような記録映画をつなぎ合わせたものであったが、最初のこの画面でまったく圧倒されてしまった。エンディング・テーマを歌っている平原綾香がもっとも驚いたというムラサキダコの異様な姿もたしかに驚きだったが。

 この映画は、国際的なプロジェクト研究である「Census of Marin Life (CoML)」が、生物の多様性の重要性、とくに海洋の生物多様性の危機を伝えるために、とくに今年の10月に名古屋で行われる「生物多様性条約(CBD)」COP10で新たな目標を定めることとなることに向けて作られたものだという。生物多様性という言葉を聞いたことがない人は、かなり少なくなったと思うが、それが何を意味するのか、そしてどういう重要性があるのかなどについては、おそらく十分に知っている人はまだまだ少ないのではないだろうか。

 日本でCOP10が開かれることに合わせて作られた映画「オーシャンズ」だが、海の生物多様性の危機を訴える映像として、イルカの大量虐殺の様子を、海からの視線で描いていたのは、秀逸であった。日本で公開されたこの映画のこの部分がまったく原作と同じかどうかは分からない。日本向けに削除された部分もあったのではないかとも十分想像したくなるほど、映画は控えめにイルカの大量虐殺を描いていた。どちらにしてもイルカの大量虐殺を行っている日本を暗に批判したものであることは間違いない。でもその批判は当を得たものであったように思う。海の中からの視線、つまりはイルカの視線で人間のイルカや魚の虐殺を描くことは、直接的にイルカ猟を描いたりするよりもより強烈な批判を感じさせもした。一瞬だが、捕鯨船からの銛砲がクジラに突き刺さる瞬間の映像もある。その撮影に費やされた努力に感嘆せざるを得ない。

 宮沢りえによる映画のナレーションも、あまり多くは語らないが、このような直接的な殺戮以外に、人間による海の汚染、温暖化による北極の異変など、物言わぬ海の生物に代わって突きつける全編の映像が、その多くを物語っている。ぜひともみんなに見て貰いたい映画だった。そして、海の生き物を守るためになにをするべきか考えたいし、考えて欲しいと思った。

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