モザイク画の配置
サイトの説明を参考に
モザイク画の主なテーマを記入してみましたが…
全体を表す図から、先ず入口から延びる中央身廊には背の高い「生命の木」が配され、その枝に聖書や神話、歴史上の登場人物が引っ掛けられたように描かれています。旧約聖書では、この木は「神が不滅」であるのを現わしているのだそうで、入り口から「救いの場所である祭壇」まで、それぞれのモザイク画をたどりながら信者を導くのだそうです。
入口にあるトランペットを吹いて巡礼者を歓迎する
二人のうちの一人
⁂私も歓迎してくれたのかしらん…
2022.12.23撮影
パンタレオーネは、「木」は「生命の源」であるとし、「人類の歴史」をぎゅっと凝縮してこの中央身廊に描いたようでした。旧約聖書のみならずギリシャ神話にまでも神の啓示を受けたがごとく。。。
中央身廊中ほどに描かれた「ノアの箱舟」
サイトより
入口のディアナかアマゾネスのいきなりの登場には驚きましたが、そういえば、有名なアダムとイブのストーリーやノアの箱舟、カインとアベル兄弟の確執もそれと分かる程に描かれています。。長椅子に邪魔されて、この辺りの実際のモザイク画は写真に収められなかったけれど、全体を俯瞰したならば、成程と理解できることもあって、この大聖堂の床の壮大な物語は、来館者に迫ってくるようでした。
アプスのモザイク画
アプスと呼ばれる後陣には、神様にたてついた為に魚に飲み込まれてしまうというイスラエル人の預言者「ヨナの物語」も展開しています。同じく旧約聖書に登場する怪力サムソンも描かれてパンタレオーネは、この「典礼の空間」で、「善の勢力が悪の勢力」に打ち勝つ、つまりはキリストの勝利を語っているのだそう。
右側通路の「生命の木」と守護者として描かれているライオン
2022.12.23撮影
右通路に行くと、ここにも「生命の木」が描かれていますが、全体を通してパンタレオーネは、善と悪の戦い、愚と賢の対比、そして美徳や贖罪にいたるまで人間のドラマを象徴したかったようで、この通路もそれらのテーマに外れることのない力強い絵柄が広がっていました。
中には、「訳わからん」と思わずつぶやいた、奇怪な動物もあちこちに居るのだけど、それでも人類をサタンから解放する象徴としてライオンを配し、更にはこの獅子を木の守護者として描いていると知れば、暗澹たる世の中にあってもなんと救いがあることか。
天国のエリアに描かれた「イサクとアブラハム」
彼らの膝には「救済される魂」が抱えられている
地獄の象徴「サタン」のモザイク画
又、左通路側は、天国と地獄に分かれていて、入口から向かって左半分が天国、右半分が地獄を描いています。ダンテの「神曲」がちょっと思い浮かびましたが、ここでも描かれている「木」はキリストの象徴でもあって「最後の審判」として配されているのだとか。
左通路に描かれた「木」・中央身廊の「生命の木」・右通路にも「木」
2022年12月23日、床一面に広がるというモザイク画を、ただ単に見たいとの思いで訪れた大聖堂でしたが、まさかこんなに感銘を受けるとは思いもよりませんでした。
聖堂が建てられた当初からこのモザイク画が施されていた訳ではないようですが、パンタレオーネの製作が完成以降、礼拝した信者や巡礼者たちは、聖堂に一歩足を踏み入れたらこの壮大な物語に身を置くことになり、神への崇拝やキリストへの信仰をより一層深め、更なる救いを得たことでしょう。
なお製作者のバンタレオーネは修道士の長老だったようですが、その出自の詳細は分かっていないとか。けれど、東西文化の融合を図り、旧約聖書やギリシャ神話にまで基づいたこれだけの構成を組み立てた上、60万個もの石で、モザイク画を二年で完成させるとは、その情熱と精神力、そして教養は並外れたものだったのですね。眼光鋭く、神に導かれるがまま、聖堂の床に石を敷き詰めていく、そんな彼の獅子奮迅の働きを垣間見たようでした。-完-