肩の凝らないスローライフ

ようこそtenchanワールドへ。「一日一笑」をモットーに・・・日常生活の小さなことを笑いに変えるtenchanの雑記帳

最後の大げんか 後編

2009-06-15 12:39:51 | Weblog
どうせまた、ふてくされたまま
勉強もしないで、
コンピュータを見てるんでしょ、
と、思いながらドアを細めに開けて覗くと、
あれぇー・・・・・コンピュータの前には座ってないし、
勉強机のところでもない。

ここにいるはずなのに・・・・
不思議に思って、部屋に入ると、
長男は床にペタンと座り込み、
虚ろな目をして窓際にもたれているではないか。

ど、どうした~?

いつもの荒々しさはどこへ行った~?

具合でも悪いんだろうか?

「どうかしたの?」

心配になって聞いてみた。

途端に、長男の目がキッと鋭くなった。

「カンケーねぇし。

カンケーねぇって言ってんだよ!

あーそうかい、聞いた私がバカだったよ。
一瞬でも心配してやったのに、なんだいなんだい。

ったくもう、少しは反省してると思ったのに!
プリプリ怒りながら下へ降りると、
夫からのが携帯に入っていた。
二人の喧嘩の事を手短に知らせ、駅まで迎えに行く。

夫は車に乗り込むと、
「で、何がどうなったって?」
詳しい話を聞こうとする。
私は喧嘩の一部始終と今の二人の状態を話し、
長男はいつもより元気がないっていう事も付け加えた。

「そうか・・・・ちょっとは悪いと思ってるのかもな。」

家に着くと、夫は二人を食卓に呼んだ。
「お母さんから大体の話は聞いたけど、
お前達から直接聞きたい。
、話聞かせてくれや。」

次男は少し落ち着いたのか、冷静に事を話した。

「ん、お前の言い分はわかった。

、どうや?」

長男は伏し目がちに説明し始めた。

私がぶち切れて長男を叩いた時の事にさしかかると
思い出して涙が出てきた。

「『お母さんなんてカンケーねぇ!』って言ったでしょ!」

言った途端、さらに涙が出てきた。泣き虫だけどしょうがないもん

すると、それまで話を黙って聞いていた夫がこう言った。

、お母さん、泣いてるぞ。

本当に『カンケーねぇ!』のか?

そうじゃないだろ。

お前が赤ちゃんの時からさぁ、
お母さん、ずーっと面倒見てくれたんだよ。
夜中眠いのに起きて、おっぱい飲ませて
うんちやおしっこしても、お尻拭いてきれいにしてやって、
熱が出たら看病して、
そうやってここまで大きくしてきたんだよ。
そんなこと、普通できるか?
できねぇよな。
自分の子供だもん、心配するのあたりまえだろ。

どうや?それでも『カンケーねぇ』って言えるか?

「・・・・・・・・」

「そうか、お母さんとの前では言いづらいか。
ちょっと、二人とも席外してくれるか。」

そう言われて、部屋を出た二人。

まだめそめそしている私を目の前にして、
どーしていいか分からないというように、次男が言った。

「あのー、お母さん、泣かないでよ。
あのさー、喧嘩してほんとにごめんね。
これからはさぁ、切れないように気をつけるからさぁ。」

わかってくれればいいんだよー。本当にもう、喧嘩はやめてー。

「お願いだから、自分を傷つけるような言動はやめてね・・・・。」

そう言って次男をぎゅっと抱きしめた。
自分よりとっくに背の高くなった子供をギュッとするなんて、何か変な感じだ。
でも、今日はそうしてやりたかった。
次男は私の背中をトントンと叩いて、
「うん・・・わかった。」
そう言うと、自分の部屋に戻っていた。
子供に背中をトントンされるのも、ミョーな感じ・・・・
でも今日はいいんだ。


しばらくして、長男が部屋に入って来た。
いつもにはない静かな雰囲気。心なしか目が赤い。

2,3度部屋を往復してから
私のほうにゆっくり来ると、
長男はこう言った。

「お母さん、あのー、
今日はと喧嘩してごめんなさい。
もう殴ったりしないから・・・・。
それから、『カンケーねぇ。』って言ってごめんなさい。」

それは私が耳にした、彼の人生で初めての、

心の底からのお詫びの言葉

だった。

今までは、
叱られたから、しょうがないから
「取りあえず謝る」だけで、
言わされてる感が前面に出ている「ごめんなさい」
しか言わなかった長男。

「オレが殴ったのはアイツがウザいから。」
とか、謝った後でも悪態をついていた長男。

でも、今日は違った。
本物の「ごめんなさい」だった。

言われてまた涙が出てきた。
今度は情けないんじゃなくて、ホッとして泣けてきたんだけど・・・・

「3人とも、お母さんの大事な子供なんだからね。
もう傷つけ合うのはやめてね。」

「うん。もう分かったからさ、そんなに泣かないでよ。
オレまで泣けてくるじゃん。」

しばらく二人でティッシュの箱を挟んで、涙をぬぐい鼻をかんだ。

あー泣き過ぎだ~。
明日の朝はきっと瞼が腫れてるだろうな。

夫の話によると、
私と次男がキッチンを出て直ぐ、
長男はワーっと泣き出したそうだ。

弟を殴って鼻血を出させてしまったのが、余程応えたみたいだ。
悪いと思ってはいたものの、暴言を吐いて引っ込みがつかなくなってしまった事、
なんでいつも切れちゃうんだろう、と自分を嫌悪した事、
泣きながら話したそうだ。

今日のように何かのきっかけがないと、自分を見つめる事はできないのかもね。

それにしてもね~、長男17歳ですよ、17歳
普通ならもう落ち着いてもいい年頃だろうに・・・・
今まで本当に長かった・・・・
ようやく兄弟喧嘩から卒業ですっ!