サンマリノ共和国/バシリカ・ディ・サンマリノ
町の人が祭壇を掃除していました
主祭壇には、サンマリノの守護聖人マリノの聖遺物が納められている
コリント様式の外観からは想像の付かないほど、内部は明るく綺麗でした
イタリア半島の対岸、クロアチアのアドリア海岸地域にあたるダルマチアの石工マリヌス(聖マリノ)とその仲間達が、当時のローマ皇帝によるキリスト教迫害から逃れて作った町、それがサンマリノ国の起源です。その聖マリノを祀るのがこのバシリカなのですが、ローマ帝国が滅んだ後も、他のイタリアの都市とは一線を画し、近代ではあの世界大戦の時ですら中立の立場を貫いて、ひたすら自由と独立を守ってきたサンマリノの歴史は、知れば知るほど圧倒される思いでした。今は、観光産業にすがるこの町ながら、石工マリヌスの信仰の深さと自由への願いは、長い間こうして連々と受け継がれてきたのですね・・・と前置きが長くなりました。久しぶりの更新です。
■2014年12月26日
ボローニャから列車でサンマリノ共和国へ日帰り旅行をしましたが、前述の通り、到着した時は辺り一面霧に包まれて、景色も見えずも風情も感ずるものは皆無でした。それが少しづつ晴れ間が出て来て、天に感謝をしましたが、もしも煙霧のまま視界不良なら、もうさっさと踵(きびす)を返していたことだろうと思います。
サンマリノから、隣の町になるボルゴ・マッジョーレを望む
こんな山のてっぺんの観光地では晴天になる程嬉しいことはなく、この日も一通りの見所を訪ね終えたあと、更にロープウエイに乗りました。乗車時には、前述の通りちょっと手間取りましたが、それでも眼下に広がる景色が見られて私は上機嫌でした。どの町も再訪はそうそう叶いません。ロープウェイだってどこにでもあるありふれた乗り物ですが、体験出来なかったら、小さな悔いが残ったことでしょう。
この通りは、Via oddone Scarito(オッドーネ・スカリト通り)といいます
ロープウエイを降りて、出口から上へ上がる階段があります。その階段から、何気に上の道路に出ると、左手方向に教会らしき建物の塔が目に入りました。いつもの通りハイ、行って見よう~でした。
左手方向の横断歩道を渡る
私のこの好奇心は、時に迷子になる要因でもあるのですが、今回は、功を奏しました。こんなところに?と言う隅っこに、思いも掛けない、地元の人たちが集うレストランがあったのです。時間はちょうど正午を回っていたでしょうか。ガラス越しに見る店内には、お客さんの姿が幾人も見えて、テーブルには予約席の札もあちこちに置かれていました。もしかして、当たりかも?!
こんなところにレストランが・・・見っけ-☆
何やら、ピーンと心に響くものがありました。テーブルには既に予約席が何席もあって、ご近所の人らしき客がワインを片手に歓談している…日本でもそうですが、こんな雰囲気を醸し出す店は、きっと美味しくてリーズナブルな料金設定の料理を出すに違いない。国内でも、旅行に出ると、必ず地元の人に聞いて、評判のお店に食べに行くのですが、そんな時はほぼ間違いなく美味しいのです。そんな経験から働いた私の第6感~このお店も、まさしくビンゴ!でした。
オステリア「Lino」
ボンジョルノ~と言いながら、ガラスの戸を押して中に入ると、スタッフの女性がすぐに応対してくれました。一人ですが、テーブルはありますか、と旅の常套句を言うと、女性は「si si」(はい、ありますよ)とニッコリと笑って、奥へ案内してくれました。入り口にも勿論テーブルはありましたが、イタリアの他のお店に違わず、ウナギの寝床のように、奥にも席は続いていました。
奥のテーブル席に案内されました
イタリアの人たちは、どんな時も食事の時間は家族や友人知人と一緒にテーブルを囲みます。一人だけで食べている人というのは、まず見ない。ジェラート屋さんだって、背広を着た男性が二人連れ立って食べに行く、そんな国民性なので、旅行者と言えども、女性一人がこうして席に座るのは、はたから見れば何とも違和感があるのだろうけれど、一人なのだから仕方がない。これまでだって、レストランのクリスマスディナーやランチに、正装して一人で臨んだことがあったし、そんなことを気にしていたら、一人でイタリア旅行なんて敢行できません。と、まあ、気合いも入るのですが、取りあえず、メニューを持って来て貰って、料理の選択に入りました。
沢山の料理が並ぶメニュー
というと、大げさで、実のところ、選ぶといっても、私が承知している食材の単語なんてたかが知れています。肉なら、豚や牛、鶏にイノシシ、そしてウサギくらいだし、、野菜だって、ありふれた材料の語彙しか判読できません。知っている食材を目で確かめた上で、注文を取りに来た女性に、お勧めをアドバイスしてもらって決めたのは「strozzapreti al filetto」(ストロッツァプレーティ アル フィレット)です。メニューに食材が記されているのは、とても親切で、私でも理解出来た上、この地域の風土料理だから、食べて行って、と言ってくれたスタッフの言葉も後を押し、迷いなくこのパスタ料理に決められたのでした。
「strozzapreti al filetto」
要は、鶏ヒレ肉のニョッキなのですが、新鮮なルッコラやトマトが沢山入っている上、パルメザンチーズもたっぷりと掛かっていて、それらと濃厚なソースが相まって実に美味でした。ストロッツァプレーティは、ねじりを入れたニョッキなのですが、熱々で手打ちのもちもち感が何とも言えず、口の中に入れるとつきたてのお餅のような感触でした。こんなニョッキは日本ではまずお目に掛かれない。元々は、食べず嫌いもあるけれど、小麦粉を水で練ったお団子のようで、決して好きなパスタではなかったのですが、それはどうも私が“本物”の味を知らなかったせいだろうと思わせられました。ここでも、一人では食べ切れないほどの量でしたが、気付けばほぼ完食。やっぱり美味しいモノは食が進むのですよね。
サンマリノの町の中にも、勿論美味しいレストランはあるのでしょうけれど、こうしてガイド本にも載っていないお店をたまたま見つけた時は、とても得した気分で、サンマリノ訪問の良き思い出にもなったのでした。