オルタで撮った最後の写真
いつまでも眺めていたい風景でした
オルタ湖中心地
オルタの町に飾られていたクリスマスのオーナメント
■2015年12月25日(金)
ミラノは今、朝の9時半です。日本はイタリアよりも8時間早いのでもう夕食時でしょうか。今日はクリスマスなので市内の美術館や観光名所、そしてバールに至るまで結構あちこち閉まっていてイタリアはとても静かです。当初はベルガモ、モデナ、マントヴァなど近辺の町に出かけようかと思っていましたが、見所は閉鎖されているだろうし、地方のバスももしかしたら走っていないかもしれない。おまけに身体は結構疲れていて、風邪でも引いたのか、喉に違和感があるし、この辺りで私も少し休養しようと思います。
ホテルの朝食
野菜や果物が多いのが嬉しい
先ほど、遅い朝食を済ませましたが、同じホテルに滞在していると、朝食は決まったメニューで、飽きても来るのですが、温かいカプチーノやコーヒーを入れて貰っての上げ膳据え膳はやっぱり有り難いです。
ホテルは駅前にあるのですが、朝食を終えてロビーからふと外を見ると、ホテル前の三角地帯に植わっている木々にピンク色の小さな花が咲いているのに気付きました。えっもしかしたらサクラ?
ホテル前の桜の樹木
ど近眼の私はコンタクトを入れています。旅先には、度数の違う二種類のコンタクトを持参するのですが、今朝は、とてもよく見える度数のコンタクトを入れていました。その為に、小さな花の形状や桜の木のあの独特の木肌が確認できた訳ですが、これが度数の低いコンタクトを入れていたなら、多分気付かないまま部屋に戻っていたろうと思います。そのことが、ちょっとした事件に遭遇することになりました。
やっぱり桜の花が咲いている!
芝生には犬の糞があちこち落ちていて、踏まないように気を付けながら、桜の木々や花をカメラに収めていました。ミラノの混沌とした駅前で、しかもクリスマスのこの時期に日本の名花を見ることになるなんて~とちょっと嬉しくもなっていたのですが、その時!
ホテルの目の前はやはり危険地帯です
一台の黒い車が停まって、ここでは写真を撮ってはいけない、写真禁止地帯だと、男性が車の窓を開けて私に声を掛けて来ました。えっこの地域に大使館や軍関係の施設があったっけ?などと思いながらも、このご時世、テロの警戒態勢で厳しく取り締りが行われているのかも知れない、と考えてしまいました。ドォーモの周辺を巡回する銃を携えた迷彩色の服を着た兵士やお巡りさんが頭をよぎりもして…。
その男性は警察手帳(ドラマで見るような縦長の手帳をぺろんとぶら下げた)を掲げて、私に車の方へ来るようにと、これも映画に登場するFBIの捜査官を彷彿とさせるような仕草で手招きするではありませんか。あっらーカッコイイ。
この車です!
車のそばまで行くと、パスポートを見せろと言いました。警察手帳を見せられたために、不覚にも、この時は、本物のお巡りさんだと思いこんでしまっていたので、身分は証明しなければ、とパスポートを見せてしまいましたが、すぐにおかしいと気付きました。警察官が一介の旅行者にパスポートの提示を要求することはないという知識はあったのに、偽物だとはいえ、警察手帳という“黄門様の印籠”を掲げられると、こうして簡単に信用させられるものなのですね。
果たして彼は、バッグを見せるようにいい、君は中国人かもしれない(何でやねんっパスポートを見ましたやろっ!)コカインを持っている可能性があると、バッグの中から、先ずはハンカチを取りだし(このハンカチ、二日洗ってません^^;)彼は、鼻先でクンクン匂いました。
もう絶対変だ。私は、確信を持って「sei un bugiardo!」(あなたは嘘つきだ)、「Tu non sei un polizia」(警察官じゃない)そして覚えていたイタリアの諺「Chi mente ruba!」(嘘つきは泥棒の始まり)を、おまけに付けて言いましたが(さすがに怖かったのでちっちゃい声で)、通じたかしらん?
もう嘘つきどころか、泥棒始まってるやんか、と一人で突っ込みを入れながら、バッグを抱えてその場を足早に離れましたが、もし本物のお巡りさんだったらどうしよ、と半ばヒヤヒヤもした次第でした。
ミラノ駅の周辺は危ない、最も危険地帯だと聞いてもいたし、随分注意もしていましたが、まさか、こんな朝の時間帯に、そしてこんなシチュエーションで騙され掛かるとは思いもしませんでした。私の行動が目立ち、そして隙があったのですね。失敗はしたけれど、彼らにしてみればいいカモだったことだと思います。彼らの思惑は、コカインの検査だと言ってバッグの中を物色し、サイフを抜いて車で走り去る、そんな計画だったのでしょう。
ちなみに朝食会場に行くだけなのでサイフは入れてはいませんでした。中身は、使い古したハンカチとティッシュ、ノキアのちんけな携帯電話と100鈞で買った老眼鏡、そしてどういう訳か、マツモトキヨシの10%引きのチラシetc
駅前はロータリーになっているので、あの車は、ぐるりと回ってここに戻ってくるかも知れない、そう思っていたら、数分後、やっぱり現れました。まさか私がカメラを向けて待っていたとは思いもよらなかったでしょう。私に気付くと急にスピードを上げて街角に消えて行きましたが、それてしてもキリスト誕生の厳かな日に、なんと罰当たりな行動をするのでしょう。イケメンの二人組でしたが、神様、罪深き彼らにどうぞご加護を!アーメン〆。