民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「ねずみのすもう」 瀬田 貞二

2013年11月03日 00時26分20秒 | 民話(昔話)
 「ねずみのすもう」 日本の昔話  瀬田 貞二 再話  おはなしのろうそく 18 収録

 あるところに、ろくにその日のけむりもあげられないほど、
びんぼうな、じいさんとばあさんがあった。

 ある日、じいさんが山へしばかりにいくと、おくのほうから、
 デンカショ、デンカショ
という声がきこえるから、はて、なんだろうとおもって、その音をたよりにいってみると、
森のあき地で、ねずみが二ひき、すもうをとっているところだった。

 木(こ)のまにかくれて、よくよくみると、
こちこちにやせたやせねずみが、じいさんの家のねずめで、
ころころにふとったこえねずみが、村の長者どんの家のねずみだった。
そして、二ひきのねずめが、
 デンカショ、デンカショ
と、かけ声をかけて、とっくんであそんでいるのだが、じいさんとこのやせねずみのほうが、
まるでよわくて、長者どんとこのねずみに、すてん、すてんとなげられていた。

 それをみて、じいさんは、かわいそうになって、家にかえると、ばあさんにわけをはなして、
「うちのねずみがかわいそうだから、もちでもついてくわせて、力をつけてやっとくれ」
と、たのんだ。
そして、じいさんばあさん、力をあわせて、もちをついて、
そのもちを、とだなのなかにいれておいた。

 さて、あくる日、じいさんはまた、山へしばかりにいくと、きのうのように、
 デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
その音をたよりに、森のあき地にいってみると、また、きのうのように、
ねずみたちがすもうをとっていた。
じいさんが、木(こ)のまから、そっとみると、じいさんとこのねずみと、
長者どんとこのねずみが、もみあって、なかなかしょうぶがつかないので、
じいさんは、こっちで、
「どっこい、どっこい」
と、そっと声がけして、気をいれているうちに、じいさんとこのねずみが、
「えっ!」と、力をだして、長者どんとこのねずみを、すてんと、なげてしまった。

 そこで、長者どんとこのねずみが、
「たまげたぞ、力のでるほう、おしえろや」
と、たのんだところが、じいさんとこのやせねずみは、
「そりゃ、わけねえことだ。おら、じいさん、ばあさんから、力もちこさえてもらって、
それをくったから、こんなにつよくなったのさ」
「それじゃ、おらもいくから、ごちそうしてくれろ」
「でも、おらとこのじいさんばあさん、びんぼうだから、めったにもちなどつけねえさ。
もし、おめえが長者どんのぜに金でももってきてくれたら、ごちそうしてやろう」
「そいじゃ、そうする」

 じいさんは、ねずみたちの話をきいてかえると、
また、ばあさんに、山でみききしたことをはなして、
そのばんも、もちをついて、二ひきぶん、とだなのなかにいれておいた。
ばあさんは、そのそばに、赤いふんどしを二(ふた)すじ、そえておいた。

 あくるあさ、じいさんとばあさんは、
「きのうは、だいぶごそごそしていたども・・・・・」
と、いいながら、とだなをあけてみると、もちとふんどしはなくて、
そのかわりに、ぜに金が山のようにおいてあった。
 
 それから、ふたりが、山へでかけていくと、いつもより声たかく、
 デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
木(こ)のまからそっとのぞくと、二ひきのねずみは、おなじように赤いふんどしをしめて、
げんきにかけ声をかけてとりくんでいたが、じいさんとこのねずみも、長者どんのねずみも、
どっちもひくことなく、いくらとっても、しょうぶがつかない。

 じいさんもばあさんも、また、あしたも、すもうをみせてもらうべ、と、いってかえったが、
長者どんのねずみが、まい日もってくるぜに金で、ずいぶんな金もちになったということだ。

 おしまい

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
和み (空蝉)
2013-11-07 09:57:12
とっても心温まるお話をありがとうございます。

楽しかったですぅ^^

あ、読者になってくださってありがとうございました。
返信する
RE 和み (akira)
2013-11-07 10:49:59
ブログ仲間として、お互い、叱咤激励しあえればいいなと思っています。

よろしくお願いします。
返信する
再話したのが瀬田貞二だったとは! (まゆみ)
2013-12-28 00:18:46
読者登録ありがとうございます。
初めて読者登録をされビックリしましたが、とても嬉しかったです。

ストーリーテラーなのですね。
私はおはなしのことはまだよくわからないのですが
「ねずみのすもう」というおはなしは、瀬田貞二が再話していたことにこちらを見て気が付きました。

ろうそくは愛蔵版を持っていますが、てっきり東京子ども図書館の方がすべて語りやすいように作ったものだと思っていました。
なので「瀬田貞二」と書いてあり、急いでろうそくを見たら、一番後ろに訳者や出典が載っていて驚きました。

そんなことも知らない自分が恥ずかしい反面
知る機会が作れたことを感謝しております。

読み聞かせや発声についての記事も、興味深く読みました。
そう、肉声はやっぱりいいですよね。
体で感じます。子どもに絵本を読んだり歌ったりしていると、肉声の温かさを感じます。
特に寝る前なんか、安心して寝てしまうのは、肉声だからなんじゃないかと思います。

ブログ、とても勉強になります。
今後も参考にしたいです。宜しくお願いしますm(__)m
返信する
RE再話したのが瀬田貞二だったとは! (akira)
2013-12-28 10:29:20
今年の10月に「読み聞かせ養成講座」図書館主催を受講しました。
その中で素話(基本、丸暗記で語る)の勉強として、
三つの課題が出され、私の選んだのが「ねずみのすもう」でした。
他の二つは「おいしいおかゆ」と「世界で一番美しい声」でした。
指導は東京子ども図書館の方なので、おはなしのろうそくからの話が多いですね。
いきなりの読書登録失礼しました。
よろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。