
ローマ・フィウーミチーノ空港のアリタリア機
国内線から国際線へ乗り換える途中にいつも見えるAZ便、今年も同じ光景を見ました
広島からローマに行くのに私はいつもアリタリア航空を利用します。新幹線で大阪まで行って関空発となるのですが、それでも直行便でローマまでの所要時間12時間というのは最短で身体が楽なことがその理由です。知人から「広島空港からローマまで行けるよ。新幹線代と前泊のホテル代がもったいなくない?」と言われるのですが、調べてみると、広島→台北→バンコク→ローマ便が飛んではいるものの、現地までどうも24時間かかるようで、更にはその運航が時には間際になって福岡発着に変わることもあるらしいと知ると、飛行機代が安くてもやはり躊躇してしまいます。そんな訳で今回もアリタリア機に乗りました。

2012年12月22日午後9時
アリタリアの国内線、ここで乗り換えてジェノヴァへ
これまでのアリタリア航空の評判は余り良くなくて、機体は古いしサービスは悪いし、おまけに遅延は日常茶飯事。ツアーの添乗員さんの間でも旅行中の困りごとの一つのようでした。実際、私も経験しましたが、ローマからフィレンツェに行く便がボローニャに到着し、スタッフからは何の説明もないままに置いてきぼりにされました。もっともこれは私の語学力が足りないせいだったのだろうと思うのですが、それでも余りにも不親切な対応でした。又一昨年は出発が大幅に遅れたばかりではなく、水を積み忘れたとかで飲み物はジュースのみ、トイレの水も出ませんでした。こんなことが続いていたら、いつかきっと大きな事故につながると少し怖くなったこともありました。

2012年12月30日午前10時ベネチア・マルコポーロ空港
アリタリアのカウンター前、矢印のところに並びました(*^_^*)
ところが昨年あたりから、様子が少し変わってきて、機内にはそれまでいなかった日本人の客室乗務員さんが搭乗し、機内のアナウンスも日本語で流れるようになりました。又たどたどしいながらも機長の挨拶もイタリア語、英語に続いて日本語でも為されて驚きました。更には機体も一新されて、足元も広くなり、背もたれに付いているテレビもすっかり新しくなっている、男性のスタッフも増えて日本語で話しかけてくれたりもする、こうして仕事場がリニューアルされて綺麗になると、働いている人がこんなにも明るくなるものかと私は内心感嘆の思いでいました。いくら陽気なイタリア人といえども、4、5年前に倒産の憂き目をみたときは、機材のみならず、機内の客室乗務員たちの表情も暗くサービスも実におざなりでした。アリタリアはこれが普通で、この会社にサービスを求めるなんて…というのがその時の風潮だったのです。

国内線も一新されて、それまで狭くてガタガタしていた座席がまるでビジネスクラスのような座り心地でした
あれからアリタリアの社内が一体どのように再生されたのか、勿論知る由もないのですが、今回機内で少し驚く出来事がありました。年に何度もこの国際線に乗っている方たちにとっては、なーんだ、そんなことかと思われることを承知でお話するのを了承して頂いて…

客室乗務員さん(赤色)とチーフパーサー(青色)さんが…
2012年12月30日、ローマから関空に帰国する便は、日本の何組かのツアーの方たちでほぼ満席でした。皆さん、それぞれの観光地を回られて楽しい思い出話をしておられます。最初はよそよそしくても一緒に旅を続けていると次第に仲良くなって、これがツアーの良さだなぁと思いながら、私は関空に到着するまで、日本の時間に合わせて寝ようと思っていたのです。すっぴんでコンタクトも外しています。それでも映画もみたいしと、鼻眼鏡で、プログラムを広げていました。予約した私の席はいつも通りの通路側。そこに、日本人の客室乗務員を伴ったイタリア人の男性スタッフがやって来ました。私の席までくると、「きゃずみぃ(和美)~しゃんですかぁ~」と日本語で話しかけるではありませんか。見ればアリタリアの立派な制服を着た、恐らくチーフパーサーとおぼしき男性です。ショーン・コネリーに似たその男性は手に名簿のような紙を持ち、私と該当者が一致するか、客室乗務員に確かめています。私は、一瞬、自分が何かやらかしたか、えっ?乗り間違った?などとあり得ないことまで考えて、「何か問題でも?」と質問を発していました。すると客室乗務員の日本人女性が、「いつもご搭乗頂いて、わたくしどもの代表者がご挨拶に上がりました」と答えたのです。その言葉と同時に、ショーン・コネリーさんは早口で「¢£%#&*@∂≪・」とイタリア語で言いました。その間、数秒でしたが、聞き取れた「 cortesia」や「ringrazio」で成る程、いわば感謝の表敬訪問の形で私の席まで来てくれたことがやっと理解出来たのでした。
そういえば、アリタリアの国際線に毎年連続して搭乗したのは今回でちょうど10回目。もしかしたらこの数字がネックになっているのかとも思いますが、それでもファーストクラスやビジネスクラスに乗っている訳でもないのに、こうしてわざわざ席まで挨拶に来るというのは、近年激しさを増している格安航空会社を見据えての「顧客満足」への対策か、まさしく同業者の「真実の瞬間」を実践しているのか、はたまたこれはアリタリアでも以前から慣習として行われていることなのか、いずれにしても機内の設備やサービスと共に目線がわずかでも顧客に向いている、向こうとしているのは確かなことで、アリタリア航空の企業努力を垣間見た思いでした。
それにしてもなぁ~折角ご挨拶に見えたのに、すっぴんで鼻眼鏡とは…(-_-;)