開かずの引き出し

母が、一生懸命、引き出しを開けようとしている。
しかし、引き出しが開かない。
母は、「この引き出しの淵にボンドでも貼り付けたんじゃない？」と、文句を言っている。
よく見ると、寸分の隙間もなく、引き出しの開き口がくっついている。
なんとかしないとなぁ。と、使わなくなったポイントカードを差し込んで、ボンドが貼っているか調べるけど、何せものすごい硬い引き出しに悪戦苦闘する。

時間が経って、やっとの思いで、引き出しを開けると、木がしけって膨らんでいた。
上にのせてあるポットから滴がたれて、木がそれを吸い込んだのだ。
家族は、みんな人のせいにすることで、自分の罪を逃れようとした。
まあ、ひびの入ったポットが原因。ということで、みな納得した。

木は、水を吸って成長する。
切られて死んでしまった木でさえも、水を吸って膨張する。
なんと、不思議なことか。
木も生き物なんだなぁ。と、思う。

ポットもお盆の上にのせられ、引き出しも乾かして、元の鞘におさまって、一件落着ということになった。