イタリアより

滞在日記

オートラント大聖堂その5.

2023年05月29日 | オートラント

 

モザイク画の配置

サイトの説明を参考に

モザイク画の主なテーマを記入してみましたが…

全体を表す図から、先ず入口から延びる中央身廊には背の高い「生命の木」が配され、その枝に聖書や神話、歴史上の登場人物が引っ掛けられたように描かれています。旧約聖書では、この木は「神が不滅であるのを現わしているのだそうで、入り口から「救いの場所である祭壇」まで、それぞれのモザイク画をたどりながら信者を導くのだそうです。

入口にあるトランペットを吹いて巡礼者を歓迎する

二人のうちの一人

⁂私も歓迎してくれたのかしらん…

2022.12.23撮影

パンタレオーネは、「木」は「生命の源」であるとし、「人類の歴史」をぎゅっと凝縮してこの中央身廊に描いたようでした。旧約聖書のみならずギリシャ神話にまでも神の啓示を受けたがごとく。。。

中央身廊中ほどに描かれた「ノアの箱舟」

サイトより

入口のディアナかアマゾネスのいきなりの登場には驚きましたが、そういえば、有名なアダムとイブのストーリーやノアの箱舟、カインとアベル兄弟の確執もそれと分かる程に描かれています。。長椅子に邪魔されて、この辺りの実際のモザイク画は写真に収められなかったけれど、全体を俯瞰したならば、成程と理解できることもあって、この大聖堂の床の壮大な物語は、来館者に迫ってくるようでした。

 アプスのモザイク画

アプスと呼ばれる後陣には、神様にたてついた為に魚に飲み込まれてしまうというイスラエル人の預言者「ヨナの物語」も展開しています。同じく旧約聖書に登場する怪力サムソンも描かれてパンタレオーネは、この「典礼の空間」で、「善の勢力が悪の勢力」に打ち勝つ、つまりはキリストの勝利を語っているのだそう。

右側通路の「生命の木」と守護者として描かれているライオン

2022.12.23撮影

右通路に行くと、ここにも「生命の木」が描かれていますが、全体を通してパンタレオーネは、善と悪の戦い、愚と賢の対比、そして美徳や贖罪にいたるまで人間のドラマを象徴したかったようで、この通路もそれらのテーマに外れることのない力強い絵柄が広がっていました。

中には、「訳わからん」と思わずつぶやいた、奇怪な動物もあちこちに居るのだけど、それでも人類をサタンから解放する象徴としてライオンを配し、更にはこの獅子を木の守護者として描いていると知れば、暗澹たる世の中にあってもなんと救いがあることか。

天国のエリアに描かれた「イサクとアブラハム」

彼らの膝には「救済される魂」が抱えられている

地獄の象徴「サタン」のモザイク画

又、左通路側は、天国と地獄に分かれていて、入口から向かって左半分が天国、右半分が地獄を描いています。ダンテの「神曲」がちょっと思い浮かびましたが、ここでも描かれている「木」はキリストの象徴でもあって「最後の審判」として配されているのだとか。

左通路に描かれた「木」・中央身廊の「生命の木」・右通路にも「木」

2022年12月23日、床一面に広がるというモザイク画を、ただ単に見たいとの思いで訪れた大聖堂でしたが、まさかこんなに感銘を受けるとは思いもよりませんでした。

聖堂が建てられた当初からこのモザイク画が施されていた訳ではないようですが、パンタレオーネの製作が完成以降、礼拝した信者や巡礼者たちは、聖堂に一歩足を踏み入れたらこの壮大な物語に身を置くことになり、神への崇拝やキリストへの信仰をより一層深め、更なる救いを得たことでしょう。

なお製作者のバンタレオーネは修道士の長老だったようですが、その出自の詳細は分かっていないとか。けれど、東西文化の融合を図り、旧約聖書やギリシャ神話にまで基づいたこれだけの構成を組み立てた上、60万個もの石で、モザイク画を二年で完成させるとは、その情熱と精神力、そして教養は並外れたものだったのですね。眼光鋭く、神に導かれるがまま、聖堂の床に石を敷き詰めていく、そんな彼の獅子奮迅の働きを垣間見たようでした。-完-

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オートラント大聖堂その4 .

2023年05月25日 | オートラント

右通路側のモザイク画

ギリシャ神話の

天を担ぐアトラス

オリンポスの神と戦って敗れ

世界の西の端で天空を支える罰を科せられた…

そんな頑張っているアトラス

2022.12.23撮影

床一面に描かれたモザイク画は、「Il racconto del 'libro di pietra'」/石の書の物語と定義され、実はとても意義深いメッセージが発せられていました。

そもそもロマネスク時代の芸術では、教会の床は地上に於ける、意識に浮かんだ姿や像を聖堂に捧げる空間とされていて、それがゆえに製作者のパンタレオーネは、中世の動物寓話にヒントを得、現実の動物はじめ、幻想的な生き物や、騎士道文学、神話、更には英雄たちをも描いたようでした。

中央身廊に描かれた

グリフォンにまたがるアレキサンダー大王

パンタレオーネは、アレキサンダー大王の姿を借りて、

「誇りと傲慢」を語っているのだとか

大王はグリフォンを操って

天空へ昇ろうと企てているらしい

両手に持つのはグリフォンへの餌

『ほれほれ肉をやるぞー

だから私を連れて天へ飛んでいけ』みたいな…

2022.12.23撮影

勿論、モザイク画には旧約聖書の登場人物やそのエピソード、預言者や天使や悪魔までもが登場します。しかし、本来歩くための床には、土足で踏みつけることになるキリストや聖母など​​の宗教上の人物は再現されていない…。決して無節操に描かれている訳ではないモザイク画。このことは、心を打ち妙に腑に落ちた思いでした。

聖堂内部の構成/サイトより

こうして見ると

モザイク画は

まるで聖堂に敷き詰められた

絨毯のよう

余談

忘れないうちにちょっとした注意事項を…午後3時、聖堂の扉は開けられはしましたが、と同時に係の人が聖堂の床掃除をし始めました。左通路からそれはそれは丁寧に。そのために左側のモザイク画はなかなか見ることが出来ず。仕方なく地下のクリブタへ降りましたが…戻って来てもまだ掃除中。

ここからは独り言…「オープン前に掃除は済ませておきましょうネ」…ってここはイタリアでした。開館してすぐは、こんなことがあるので、聖堂に入るのはお掃除の済みそうなオープン一時間後くらいがいいかも知れません。もっとも、何かの都合で今日(2022.12.23)だけのことだったかも知れませんが。

午後3時、係の人が車でやって来たけれど…

-続く-

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オートラント大聖堂その3 .

2023年05月23日 | オートラント

木製の

キラキラの天井

八角形や十字形の文様は

純金メッキが施されている

2022.12.23撮影

床のモザイク画とこの天井の模様の

アンバランスさに

上を向いたり下を見たり

頭が上下に振れました

2022.12.23撮影

そもそもこの聖堂は、古代ローマ時代、ドムスと言われるやんごとなき人の住居の跡地、あるいは初期キリスト教の教会か寺院の遺跡に建てられたものらしく、ウキペディアと公式サイトによると、ルッジェーロ治世の元、1068 年ノルマン人の司教が設立したのだとか。

その建築様式は、ビザンチンや初期キリスト教はじめ、ロマネスクの要素を含む統合型。11 世紀にノルマン人が到来するまで、この地は数世紀にわたってビザンチン人に支配されていたというから、こうした、いわゆる「文化の融合」もうなずけます。

かろうじて通路側の壁に残っているビザチン時代の「聖母子像」のフレスコ画

2022.12.23撮影

その後、数百年の間に改築が繰り返されて今に至るのでしょうけれど、恐らく、むき出しになっている両サイドの12本のアーチの壁には、旧くはキリストにまつわるようなフレスコ画もあったのだろなと、そんな想像を巡らせました。

又、この大聖堂は、むごたらしい虐殺の現場でもあって、800人にも及ぶ殉教者を出したのだとか。1480年、オートラントに攻め入って来たオスマントルコ軍は、よりにもよってこの聖堂に避難していた女性や子供たち、そして聖職者らを皆殺しにしたというのです。まさしく神をも恐れぬ所業…

イタリア半島最東端に位置するオートラントは、エルサレムに向かう巡礼者が立ち寄る聖地でありながら、こうして大いなる戦禍を招く地でもあったことに改めて気付くことになりました。

長椅子が並んでいなければこんな風に…

公式サイトより

さてモザイク画の続きですが、この混とんとした摩訶不思議な絵柄にも、実は製作者パンタレオーネの深い思いがありました…モザイク画を幼稚だなんて…すっかり恥じ入ってしまいました。

-続く-

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オートラント大聖堂その2.

2023年05月21日 | オートラント

三々五々

見学者たちは集まって

午後からの開館を待つ

もうすぐ午後3時

2022.12.23撮影

結局、2時間近くの列車の遅延によって、午前中の入場は出来ず、午後からの開館を待つことになりましたが、その合間を縫って町の散策が出来たのは良かったです。コロナ禍の影響で閉店しているお店も多かったものの、海辺に面したレストランでゆっくりとランチが摂れたのは幸いでした。

それにしても、聖堂内の床一面に、小さな石を埋め込んで描かれた旧約聖書の物語…公式サイトには、「イタリアで無傷のまま残っている唯一のノルマン時代のモザイク床」と記述がありますが、確かに、ロマネスク様式の古いお堂で、こんなモザイク画が床一面に施されている聖堂や教会は見たことがありません。

椅子がなければなぁ…全体が見えるのに

2022.12.23撮影

入場して残念だったのは、堂内椅子が置かれている為に、モザイク画の全体を見ることが叶わなかったことですが、それでも聖書に無縁な私でも分かる場面やストーリーが描かれていて、そうして、何とも稚拙というか幼稚というか、ユーモラスな絵柄には、「わたしでも描ける~」などつっこみどころが満載で愉快な気分にもなりました。

正面入り口のモザイク画には

製作者と依頼者の名前がラテン語で記されている…

来館者への ❛名刺代わり❜ だとか

このモザイク画は、恐らく字の読めない信者たちにも理解できるよう、聖書のストーリーや伝承を床に描いたのだと思いますが、例えばアッシジの大聖堂に見る壁画のようにキリストの生涯を順を追って展開するというような、誰が見ても分かる構成からは程遠く、何だか混とんとしています。が、Il pavimento della Basilica è un pavimento “parlante”,と説明があるように、この大聖堂の床は、「話す床」、いわば「画像の中世百科事典」と定義されるのだとか。

入口左端っこに目についた強そうな女性の像

ギリシャ神話に登場する

勇猛果敢な女性戦士「アマゾネス」

成程!

2022.12.23撮影

製作者は修道士パンタレオーネ。1163 年に当地の大司教ジョナータに依頼され引き受けたのだそうですが、このモザイク画の「彼の意図は、兄弟たちが修道院で教え、学んだことを画像で再現すること」なのだとか。2年の歳月をかけて、たった一人で仕上げたというから驚きです。あんな小粒の石で、それこそコツコツと。。。

「アマゾネス」に射抜かれた鹿…

ん?

ギリシャ神話?

-続く-

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オートラント大聖堂その1.

2023年05月19日 | オートラント

オートラント大聖堂

2022.12.23撮影

結局午前中の見学は出来なくて…

※我が町に伊首相メローニさんが来ています。ちょっと触発されて、2022年の旅日誌を今少し…

■2022年12月23日

2019年にシチリア島の華やかなノルマン・シチリア王国を垣間見たのち、その足取りをもう少々たどってみたくなり、プーリアに足を向けました。

ルッジェーロ二世が築き上げた王国は、彼の孫であるフェデリーコ二世へと受け継がれはしたけれど、しかしその栄耀栄華も永遠ではありませんでした。奇しくもノルマン・シチリア王国は、プーリアに於けるフェデリーコ二世の死をもって終焉へと向かっていく…この地でそんな思いにも駆られてちょっと切なくなりました。

大聖堂ファザードのバラ窓

それでも、プーリアで彼が改築した城や要塞は100以上にも及び、そこかしこに足跡がありました。その一つがオートラントにもあって、そうして聖堂内の床一面に鮮やかに描かれたヨーロッパ最大級のモザイク画も合わせて見るべく、当地に足を延ばしたのでした。道中、アクシデントに見舞われはしましたが、無事に目的を完遂出来て良かったです。

聖堂前の表示板

聖堂の開館時間

11月、12月そして1月は

午前:08時~12時

午後:15時~17時45分

前述した列車の遅延がなければ、午前中に見学出来たのに…

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